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ハッピーエンドじゃなきゃイヤー!

何人かの方からノリが謎すぎて寒いと感想が寄せられましたので、読み飛ばしちゃって大丈夫ですよ。

読む人はしっかりと覚悟を決めた上で全力で脳味噌を溶かしながら読んで下さい(脳味噌が溶ける)。
















「やば.........これめっちゃ良い..........。初々しすぎて鼻血がとまりませんぞぉぉぉぉぉ」


 そう言って鼻血を垂らしながら彼女が眺めるのは水晶玉の中。

 

 移っているのは二人の男女。

 少し恥ずかしげに、それでいて二人とも嬉しそうに手を繋いで歩いている。

 実に微笑ましい光景だ。


 二人の後ろを恨めしそうに歩く一人の男が居るけれど、もう彼に付け入る隙なんて無いのだ。

 

「はふぁ.....今日もめっちゃ良いモン見た.........」


「見たって言うか作っただよね?女神様?」


「女神様はノー。私はあなたのお嫁さんよ?ちゃんと名前で呼んで」


「分かったって、愛してるよセシリア」


「むー、そう言っていっつも忘れちゃうくせにー」


 ぷくーっ、と頬をふくらます女神セシリア。

 そこに女神らしさなんてものは微塵も無い、何故なら、


「先代のクソ神から神の座を簒奪したは良いけど、あれからちゃんと仕事してます?あのクソ神のせいで彼みたいな不憫な転生者達が沢山この世界に来ちゃったんですから。

 セシリアが女神としてしっかりやってかなきゃ駄目なんですよ?この世界は女神信仰ですからね」


「わ、わかってますって!ちゃんとお仕事してますから!」


 そう、彼女は元・人間なのだ。

 だから女神らしさなんてクソ食らえ!なのである。


「その割には【神力】を趣味のために使っていたようですがねぇ?」


「えっ、いやっ、それはぁ~~」


 顔をそらして焦るセシリア。

 ニコニコと笑いながら、かつその目は全く笑っていない旦那様に冷や汗ダラダラである。


「はぁ、まあ今回の件は良いですよ。僕もああして不幸な人が幸せになってくれるのは嬉しいですからね」


「わかってるねぇ~、流石私の旦那様だよぉ~」


「でも今度からはちゃんと仕事を終わらせてからにして下さいね。【神力】は回復するのが遅いんですから」


「はーい♪」


 彼女は嬉しそうに返事をして彼に抱きつく。

 そんな彼女に彼も「よしよし」と頭を撫で撫ですると、彼女はとても幸せそうに「ふしゅぅぅぅ」と息を吐く。

 完全に飼い主に可愛がられる飼い猫の図であった。


「あっ!それでさ、ねぇねぇ。ハッピーエンドを確実な物にするために色々やったんだよ!」


「へぇ、例えばどんなことをしたの?

 時間を戻すだけで結構【神力】消費したと思うんだけど?」


「まあ時間を戻すのはちょいと頑張りましたけどね。あの二人がちゃんと結ばれるにはどうしてもあの『クソ兄貴』の存在が邪魔な訳ですよ。なんといってもレイ●魔ですからね?!

 女の敵ですよ!女の敵!」


「確かにそれは酷いなぁ。でも存在を無かったことにするのは大変だよね?どうしたんですか?」


「よくぞ聞いて下さいました!

 消すのは面倒だったので『クソ兄貴』の『コウ君』には『一生彼女が出来ない、そして一生童貞のまま』というオプションを付けたのですっ!」


「オプションですか、それなら【神力】の消費も少なくて済みますね」


「更にここで一つ、お気付きになりましたぁ?」


「いや..........何も?」


()()()出来なくて、一生()()のまま。なんですよ?

 つまりクソ兄貴は彼氏を作ったり、()()を捨てることは出来るのです!」


「薔薇かよ!まさかのホモエンドとか聞いてないです!」


「腐ハハハハ!これぞジャパニーズカルチャァァァァァァ!!!」


「なんか二人で実家に帰ったときもこんなやり取りあった気がするぅぅぅ..........」


「しかも『ユウ君』と『幼馴染みちゃん』には『運命の赤い糸』と『幸福』のオプションを付けておきました!

 これで皆ハッピー!私の大好きなハッピーエンドです!」


「ねぇ一人ホモの道に落とされちゃってますよね!? 薔薇の花咲き乱れるヴァージンロードまっしぐらだよね!??」


「あはははは!大丈夫ですって!ちゃんと独り身のまま生涯を終える可能性もありますから!」


「本人の知らない間に断罪エンドって...........神様ってズルいですよね..........」


 無駄に行動力のある嫁に旦那様は遠い目である。

 まあ、なにはともあれこれで彼はハッピーエンド確定である。

 良かったね!ユウ君!


「しかしねぇ.........彼のお陰で『ユウ君』を転生させなおすのは自然に出来たよ。彼、あなたのお気に入りでしょう?」


「ん?ああ、あの彼ですか。なんだか小さい頃の自分にソックリだなーって思っちゃってね。しかも何か特別なものがあるわけでも無いのに超強かったからね。あんな子供が魔物を倒しまくってる所なんて始めて見たし」


 彼はなんだか自分の事のように嬉しそうに、楽しそうに話す。

 例の彼との邂逅はそれだけ衝撃的だったのだ。


「話に聞いたときはビックリしたけどねぇ。本当に強いんだね、彼。性格も良さそうだし.............だからあなたは彼に継承させたんでしょう?」


「まあね。しっかりと発現し始めるのはまだまだこれからだけど...........既にあの子はとんでもない才能を発揮し始めてるよ。所で彼の運命の相手、『アンリちゃん』だけどさ、ちゃんと『三人の乙女は勇者の嫁にはしないように』って神託しといた?しとかないと大変だよ?」


「えっ?あっ...............」


 やっちまった.........と顔が青ざめる。

 ギギギギ、と顔を逸らす。

 セシリアの額から冷や汗がダラダラと流れ始めた。

 ニッコリと微笑む旦那様にガクブルである。


「ねぇ、【神力】は?残ってる?ねぇ?」


「そっ、それはぁぁぁ~~」


 ガシッ!と旦那様に顔をつかまれるセシリア。

 ぐいっと顔を彼の方に向けられ、


「後で、お仕置きかな?」


「いいぃぃぃぃぃぃやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


「ごめんなさいは?」


「ごめんなさいぃぃぃぃぃぃぃ!!!」


「この落とし前どう付けるのかな?まあ【特異点】の彼なら【勇者】程度の難関、余裕で飛び越えるだろうけどさ?女神としてあるまじき失態だよね?」


「申し訳御座いませんんんんんんん!!!!」


 完全に涙目である。

 趣味に走ってちゃんと仕事をしていなかったので当然の帰結なのである。

 だけど旦那様は優しいのだ。


「はぁ、仕方ないから僕が彼に【加護】を与えておくよ。万が一があったら彼に顔向け出来ないからねぇ。男だから【神託】も出来ないし」


「だ、旦那様優しい........!!」


「何言ってるの?僕はいつも優しいじゃないか?」


「優しいよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」


「あっ!こら、仕事中に抱きつかないのセシリア」


「オカンか!私のオカンかワレぇぇ!」


 旦那様の優しさに、思わず抱きついてしまうセシリア。

 胸に顔を押しつけてめっちゃうりうりする。

 愛が天元突破しているのだ。


「セシリアー。せっかくの美人が台無しですよー?」


「はぁはぁ、たまらんっ!!

 シよう!今夜はパーリィナイッだよ!大運動会だよ!」


「落ち着きなさいッッ!」


「あだっ!」


 ゴンッ!と愛の鉄槌が彼女の脳天に落ちる。

 

「はぁ........女神なんですから、少しはそれらしく振る舞って下さいね」


「むぅーー、わかりましたーーー」


 つれないなぁ、とちょっとだけむくれるセシリア。

 なんだか少し子供っぽい。

 女神なのに.........女神なのに!!


「ねぇあなた?そういえばなんで私のことが好きになったの?」


「んー?そりゃあ『ちょっぴり天然なところがあったり』『性格が優しかったり』『綺麗な金髪に硝子玉のように透き通った蒼い眼で透き通るような白磁の肌でドストライクだったり』『いざというときは頼りになったり』『笑った顔がとても可愛らしかったり』『怒った顔も愛らしかったり』『小動物みたいにチョロチョロ動くところとかもうハートが愛の矢で蜂の巣だったり』それに―――」


「ああああああああああああああっっ!!!

 もう良いです!もう大丈夫ですからぁ!なんか凄く恥ずかしくなってきましたからぁ!お腹いっぱいですからぁ!」


「ええー、もういいの?まだ半分もいってないのに?」


「まだあるんだ.........まあ、あなたがちゃんと私を好きなんだって再確認出来て嬉しかったかな...........」


「セシリア...........」


「あなた..........」


「...................」


「....................」


「............仕事に戻ろうか」


「ウィッス」


 椅子にストンと座らさせられるセシリア。


 先代の悪趣味な神の尻拭いに追われる毎日は本当にストレスが溜まる。

 これぐらいふざけていないとやってられないのもあるのだ。


「じゃあ、今日は【神力】が使えないですし、セシリアは例の転生者リストと召喚勇者についてまとめといて下さい。沢山居ますからね、スキルや先代が付けたオプションの一つ一つまで、しっかりお願いしますよ。それと【神力】が溜まったら、すぐにでも【神託】をして下さいね。今一番重要な仕事がそれなんですから」


「はぁーい」


 彼女は二人が日本に行ったときに購入したデスクの中からペンケースと今までに纏めた資料を取り出してパソコンを開く。

 下界を覗くための水晶玉も隣に置いて、今度はちゃんと女神の仕事を始めた。


「さて...........彼は今何処に........っと、そうですね、コレを付けておきましょうか。彼ならちゃんと効果が発動してくれるでしょうし」


 同じように仕事を始めるべくデスクについた彼は水晶玉を覗いて何やら撫でるように手を動かす。

 ボワッ、と金色の炎がその手から上がったかと思うとそれはすぐに水晶玉へと吸い込まれていった。


「ふぅ..........えっと、次は、『悪役令嬢』?ですか。付けられたオプションは『短命』『断罪エンド』『救い無し』...........って、随分酷いですねこれ............。全く、あの女神(ひと)は何考えてたんでしょうか。暇つぶしのレベルが酷すぎますよ本当........」

 

 こんどはスイーッ、と水晶玉に指を当てて滑らせる。

 

「この子ですか..........今のところまだオプションは発動してないみたいですけど、時間の問題ですね。さっさと直しちゃいましょう」


 今までにまとめた転生者達や変なオプションをつけられた人々の資料をパラパラとめくりながら、彼はオプションの書き換え、消去を行い始めたのだった。

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