月下想歌
「今日は満月だよ」
リュヌは僕にそう呼びかけた。
テラスにでて、黒々とした天空に目を向ける。
そこには、青々と色づいた星が静かに昇っていた。
僕たちの祖先は、かつて、あの星にて暮らしていたらしい。
僕らの居所であるこの星よりも4倍もおおきい、天空に佇むその青い星は、常に僕らを見下ろすようにしてそこにあり続ける。
その星で暮らしていた者たちのうち、ほんのわずかな者たちが、この地に降り立ち、ほそぼそとした生活を始めたそうだ。
そして、いまあの青い星には、僕たちの同胞はいなくなってしまったとのことだ。
青い星は天空で、とりわけ大きな宝石のような存在感を示しつつ、そこにあり続ける。
僕とリュヌは、ただただそのさまを眺めている。
ひときわ大粒なそれには、手を伸ばしても届かない。
それでも、そこにあるその星は、僕たちにとって、とても大切な宝物であることに変わりはない。
だから僕たちは、ただただ、それを眺めては、時にほほえみ、うなずき合うのだった。