衝撃のクラスメイトと衝撃の事実
2話です。ストーリーを考えるのが難しいです。頑張ります!
俺ーー高月彼方の女の子に対してのコミュニケーション能力は平均以下といえる。ゲーム的に言えば女の子との会話では常にドモりと噛みのバッドステータスが付くのである。しかしそれは通っている学び舎に大きな問題があると俺は強く言いたい。
私立榊原学園ーー俺が通っている学校だ。この学校は生徒数2000人を誇り『強く、正しく、逞しく』を校訓とした国内有数の 男 子 校 だった。繰り返して言うぞ、 男 子 校 だった。
2年前に理事長が変わったために方針も変わり共学となったが、共学だろうと元男子校に入りたいなんていう女子がいるだろうか?いやいない。いたとしたらそりゃ男子に囲まれたい姫願望のある女子だな。
まあそんな理由からこの学校の男女比率は9:1となってて、1年から3年まで全部で50クラスだから単純に計算してもクラスに平均3人しか女の子がいないんだよ。
しかも3人はいるはずの女の子は俺のクラスにはたった一人しかいない。この事実を知った日の夜は枕を涙で濡らしたのを覚えてる。
「じゃあ、行ってきます」
「…行ってらっしゃい」
俺がそう言うと御神も無表情ながらちゃんと返してくれる。これとただいまが今のところ彼女としっかりコミュニケーションが取れていると思える会話だな。それ以外の会話はチキンな俺にはまだまだハードルが高い。高すぎてもはや高飛びレベルだぜ。
まあでもこういう会話から少しずつ打ち解けられたらいいと思う訳で…
自転車で通う生徒たちに抜かされつつ、俺は足取り軽く学校へと向かった。
彼方がクラスに付くとまだそれほど人はいなかったが、ある机の一角に男たちが集まっていた。彼方も興味を惹かれそちらの方に顔を向けると
「やっぱこの子だろー」
「いやっ、こっちのほうがな」
机にグラビア雑誌を広げ彼等は自分の推しメンについて熱く語り合っていた。こういったことが出来るのはは女子がほとんどおらず、異性の目を気にする必要がない榊原学園の利点と言えるだろう。
一方で彼方は一人で勝手に優越感に浸っていた。
理由は簡単、奴らが見ている雑誌の女の子より可愛いだろう女の子と同居しているという事実があったからだ。
(ふっバカめ、雑誌の中の女の子とは喋ることも出来ないし、触れられもしないが、俺は違うぞ!)
などと考え、口元を緩ませているが、彼方も大して喋ったり、触れたりもしていないということを突っ込むのは野暮というものだろう。
その時、ガラガラガラっ
と大きな音を立ててドアが開き1年2B組(彼方たちのクラスだ)に一人しかいない女子が登校してきた。その瞬間、クラスの雰囲気が露骨に微妙になったことをしかし彼女は気付かない。
そうして彼方の机の前まで歩いてくると
「おはよう、彼方!」
上腕二頭筋が大きく盛り上がった右手を挙げ野太く力強い声で彼方に挨拶をすると、すぐ隣の席に座った。座ったときに椅子からギシリという音が聞こえたような気がするが、きっと気のせいだろうと彼方は現実から目を逸らし、挨拶を返す。
「お、おう…おはよう」
(はあ、ついに来てしまったか)
彼方は口から漏れそうになるため息をこらえ改めて彼女を見る。
彼女の名前は鷹乃宮 千春。神代市にある由緒正しき道場、鷹乃宮道場の一人娘だ。短く切った髪の毛(割と綺麗に手入れされている)におそらくソプラノは出ないんじゃないかと予想される野太い声、ブレザーから盛り上がった筋肉は日頃からの鍛錬を窺わせ、男たちのプライドを粉々にしていく。
おまけに彼女の武勇伝にはヤンキーを一撃で沈めただとか、素手で林檎ジュースを作っただとかがあり1学期が終わるには誰が言い始めたかも分からない『DK』というあだ名が付いていた。
そんなある意味男より男らしい彼女は残念ながら可愛くはない。厳ついとか強面といった感じなのである。このことにより彼方のクラスには実質女子は居ないのである。
クラス分けは無情なり…
〔おい、DKがきたぞ〕〔やっぱやべえなあの筋肉〕〔ハァハァ、今日も大腿四頭筋が美しい…〕〔自重しろバカ〕
一人だけ己のフェティシズムに素直な男がいたが、そんな声に気付いた様子もなく千春は嬉しそうに彼方に喋りかける。
「聞いてよ!昨日家で瓦割りをしていたら新記録が出たんだ、今の私の最高記録は26枚だよ、すごいでしょ!」
と彼方の背中を手でバシバシと叩いてくるがその一撃一撃が相撲取りの張り手のような威力をしており、なんで瓦割りなんかやってるんだとか色々突っ込みたいところはあったが彼方は体の中を揺さぶられるような感覚に耐えるしかなかった。
「うぇ、げほっ、げほ…確かにそれは凄いな」
「でしょ!今度彼方もやろうよ」
「考えて、げふっ…おくよ」
元来、彼方は仲良くなるためにどんな女の子のお願いにも出来る限りに応えてきた。しかしそんなノリで瓦割りをさせられたらたまったものではない。ここはしっかり断っておこうと考えたのだが、嬉しそうに話す千春にハッキリNOとは言えない彼方であった。
〔流石飼育員だな〕〔全くだ〕〔あんな近くで筋肉を見られるなんて羨ましい…〕〔もう黙れよ〕
飼育員、その単語が聞こえると彼方は内心舌打ちした。
(ちっ、またかよ。いい加減止めてくれねえかなあのあだ名)
飼育員とは、DKと呼ばれる千春と、とあるきっかけから普通に接するようになった彼方にいつの間にか付けられていたのあだ名である。
あのDKを手懐けているすごい奴という意味でクラスメイトからは一目置かれているのだが、彼方はそれを煽られて距離を置かれているのだと勘違いしている。
「まあまあ、元気出せよカナタ君。それとおはろっす〜」
「うるせえ、あとどこから沸いた三成」
「どこにでも沸くぜい、俺は」
「気持ちわりいな」
いつの間にか沸いたこの男は出雲三成といって彼方とは幼稚園からの付き合いでありいわゆる腐れ縁というやつだ。
そこ、学園モノに一人はいる男友達枠とか言わない。
「すごいね、三成君。全く気配に気づかなかった。私もまだまだ鍛錬が足りないな」
「い、いやー、千春さんほどじゃないっすよほんとに」
話しかけられた三成は半歩ほど下がって謙遜するように手を振った。本人にそのつもりが無くても威圧されているように感じるため、クラスではこういった反応が普通なのだ。
そんなことを話していると担任(バツイチ独身)が教室に入ってホームルームが始まった。
「で〜、あるからしてーーー」
教師の子守唄のような授業を聞き流しながら彼方はずっとあることを考えていた。
(御神って俺と歳は同じか少し下くらいだよな。学校とかって行かなくていいのか?)
ごく当たり前の疑問であったが、もしかしたら色々複雑な事情があったりするのかもしれないため今まで聞いてこなかったが、このままでは気になるし、何より心配だ。
着物を着ていたり色々と疑問は尽きないが、とりあえずその辺だけでも聞いておくべきだと彼方は思った。
キーンコーンと終業のチャイムが鳴ると同時に、彼方は談笑したり、部活の準備をしたりするクラスメイトを尻目に教室を出た。ほぼ帰宅部である彼方は基本このスタイルだ。
「…おかえり」
いつものように炬燵に入っていた御神が顔をこちらに向けた。炬燵の上には彼方が買ってきたたけのこの谷(チョコ菓子)があるのでそれを食べていたのだろう。
「たでーま、あとちょっと聞きたいことがあるんだけどいいかな」
彼方はすぐ疑問を問いかけた。学校で御神について考えていたら、どうにも気になってしまい、授業も身に入らなかったのだ。
「えっと、御神は学校とかって大丈夫なのか? 」
「…行っていない」
「嫌なら無理には聞かないけど…どうしてだ?」
そう聞くと御神はしばらく考え込むような仕草をし、顔を下げた。まるで言うべきかどうか迷っているようだった。
「……」
しばらく無言だったが、やがて意を決したように顔を上げ彼方も予想しなかったような言葉を口にした。
「…私は…神様、だから学校には行かない…」
「えっと…マジで?」
些細な問題だと思っていたことは、実際全然些細な問題では無いようだった。
やっと題名を回収出来ました。
ここからやっと話が動かせそうです!
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