第2話 母と長女の話し合い
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イサーラ村、イストリア国王都イプハールから西へ約80キロに位置しサファル領の村の一つだがイストリア国内で唯一自治が認められている村でもある。
認められている理由は、他の村や国々に比べて魔術師や剣士は勿論色々な方面の人材の質が高いので毎年数人を派遣する約束で自治が認められた。イサーラ村以外では、学校に通うのは6才から15,6才の約10年間に対しイサーラ村では、3才から10才までの7年間で全て習う事になっているが優秀な子供は、6,7才で終了する者も居る。7才になる年には村で試験があり合格すると卒業となるが通いたい者はその後も学校に通う事が出来る。
村の主な生産は狩りと小麦、イモ類による畑作で生計を立てている。
イサーラ村出身者以外の村への出入りを制限している。
ミール・フォルティスが赤ちゃんを森から拾って来てから約4時間イサーラ村の中央地区にある時計塔が6時の鐘を鳴らす少し前に鳥や動物を狩る者は北と西にある森へ魔獣魔物を狩る者は南の荒地に畑仕事のある者は、東門への道を歩いていた。
村人達の歩く姿を見ながら小鳥達が朝の到来を知らせるかのように鳴いていた。
時計塔から西地区方面へ10分ほど歩くと西地区長の邸宅兼役場があり裏手を歩いて行くと高台がある。そこの坂を上っていくとイサーラ村にある学校の一つがあり隣にフォルティス邸がある。フォルティス邸の裏にあり綺麗に整えられている庭の木にも鳥達が鳴いていたが時計塔が朝6時を知らせる鐘がなると村中の鳥達が大空へ飛び立っていった。
鐘の音が響き暫くするとフォルティスの長女ミールが目を覚ました。
目を覚ました瞬間にベッドから飛び起きて部屋を出ると1階にある母イルマの部屋に走って向いノックもせずに部屋に入った。
「お母さん、おはようございます。赤ちゃん起きた?」
「おはようミール、まだ寝ているから静かにしてね!」
寝ていたのを無理やり起こされた為がエストが目を覚まし泣き始めてしまった。
「! ほら、起きちゃった……」
「……ごめんなさい」
イルマが泣きだしてしまったエストを抱っこすると「エストちゃんどうしましたか?」と話し掛けながら色々調べてみてオムツが濡れていたので取り替えて、少し汗をかいていたのでシャツと服を替えてもまだ泣いているのでお腹がすいていると思いおっぱいをあげるといきおいよく飲み始めた。
エストにおっぱいをあげていると、いつの間にが隣に寝ていた赤ちゃんも目を覚まして両手を上げてきゃっきゃっ笑っていた。
ミールが赤ちゃんを腕に抱えると指を舐めてきた。
「お母さん、赤ちゃんお腹空いているみたいだからこの子にもおっぱいあげて!」
「そうね……ちょっと待ってて」
エストをベッドに戻しミールから赤ちゃんを受け取るとおっぱいをあげた。
おっぱいをにこにことおいしそうに飲んでいるのを見てミールが
「お母さん……! エストも可愛いけど、この子もすごく可愛いね!?」
「本当に可愛いわね……! それに黒髪は分かっていたけど瞳も黒く魅力的ね!」
赤ちゃんの髪は柔らかくまっすぐでカラスの羽根より真っ黒であったが光沢があり神秘的に見えた。瞳もやさしく柔らかそうに見えて黒曜石の様に力強さがありキラキラと光を放っている様に見えてとても魅力的な黒い瞳をしていた。
「うん……髪も瞳も黒いなんで、見た事も聞いた事も無いよ! かなり珍しいのかな?」
「珍しいと言うより見るのは初めてかな! 数人だけど聞いた事はあるような気はするけど」
ミールは、おっぱいを飲んでいる赤ちゃんの頭を撫で本当の弟を可愛かる姉のような気持ちでいた。
イルマはそんなミールを優しい瞳をしながらも複雑な表情で言葉にした。
「……ミール……この後、朝食を食べた後にこの子の此れからについてお話ししましょうね?」
「……はい、わかりました」
「朝食の準備をしてくるからできるまで2人を見ててくれる?」
「はい!」
笑顔で元気よく返事をしたエストを見てイルマはくすっと笑って「それじゃお願いね」と言うと朝食の準備の為に部屋を後にし厨房へ向かった。
朝食の準備をしながら此れからどうするべきが考えているといつもより朝食の準備に時間が掛かってしまっていた。
思いの外時間がかかったが朝食の準備が終わったので、ミールを呼びに行くとベビーベッドの傍らで寝てしまっていたので優しく揺り起こし一緒に食堂へ向かった。
二人で仲良くお喋りしながらまるでこの後のお話をするのを伸ばすかのようにゆっくりと食べた。
「……ごちそうさまでした」
「はい、ごちそう様でした。食器を片付けてからお話ししましょうね」
「……はい」
イルマは食器を洗い片付けると、朝食を食べていたミールの向かいの席に着いて此れからの拾って来た赤ちゃんの事を話し始めた。
イルマは、「ミール此れからどうするが話をしましょうか?」と話し始めるとミールは、一度瞼を閉じてから頷いてから「分かりました」と返事をした。
「……さて、ミールはあの子をどうしたいの?」
「……私は、一緒に……いたいと思っています」
「この家で一緒に住みたいって事でいい?」
「はい、そうです」
「犬・猫じゃないのよ? 簡単に言ったらダメなのは分かってるでしょ?」
「……分かってます……でも……多分……あの子をお母さんが何がの理由があって私に託したんだと思います。私とあの子が出会ったのは運命だと思っています」
「……運命……ね……どうしてそう思うの?」
「赤ちゃんのお母さんの声だと思いますが自分の声を聞える人を探していたみたいで、聞えたのは私だけだったようです」
「………………」
「………………」
目と目が見つめ合ったまま2人の間で暫く沈黙が流れた。
短いような長いような時間がどれだけ流れたが分からないほど見つめ合った後にイルマが一度深く目をつぶって「ふぅー」と溜息を吐きながら瞼を開けてミールに言った。
「……わかったわ」
「それじゃ……!」
「くすっ、喜ぶの早いわよ」
「えっ、どうして!」
「私達だけで勝手に決められないでしょ? お父さんと族長には相談しないとダメでしょ?」
「相談しないとダメなんですか?」
「村の中の事ですからね……それにもしかしたらイサーラ村の関係者の子供かもしれないし」
「そう……かもしれませんね……でも、可能性は低いですよね? イサーラ村には黒髪や黒眼の人は居ませんから」
「可能性は、低いとは思うけど一応探してみないと」
「相談するなら早い方がいいですよね? でもお父さん暫く帰ってきませんよね?」
「お父さんは後回しになるけど、後で手紙を送っておきましょう。まあ、お父さんには私とミールがお願いすればダメとは言わないと思うから相談するのは族長かな」
「くすっくすっ、お父さん、私たちには甘いものね」
「相談は今日にしましょうか……族長に昼からお会いしたいと連絡しときましょう」
「お母さんも本当は……あの子と一緒にいたいと思っているでしょ?」
「ふふっ、本当はね……あの子可愛いし、何処が不思議な感じがするしね……ミールの言う通り運命を感じるし……でも、話し合わないとダメな事だからね? ここで、この話はこれぐらいにしときましょ」
「はい」
イルマはお話を終了させると族長に連絡する為に出掛ける事にした。
「ミール、お母さん出掛けてくるから二人を見ててね?」
「はい、分かりました。いってらっしゃい」
イルマが家から出掛けるのを見届けるとミールは二人の寝ている部屋に戻った。
ベビーベッドで2人は、仲良く寝ていた。
「エストとこの子本当に可愛いなぁ……一緒に住めるといいね!」
二人の頭を交互に撫でながら少し不安そうに呟いた」
二人は寝ているのにミールに向かって微笑んだ。
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