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外堀を埋める同盟

カサカサ


――すたたたたた............


 村を駆け抜ける一人の少女。

 あまりのスピードに村人の目に彼女の姿は映らない。


「にーあちゃんまだおうちについてないよねぇ」


 ぼそり、と一言。

 猛スピードで駆け抜ける彼女は一軒の家を目指す。


 あ、気付きました?

 そうです、私です。ローチなのです!

 ますたぁにおうちに先に帰っているように言われたので『はて?』という顔をして別れてきたのですが、ローチはあれがどういう事なのかなんてお見通しなのです。

 つまりあれは演技だったのですよ!

 ますたぁには油断していて貰わないといけないのです..................ふふふふふ..............。


 ローチはますたぁの事が大好き!

 あっちにいたときは嫌われ者だったローチにも優しくしてくれてとっても優しいますたぁは大好きなの。

 大好きなますたぁの事が好きなにーあちゃんの事も好きだよー。

 でもにーあちゃんはこのままだとますたぁの幼馴染みちゃんに負けちゃいそうなのです。

 ローチもますたぁの事が好きだけど幼馴染みの女の子には勝てそうにないのですよ。


 そんなの............悲しいのです............。


 だから、ローチは悲しいのはいやだしにーあちゃんにも幸せになって欲しいからがんばることにきめました!

 ()()()()を埋めてやるのです!


「あっ!いたいた、にーあちゃん!!」


 おうちの前まで歩いてきていたにーあちゃんを見つけました。

 ますたぁに自分の方を向いて貰えそうで嬉しいのか、心なしか足取りが軽く見えるのです。

 でも、まだ安心は出来ないと思います。

 ますたぁの心の中には幼馴染みちゃんとの思い出が刺さったままなのですから。


「ッ!ろ、ローチちゃん!?」


 少し驚いた顔をしたにーあちゃんがこっちを振り返ってくれました。

 さっきまで誰も居なかった所にいきなり現れたらびっくりするよね。


「おはなしが、あるのー!」


「.............やっぱり........ローチちゃんも、なんだね.........」


 女の子のカンはとても鋭いのです。

 にーあちゃんが渋い顔になりました。


「んー?」


「私が居ない間に.........エドおにいちゃんを落とすつもりって言いたいのかな?」


「確かにローチはますたぁのことが大好きだけど、にーあちゃんは何か勘違いしてるの」


「じゃあ..........何だって言うの.........?」


 不思議そうな顔をするニーアちゃん。

 困った顔のにーあちゃんも可愛いのです。根はいい子だしやっぱり幸せにしてあげたいのです。

 でも.............、


「このままじゃ、幼馴染みちゃんに二人とも負けちゃうのです................」


「ッ!!でっ、でも!アンリおねえちゃんはもう戻ってこれないんだよ!??

 おにいちゃんがアンリおねえちゃんのことが好きなのはもう分かり切ってるけど...........どう足掻いたって何も変えられないんだよ................?」


「でも、ローチはますたぁがそんな簡単に幼馴染みちゃんを忘れられるとは思えないの............」


「そんなこと、言ったって.............」


 やっぱりますたぁが幼馴染みちゃんとの関係を断ち切る確信が持てないみたいで困った顔をして俯くにーあちゃん。

 ローチも同じ気持ちなのですよ...........。


「なので、ローチはますたぁのことが好きな女の子達と『どーめい』を組んでますたぁの()()()()を埋めることにしたのです!!」


「.............はっ?」


 胸を張って宣言したのですよ!

 にーあちゃんは「意味が分からない」という顔でポカーンとしています。


「ふふふ.........ローチはこの世界のことについて色々勉強したのー」


「ローチちゃんって..........こんなキャラだったっけ..........?」


「ますたぁには油断していて貰わないと駄目なの。不意打ちじょーとー!!」


「は、はぁ」


 拳をぎゅっと握り締めて気合いを入れます。

 当たって砕けろ!なのです!

 あれ?砕けちゃ駄目だよねー?

 でもこういう時ってこう言うし............。

 あれれれ?混乱してきたのです.........。


「ろ、ローチちゃん?」


「あっ、はっ!少し考え事してたの!」


「う、うん。ところでまだ話が全然掴めてないんだけど...........」


「ごめんごめん..........ちゃんとお話するの」


 ローチは()()()()なのがいいです。

 だからこれから話す事にニーアちゃんも乗って欲しいのです。


「まず、この国では一夫多妻、一妻多夫が大丈夫だと知ったの。それならますたぁだってそうすればいい筈なのー」


「でも、エドおにいちゃんはそういうのきっと嫌がるよ?」


「うんうん、ローチもそこは理解してるの。でも好きな女の子を含めた女の子達に『私たち全員と結婚して!』って迫られたらますたぁはどうなるとおもうー?」


「それは............でも、エドおにいちゃんはそういうのは駄目だ、って言いそうだけど.........」


「きっとそんなことないよー?だってますたぁ押しに弱そうだもん。この前にーあちゃんのお見舞い?に行ったときもにーあちゃんの事見てきんちょーしてたもん。さっきだって抱きつかれたときますたぁ硬直しかけてたもん」


「えっ........//」


 顔を真っ赤にして俯くにーあちゃん。

 結構大胆なことをしていたことに今更ながら気付いたみたいなのです。

 それと..........ますたぁに女の子として見られてた事が嬉しかったみたいで少しだけ口角が上がってます。


「でっ、でも私はそれで良くたって『聖女』になったアンリおねぇちゃんを引き込む事なんて出来るわけ...........」


「そこはローチにおまかせなの!」


 とんっ!と胸を叩いてみせます。

 そとぼりを埋めるための努力は惜しまないつもりなのですよ。絶対に皆でますたぁを落としてみせます。

 押して押して押して押して押しまくって押し倒してやるのです。


「幼馴染みちゃんが特別なら、その特別をみんな一緒にまとめちゃえばおっけーなの!

 アンリちゃんのことはローチにおまかせだよ!」


「大変な事にならなきゃ良いけど............」


「で、にーあちゃんはこれに乗ってくれますか?」


「そうだよね.............私が選ばれるとは限らないし....................アンリおねえちゃんがどうなのるのかはまだわからないけど、うん、乗った!」


「やったー!にーあちゃんありがとー!」


 やりました!げんちをとったのです!

 これでローチとにーあちゃんは『どーし』なのです。

 ふふふ.........ますたぁは首を洗って待ってるがいいのですよ..............。


「ローチちゃん..........悪い顔してる................」


「むっ!そろそろ急がないとますたぁが家に帰って来ちゃう!

 にーあちゃんじゃーねー!ローチもがんばるよー!」


「えっ?あっ、またねー!」


 ローチはまたも凄まじいスピードで駆け出してその場から風のように去っていった。

 

「なんか..........ローチちゃんの裏の顔って凄いなぁ.........」


 1人残されたニーアちゃんは思わずそうぽつりとこぼしたのだった。









◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆








「ただいまー」


「おかえりなさい。ごはんもう出来てるわよ」


「おかえりますたぁ!」


 家に帰ると母さんとローチが出迎えてくれた。

 キッチンからはいい匂いが漂ってくる。

 母さんの料理も.........しばらく食べられなくなるんだよな。


「む........はっ!これは食欲をそそるいい匂いがするな!」


「あっ、ちょっ、オイ、肩の上で芋虫みたいにびちびちするな!」


「おおおおお!某は空腹なのですぞー!」


 肩に担がれたままびちびち動くおっさん。

 ジャックは僕よりも背が高いからバランスが崩れて落としてしまう。


「あだっ!.........つつつつ」


「動くなって言ったのに動くから..........」


「むぅ、テンションが上がりすぎてしまったな。

 あ、それはそうと先程のマスター殿の振り向きざまアッパー、中々良かったですぞ。脳を揺さぶられて意識が落ちる寸前のあの感覚は癖になりそうですな。出来れば美少女にして欲しいところだが、もし機会があったらまた殴って欲しいですな」

 

「..................」


 思わず無言になる。

 はぁ。いや、わかってたんだ。わかってたんだよ。

 ジャックのことだからすぐにでも新たな性癖を開拓していくだけだって。

 こんな早く目覚めるなんて思わなかったんだ。しかも男女問わずなんて恐ろしすぎる。


「僕にはお前って男がわからないよ.........」


「紳士ですからな」


 いや紳士ってなんだ。

 僕の知ってる紳士はこんな変態のことは指さないはずなんだが。


「ますたぁ、ごはんにしよー?」


「ああ、うん.......そうしようか」


 ニコニコ笑顔で話しかけてくるローチ。

 どうやら今回はジャックの存在は無いことにしているらしい。無邪気なローチの笑顔は癒しではあるけれど。

 

「はいはい席はこっちなのー♪」


「ああ」


 僕の腕をとって席へと連れて行くローチ。

 何故だか、今日の彼女はやけに機嫌が良かった。




復活遅くなりました、ごめんなさい。

そしてお久しぶりです。

久々に書いてみたら中々書き進まなくて大変でした。勢いって大事なんですね。

また連日投稿出来るように頑張りますのでこれからも宜しくお願いします。

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