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作者: ラジオ

 言葉には目には見えない不思議な力がある。

 友達に今日は雨が降ると言うだけで、雨が降れば僕は将来占い師として大稼ぎするぞと豪語することができたし、雨が降らなければ何となく嘘を言ってみただけさと不思議ちゃんを装うことができた。

 絶対プロ野球選手になるぞと声に出して言うだけで、プロ野球選手になれば言葉は夢に通ずるものだと格言を残せたし、なれなければ所詮は現実なのだと理を悟ることができた。

 あなたを愛していると言われるだけで、愛されていればあなたへの愛に躊躇う隙間を吹き飛ばすことができたし、愛されていないと気付けばあなたへの愛を自分の心に仕舞うことができた。

 言葉には、目には見えない不思議な力がある。

 ――そんな夢を見た。


 現へ引き戻された僕は、鉛のような頭を起こし、茶色く変色した布団をどけて、糸を垂らす締め切ったカーテンの隙間から漏れ入る朱色の光に特に何を思うでもなく、部屋の片隅に溜まる埃を無視して廊下に出る。

 骨ばった垢塗れの足を持ち上げて、食事の用意されたリビングへと階段を下りる。

 地元のニュース番組を見ていた母親がこちらを振り向いて「おはよう」と言う。

 僕は椅子を引いて、もぞもぞと朝食を取り始めた。

 頭の中で僕は呟いた。

 ああ、言葉のなんと空虚なことだろう。


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