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ゴブリン掃討戦(人がたくさん)


「ああ、あれだな?よし.......二人があの門番二匹を倒したと同時に突撃だ」


 エド達はゴブリンの巣穴の前まで来ていた。

 今は草藪に隠れて息を潜めている。


 門番のゴブリンを殺るのは『銃』を持っている猟師の役目になった。

 門番ゴブリンが死んだら突撃開始だ。


 前に出た二人の猟師が火縄に火を点ける。


 ――ジジジジジジジ


 シュッと銃口から胴薬と弾丸を装填し、それを槊杖(カルカ)で銃身の奥へと押し固める。

 流れるような二人の動き。

 『火縄銃使いのスタンとケイン』。

 双子で猟師をやっている彼等の動きは完全にシンクロして、周りの猟師達も息を潜めつつも感心した目を向ける。


 そして今度は火皿に点火薬を入れ、火蓋を閉じる。

 火の点いた火縄を持つと、それを火挟に挟んだ。



 ゴブリンは気付かない。


 門番ゴブリンへと狙いを定めて火蓋を切る。



「あと5秒........4..........3」


 ――ジジジジジジ


 火縄銃の紐がチリチリと音を出す。


「.......2...........1................発射」


 ―――ズドォォォォン!

 ―――ズダァァァァン!


 二匹のゴブリンから血飛沫が上がって倒れた。

 戦闘開始の合図だ。


「行けぇぇぇえぇぇぇぇぇ!!!」


「「「Hyahhaaaaaaaa!!!」」」


 巣へとなだれ込む猟師達。

 巣の中は、入り口が狭いのに比べて中は広々としている。

 中にいたゴブリン達は抵抗する間もなく剣やら刀やらでどんどん刈り取られて行く。


「ゴブゥゥゥゥゥ!ブゴッ!ブゴォォォッ!」

「ゴブッ、ピギィィィィィィ!!!」

「ブゴォォォォッ!ゴブゴブゥゥゥゥ!!」


 奥から完全武装した上位ゴブリン達が続々と現れる。

 こっからが本番だ。


「怯むな!ぶっ殺せぇぇぇぇっ!!」


「「「Uryyyyyyyyyy!!!!」」」


「「「Gobuuuuuuuu!!!!」」」


 ゴリアテが仲間たちを鼓舞し、ゴブリンの群れとぶつかり合う。


 ―――ガキィィィン!バキィィィィン!


 ―――ジャキィィィン!ドォォォォン!!


 ゴブリンソルジャーが剣を振るえば猟師の一人は片手斧でなぎ払い。

 ゴブリンアーチャーの矢は土魔法の『土壁(クレイガード)』で防がれる。

 猟師の男が刀を振るえばゴブリンシールダーが前にでてそれを防ぐ。

 至る所から『火球(ファイアボール)』やら『光球(ライトボール)』等が飛び交い、打ち消すように『土壁』や『闇盾』が展開される。

 まさに両陣営は混戦を呈していた。


「親玉は........せめて幹部級でも..........!!」


 司令官クラスを早く討ち取って、この戦線をどうにかしなければ。


『ますたぁ!こっち!偉そうなの、見つけた!』


「ローチ!?」


 いつの間にか肩の上から居なくなっていたローチがカサカサとGサウンドを立てて足下までやってくる。

 どうやら彼女(ローチ)は当たりを引き当てたらしい。

 

「わかった。じゃあローチ、そこまで案内してくれ」


『らじゃー!』


「ゴリアテさん!僕の使役魔物が当たりを見つけたみたいなので其方に向かいます!

 此方は任せました!」


「おう、エド坊!絶対倒して来いよ!」


「了解です!」


『ますたぁ、行くよー!』


 カサカサとGサウンドを立てて、ゴブリンの群れとは別の方向の通路へと進んでいく。

 それにしてもローチはスピードがかなり上がった。

 正直もう僕より速い。


「ゴリさん!俺らもエド君についてくわ!」

「俺もエド君についていく!」


「わーった二人とも!エド坊が死なないように頑張れよ!」


「了解、おやっさん!」

「いやでもエド君あんなんで死ぬとかあり得な――」

「いいからわかったって返事しろっ!」

「あだっ、ウィッス!」


 どうやら猟師の中から二人ついてきてくれるらしい。

 『ピート・ブランカ』さんと『エジド・ナパーム』さんだ。

 ピートさんは世話好きの20代のお兄さんで、周りの村人たちからは『オカン』なんて呼ばれている人だ。

 得意武器は薙刀。

 中距離で刃と石突きを器用に使い分けて斬撃と打撃を流れるように撃ち込み続ける。

 

 そしてもう一人。

 エジドさんは気のいいお調子者の猟師のお兄さん。

 ピートさんとは子供の頃からずっと仲の良い友人だそうだ。

 得意武器は銃剣。

 村に定期的に来る商人さんから買った物で、火縄銃とは違っていちいち面倒な操作を必要としない高級品。

 先に付いた刃で近距離戦も出来る優れものだ。

 買った当時、彼がとても喜んで騒いでいたのをよく覚えている。


「エドくん宜しくな!」

「エドくん、さっきはびっくりしたぜ!まさかあんな強いなんて思ってもなかったよ!」


「ありがとうございます!お二人共宜しくお願いします!」 


「はっはっはー、良いってことよ!

 ..........所で、エド君ってどんなステータスしてるの.......?」


「えっ?どうって.........今はLv.22ですけど.........」


「ふむ、Lvは僕達より低いんだよね...........。じゃあ力は?」


「えと........それは.............」


 意識を集中させて頭の中で「ステータス」と唱える。

 




エドガー・ファーブル 男 16歳 召喚士

Lv.22

HP790/790

MP680/680

力800

守530

速800

魔750

器1050

スキル:召喚魔法Lv.2 槍術Lv.6 火魔法Lv.2





 一日でここまで上がる物なのか.........?

 たったLv.5の上昇でステータスがおかしい上がり方をしている。

 まあ、聞かれたから答えるのだけど。


「えと、力は800って表示されてます」


「へぁ?」

「ファッ!?」


「いやいや本当ですって。見間違いとかじゃないです」


「ま、マジかエド君..........。規格外過ぎるよ........」


「普通にLv.42の俺達より強いんだけど............ねぇ、エド君って職業勇者だったりしない?」


「勇者ではないですけど..........自分でも正直ビックリですね..........」


 すげぇぇ、と息をもらす猟師二人。

 エドも、ここまで強くなった理由がわからないのでとりあえず苦笑いして頭をポリポリする。

 

 職業【勇者】か。

 異世界人しかなれない職業で、戦闘能力において最強の職業だ。

 【勇者】になれたらどんなに良かったことか...........アンリとも離ればなれにならなくて住んだのにな、なんて女々しい考えが頭を過ぎる。

 

 いや、でも...........。

 近くに居れたって少しも気持ちを伝えられなかっただろ?

 そんなヘタレが彼女の隣に立つ権利なんて――


「(だああぁーっ!くそっ!考えるな考えるな!集中しろ!)」


『ますたぁ、こっちなのー!』


「っ!少しぼーっとしてた。了解だよ、ローチ。細い道に入ったな..........ここは..........?」


 ローチに導かれて進んだ先は、あまり目立たない細い通路。

 そこを通り抜けると広い空間が広がっていた。









「これは..........」


「エドくん..........本当に凄いの引き当てちゃったね.........」


 チャキッ、と武器を構える二人。

 エドも槍をスッ、と構える。 

 ローチもエドの肩に乗っかって、準備万端だ。


「ニ、ンゲン.........オトコ、ゴキブリ.............キサマカ、オレノシ、アワセヲウバッテイクノハ」


 そう、そこには少数精鋭で固められたゴブリン達に守られるように立つ『ゴブリンキング』が居たのだ。

 しかも人語を解している。

 人語を解する魔物など、他の魔物とはその強さにおいて一線を隔すことが多い。

 ゴブリンで人語を解するとなるとそれは相当なものだ。  


「オレノ、シア、ワ、セハウバワセ、ナイ。コロス、ゼッタ、イコロス」


 憎悪の籠もった瞳でエドを見つめる子鬼の王。


「おい........エド、何かしたのか?目ぇ付けられてるみたいだぞ」


「ハハ.......俺にはさっぱりわかりません。強いて言うならゴブリンを何匹か殺したことでしょうかね...........」  


「どうする?エド君」

 

「僕がキングを殺ります。お二人は周りの上位種を宜しくお願いします」  


「了解。引き受けた」


 ゴブリンキング達がキングを中心に陣形を組んで戦う体勢をとる。

 

 ゴブリン掃討戦、その最大の決戦が今、静かに始まろうとしていた。

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