第3話 族長への謁見の準備
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出掛けていたイルマが時計塔の12時の鐘が鳴る少し前にフォルティス邸に戻ってきた。
帰ってくるなり昼食の準備をし出来上がると食堂のテーブルに用意してからミールを呼びに行くと二人の赤ちゃんを微笑みながらじっと見ていてイルマが呼びに来たことにも気が付いていなかった。
「ミール! 赤ちゃんが可愛いのは分かったからずっと見ているのは止めなさい……少し早いけど昼食にしましょう? 食べてから出掛けるからね」
「あっ! はい、今行きます」
いつもより早めの昼食を食べながら族長の説得の方法を話し合っていた。
「さて、ミールどうやって族長を説得しましょうか?」
「……説得? 族長様反対されるのですか?」
頷いてから「族長は、絶対に猛反対されるでしょうね」
「どうしてですか?」
「ミールがあの子を拾ってきた状況に納得しないでしょうね……寝ていたら誰がに起こされた事……誰かに森まで誘導された事……何処の国の馬車が分らないが見た事……この子が何処の誰が分らない事……この世界ではおそらく数人しかいない黒髪黒眼、出会ったのが運命だとか頭の固いあの方には納得できない事ばかりだからね」
「黒い髪と瞳ってそんなに珍しのですか?」
「黒い髪が瞳……どちらが片方なら居ない訳じゃないけど、両方となると此処の大陸にはいないでしょうね、中央大陸南にあるサフル大陸にはいるかもしれないけどあそこは、天人族以外の種族が生活しているって話だから」
「私が嘘を言っていると思いますか?」
左右に首を振り
「いいえ……私は、ミールが嘘を付かない事は知っているけど、あの方は……いいえ、嘘を言っているとか言っていないとかの問題ではなく、この村以外の人をまったく信用していないのよ! 私達の事は信用したとしても赤ちゃんは村の外からきたから信用しないと思うのよ」
「なぜ、そんなに人を信用しないのですか?」
「私も聞いた話なのだけど! 私が生まれるよりもっと前に1人の旅商人を信用して滞在を許し商売をする事を許したけど2ヵ月程だったある日、北地区にあった村の宝の1つコンキスタの剣が盗まれたみたいなの、それからこの村は閉鎖的になったみたいなのよ! 国王印の押してある書類を持っていない者は例外なく村の中には入れないのよ」
「でも今回は、国王印の書類は無いけど……赤ちゃんですよ? 持っている方がおかしいと思います」
「あの方達にそれは通用しないと思うわ」
二人の間に沈黙が流れた。
「…………」
「…………」
「ここで話し合っても対策の立て様はなかったわね! 行き当たりばったりでいきましょう!」
部屋に2人の笑いが起こった。
笑っている最中に、イルマの部屋からエストの泣き声が聞こえてきた。
「私は二人におっぱいをあげてから準備するから、ミールは先に準備しときなさい」
「はい、分かりました。族長様への謁見用の衣装ですよね?」
「そうよ、よく分かったわね」
褒められて嬉しかったのがミールはにこにこしながら2階の自分の部屋に戻り着替え始めた。
イルマは自分の部屋に戻り2人のおしめを取り換えてから、おっぱいをあげ始めた。
おっぱいを飲ませ終わってベッドに戻すのと同時にミールがドアをノックして入って来た。
「お母さん、準備終わりました!」
「二人を見ててねお母さんも着替えるから」
「はい」
イルマも着替え準備が終わると、二人の目と目が合い頷き合った。
「では、ミール……行きましょうか? お母さんはエストを抱いていくから、この子をお願いね?」
「はい!」
{中央地区の族長様の邸宅まで15分程歩くけど、がんばってその子をよろしくね?」
「はい」
「後、族長様の邸宅に向かう道で……村人達が色々と嫌な事を言ってくると思うけど相手にしたら絶対駄目よ! 話しかけられても無視するようにね」
「……はい」
ミールは、不安な顔をしながらも頷いた。
二人は覚悟を決めて族長邸に向かう為に家を後にした。
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