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田舎の村の虫取り少年

はじまるよ

 東の大陸。

 アーケルム王国の国土のはじっこもはじっこ。

 ツドラ山の麓の樹海の中にあるちっぽけな村。


 村の名前は『ポルタ』。

 人口は130人くらい。

 村人の主な収入は狩猟。


 この物語はそんな秘境の村に住む一人の少年から始まる。









「また虫取りに行くのー?」


「いいじゃんか、毎日の日課なんだし」


「でも今日は午後から教会に行く日だよ?」


「午前中だけだから!すぐ戻ってくるって」


 今日は成人した村人が教会に行って神託を受けにいく日だ。

 神託っていうのは「職業がなんになるか」っていうのを神様に教えてもらうことだね。

 その時に同時に『ステータス』っていうものも貰えて身体能力が強化されたりもするよ。


 僕の名前は『エドガー・ファーブル』。

 身長は172センチ。このあたりじゃ珍しい黒髪に金色の目。筋肉はそこそこで顔は普通かな。

 村の皆にはエドってよばれてるよ。


 そして今話してる女の子の名前は『アンリ・オリヴィエ』。

 淡い金色の髪に蒼い瞳。

 身長は160センチで目を引くような美少女だ。

 胸もよく成長しておりおそらくDごにょごにょ.......。

 とにかく!可愛い僕の幼なじみ。


 二人は今日で成人として認められ、教会に神託を受けに行くってことなんだけど。


「まぁ、いいわ。貴方の家で待ってるからね!」


「そこは自分の家じゃないの~?」


「べ、別にいいでしょ!いつも通りなんだし!

 いいから早く行って帰ってきてよね!」


 顔を真っ赤にして膨れるアンリ。

 可愛いなぁ、僕の彼女ならどんなに良いことか。

 僕はアンリの事が小さい頃からずっと好きだ。想いは僕がヘタレなせいで伝えられていないけど。


 彼女の両親は二人とも猟師で、昼間はいつも家にいない。だから彼女は普段は幼なじみである僕の家に居ることが多い。

 ウチの親は母親は主婦で、父親はいつも出稼ぎに出ていて家に居ない。三週間に一度くらいの割合で家に帰ってきてはお母さんとイチャイチャしてるけど。完全にただのバカップルだよね。

 まあそんな訳でいつも家にはアンリとお母さんが居るわけです。

 って早くしないとね、僕の日課の昆虫採集に行けなくなっちゃうよ!


 持つのは虫取り網に捕った虫を入れておくビン。

 そして麻酔毒を染み込ませた布とピンセットに宝物の昆虫図鑑!!


「じゃあ、行ってくるね!」


「う、うるさい早く行けっ!!」


 アンリに手を振って村の外に出て行く。

 毎日の日課の昆虫採集だ。


 昆虫採集は5歳のころからずっと続けている。

 捕まえた虫は標本にして飾ったり保存したり。

 珍しい虫とかは標本にしたものを旅の商人さんに買い取って貰ったりする。

 結構な額で買い取って貰えるのだが、なにやら町の方に住む貴族やコレクターがこういったものを高値で取引したり買い取ったりするらしい。

 お陰で僕一人の収入でも生活には困らないレベルだ。


「おっ!見つけた!」


 見つけたのは『ジュカイヤンマ』。

 僕の住んでいる村の周りにある森くらい深い森にしか生息していない貴重なトンボだ。

 最近捕まえられていなかったから捕まえておこう。

 また商人さんが高く買い取ってくれるかもしれない。

 忍び足でそれに近づいて行き、


「..........ふっ!!」


 ヒュッ!と音を立てて虫取り網が振るわれる。

 秒速80メートルで飛ぶトンボはエドの虫取り網捌きによっていとも簡単に捕らえられる。


「っと、羽を傷つけないように.......」


 捕まえたトンボは細心の注意を払って大切に扱う。

 羽根や脚など、脆い部分を傷つけてしまったら商品としての価値が下がってしまう。

 麻酔ビンにジュカイヤンマを入れる。


「こんなもんかな.......。もうちょっと探しますか」


 そうしてまた森の中を歩き回る。





「あっ、めんどくさっ」


 見つけてしまったのはゴブリンの群れ。

 ゴブリンは80センチぐらいの醜悪な人型の魔物だ。

 時には人間の娘をさらって苗床にすることもあるらしい。

 最近増えてきているし、三匹程度の群れだがここで殺しておくのが良いだろう。


 エドは虫取り網の先の網部分を取り外す。

 すると、中からギラリと光る槍の穂先が現れる。

 俗に言う仕込み杖ならぬ仕込み虫取り網なのだ。


「(大体9メートルぐらいか.......)」


 エドは握る手と張りつめた感覚に集中する。


「ガァ?」


 一匹が異変に気づいたその時。


「はっ!ふっ!ぜやぁっ!!」


 目にも止まらぬ三連撃。

 三匹のゴブリン達は一匹ずつそれぞれ串刺しにされて絶命した。


「ふぅ~、緊張したぁ。魔石も取っときますか!」


 あっさりとゴブリンを倒したエドは魔石のはぎ取りを始める。

 エドはまだ神託を受けていない所謂無職だ。

 そんな状態でゴブリンを三匹も倒すなんてのは普通あり得ない話なのだが。


「はぁ~、あんまりいい虫も居ないし今日はもう帰るかな」


 エドはそんなことなんて知らないのだ。

 何故なら他の町になんて行ったことが無いから。

 なんといってもここはド田舎なのだ!!


 採れた虫は『ジュカイヤンマ』と『ルリイロキンゾクバッタ』に『カエンコガネ』。

 『ルリイロキンゾクバッタ』は『キンゾクバッタ種』の一種で瑠璃色の羽と外骨格を持つバッタだ。

 細長いフォルムのこのバッタの瑠璃色の部分の成分は希少な金属である『ミスリル』によく似ていると言われ、武具等のツナギや武具そのものに使われたりするらしい。

 『カエンコガネ』は緋色の甲殻を持つコガネムシの一種。名前の由来は飛ぶときに羽根から散る火花からだ。此方は魔道具の材料や、観賞用等に使われる事が多い。


 エドが時計を見れば、ちょうど11時くらい。

 家に帰る頃にはお母さんがアンリと一緒にお昼ご飯を作ってくれている頃だろう。


「お腹すいたなぁ!」


 ド田舎の虫取り少年はお腹を空かせて家へと帰っていった。

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