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兄達、弟の為に走る(笑

そのケンカ、かってやろうじゃないか。

作者: 藍佳印

とりあえずあげてみる。

 『気持ち悪い。その胡散臭い笑み、止めたら』


++++++++++


 ノックもなしに開いた扉に私は声をかけた。珍しく、慌てていたが私は大事な弟達(・・・・・)の足音ぐらい聞き分けられる。


 「レイ、ノックぐらいはしなさい」


 私の眼に映ったのは、見るも悲惨な弟だった。顔は驚くほど白く、唇は真っ青という表現が適切なほど。親友であり、腹心であるアル――アルライド・ファートが、扉を閉め上位結界を張ったほどには。


 「あ、兄……上」


 その声は、顔は――昔のあの光景と同じで(・・・・・・・・・・)。血に沈む、愚かな者達。そこに立っていた弟。その顔は、何かに怯えていて(・・・・・・・・)。震える声で言った。


 「俺、おかしいのです」


 『あ、兄……上』

 『すまない。遅くなってすまない。もう、大丈夫だ。私たちが全てやっておく。だから恐いモノは忘れて寝なさい』


 震える体を抱きしめて息を吐いた。気がつかなかった。動揺していたとはいえ、ソレに思いいたらなかった自分達が悪いのだから。くだらない事で動揺するな。大切なモノを守りたいなら。そう己に言い聞かせた。本当につらかったのは自分ではない。弟だ。


 『お、おかしいのです』

 『お前はおかしくなんてないよ』

 『いえ、おかしいです』


 言葉を選ぶように考える弟に、私はただ言葉を待った。


 『普通は――このような状況下だと彼らに恐怖を抱くでしょう。いえ、そうでなくても意図してやったわけではない事に恐怖を抱くでしょう。ソレが普通だ』


 泣きそうな声で


 『彼らを殺したことに何も感じないのです。怨みも何も――そんな自分が恐いんです』


 『兄上、俺――おかしいですよね?どこか、壊れて……いる』

 『お前はおかしくなんてないよ』

 『でも』

 『本当におかしい奴はね、自分の事を正常だと思っているんだよ。少なくとも、そんな考えを否定しているお前は、おかしくはない。正常だ。大丈夫、私が保証する。それとも私が信じられないかい?』

 『いえ、兄上は――いつも正しい』

 『たまに、間違える事もあるけどね』

 『俺はおかしくないんですね』

 『ああ、そうだよ』


 その言葉に安堵したのか、弟はすぐに気を失った。


 あの時の光景が重なる。事実、レイも動揺している。近くにより、抱きしめる。


 「どうしたんだい?らしくないね。いつもの仮面は、どうしたんだい?」


 私たちが必須とする、己を――大事なモノを守る仮面。それさえも崩れ、見るからに動揺を隠せない弟に私は問う。


 大きくなったなぁ。


 いつの間にか、弟の背は私の肩にまで伸びていて


 「俺……おかしいって」

 「ん?」

 「俺、仮面は――兄上達ほどじゃないけど完璧にやっているつもりだったんです」


 私達に必須な仮面は、身内ですら判断するのは厳しい。――身内だからこそ、気づく癖などで判断をする。本人では気付くことない事も。


 「今日、隣国の巫女に――」


 この国は、魔法が栄えている。他国に比べ、魔法に関しては特に抜きんでている。ゆえに、魔法を学ばせる――特に王都に存在する魔法学園に入学させるものが多い。


 巫女というと、アルケニアの異界の巫女の事だろう。異世界より召喚された巫女。勝手な事だと思う。自国の事を他国でもなく――異界の住人に押し付けるなど。


 「巫女というと、アルケニアの?」


 念のため確認すれば小さく頷かれる。ただ、次に言われた言葉に、思わず殺気を放ちそうになった。


 「笑みが胡散臭いと――厳密には『気持ち悪い。その胡散臭い笑み、止めたら』とですが。やっぱりおかしいと客観的に見て」


 弟の肩に手を置き、眼を合わせる。視界の端にいたアルが頬を引き攣らせた。かなり、失礼な事だ。


 「いいかい、異界の巫女はただでさえ、あそこの常識も勉強中だ。こちらの国に関しても知らない事の方が多いだろう。そもそも、巫女がいた世界の常識を私たちは知らない。ソレはきっと、巫女の世界の常識的な挨拶(・・・・・・)だったんだよ。気にしたらダメだ。自信を持ちなさい。レイ――お前の仮面は私達と同格だよ。大丈夫、ああ久しぶりに皆で寝ようか」


 慰める為の言葉だったか、なかなか良い提案な気がしてきた。兄弟仲良く寝る。たまにはいいだろう。


 「そこまで、子供じゃありません」


 拗ねたように言う弟は、もう自分と言うモノを取り戻していた。うん、良い子だ。


 「じゃあ、レイはいいんだね」

 「仲間ハズレは嫌です」

 「ふふ、ライ達には私から言っとくよ」

 「はい」


++++++++++


 笑顔で見送る。私の弟は本当に素直で可愛い。末っ子は可愛いというが本当に可愛い。だが、この事(・・・)で一人で動くと他の弟達が拗ねてしまうだろう。私は手短に手紙を書き、確実に届くように魔法を施した。


 「ふふふ」

 「おい、笑い方が恐いぞ」

 「ふふふ、だっておかしいじゃないか」


 巫女の事をクロに聞いてみれば、それなりに面白い話を聞いた。ふふふ、いい度胸をしている。私の大事な弟に手を出そうとは。


 「そのケンカ、かってやろうじゃないか」


 これから、やることに私は笑みを深く浮かべた。ただで済むと思うなよ巫女殿・・・


登場人物(凄く簡単な)


・レイ

 第14王子。側室の子供。

 少々特殊な家庭内で育った結果、真っ直ぐに育つ。


・ジェラール

 王太子。弟達大好きなブラコン兄。特に末っ子のレイを可愛がる。

 能力、外見、地位は完璧。多くの者を虜にしているが、未だに妃を決めず。

 売られたケンカは買う主義である。


・アル

 ジェラールの幼馴染。剣の腕はぴか一。ジェラールの本性を知る一人。

 結界魔法――というより神官位を取得している。



その他で、勘違い巫女(笑)や、他兄弟。


内容は考えているので、気が向いたらまた続きをアップしようかなと思ってます。

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