第14話 ラピス初めて王宮の外へ
昼食会が思いのほか長引いてしまい王宮を出た時には陽が少し傾いていた。
ソティアスとラピスが先頭で2列で歩きその後ろに2人のメイド、メイとマイカ、後ろに魔術師の3人、兵士の4人が続いていた為に一等級地区から帰る際、街の人にかなり目立って歩いていた。五等級地区までの帰り道、ラピスは、初めて王宮から出たので見る物すべてが珍しいのか衣服屋、宝石屋、武器屋や防具屋、鍛冶屋、魔道具屋等……お店というお店に立ち寄る為に遅々として先に進まなかった。
「ラピス、前を向いて歩かないと人にぶつかりますよ」
「ソティ! 分かっていますけど見る物が全て珍しいのです。どうしましょう」
「お暇な時でよければ、お付合いしますから今日の所は、家に行きましょう」
「……残念ですか分かりました。絶対ですよ?」
「はい、絶対です」
それでも珍しい物があると立ち止まる為に五等級地区に着いた時にすっかり陽が落ちていたが雑貨屋に寄り人数分の寝具を買ってから家に戻った。
「ラピス、ここが僕の家です」
「大きい建物ですね?」
「孤児達が多いので大きめに作りました。此れからも増えると思いますけど、皆と一緒で大丈夫ですか? 何なら別に建物を作りますけど」
「いいえ、一緒で構いません」
「では、行きますか……皆に紹介します」
「はい」
ソティアスがラピスとメイド達を家の中に案内するために玄関の扉を開けると姉ミールが心配そうな顔で立っていた。
「ミール姉様、こんな所でどうしたんですか?」
「どうしたって……朝、王宮に出掛けてから帰って来ないから心配してたんでしょ!」
「……それは、心配掛けてすいませんでした。父様に何も聞いていないのですか?」
「お父さん? お父さんは昼食食べてからずっと寝ているわよ? ……!? それより、其方の方達はお客様?」
「……えーと……紹介します。……イストリア国第11王女ラピス・イストリア様です……」
「えっ!? ……王女様?」
「はい、ラピス・イストリアです。よろしくお願いします」
「こ、此方こそお願いします。で、でも……ど、どうして王女様がこんな所へ?」
「はい、わたくしラピス・イストリアは、本日、ソティアス様と婚約致しました。……よろしくお願いします。お姉さま」
「はい、よろしくお願いします! って、え――――――――――――――――――婚約者――――――――――――――?」
「……ミール姉さんどうしたの?」
ミールの声が家中に響き渡り父リキドを除く全員が集まってきた。
「? 姉さん? ……ソティ? ミール姉さんどうしたの? その子は?」
「……イストリア国第11王女ラピス・イストリア様で、僕の婚約者です」
「王女様!? ……」
「「「「「え――――――――――――――――――婚約者――――――――――――――?」」」」」
「ソティ……賑やかで楽しそうなお家ですね?」
「楽しめそうですか? ラピス?」
「はい!」
「ソティ! 王女様を呼び捨て!? じゃあなくて……王女様が婚約者ってどういう事よ?」
「詳しい話は、後でするから……ミール姉様、エスト、ラピスを部屋に案内してあげて話し相手をお願いします。少ししたら晩御飯にしましょう……僕は、父様を殴りに……話をしてきますので」
「ソティ……殴るって!?」
「聞き間違いです。マナさん、此方新しいメイドさんのメイさんとマイカさんと魔術の先生をしてもらう魔術師のクリムさん、ネイさん、ナルさんです。剣術の先生と警備担当のエナさん、ファナさん、ウィルさん、バランさんです。お部屋への案内と家の中を案内してから晩御飯の準備をお願いします。僕も後から手伝います」
「はい、皆さんよろしくお願いします」
「「「「「「「此方こそお願いします」」」」」」」
「姉様。エスト、ラピスをお願いします」
「分かったわ……王女様お部屋へご案内します」
「ラピスと呼び捨てでお願いします。お姉さま方」
「「わ、わかりました」」
「みんなも食事が出来るまで、自分のお部屋がラピスが早く慣れるように話し相手をお願いします」
「「「「「はーい」」」」」
ソティアスは、全員に指示をしてから父リキドがいる部屋に向かい戸をノックしてから中に入るとまだ、寝ている父リキドが居た。
「父様、寝たふりは止めて下さい」
「んー? おお、ソティ王宮に休む事を言ってきてくれたか?」
「……父様……本気で言っているのですか? 母様に言いますよ? 言わなくってもばれると思いますけど」
「ぐぅ」
「本当の事を言って頂ければ、母様が怒らない様に僕から言いますけど、本当の事言って頂けないのであれば……明日、母様に挨拶に行きます」
「なぁ!? ……早くないか?」
「こういう事は、早い方がいいと思います」
「……」
「……全部話して下さいとは言いません……話せる事だけ話して下さい」
「……分かった。……これは、本人も知らない事だから他言無用で頼む」
「分かりました」
「ラピス王女は、王妃様のお腹の中にいる際に教会にて……将来、世界に危機が訪れる際に黒髪黒眼の救世主の妻として一緒に世界を救う旅に出ると信託があった……王女は、神の加護を受けて生まれた一人だ。
「救世主って、まさか……僕の事を言っているのですか? 黒髪黒眼ってだけですよね?」
「そのまさかだ……お前も神の加護を受けた一人だ……それもかなり上位の……だ」
「今まで聞いた事無いですよそんな話!」
「無詠唱で魔術を放てる。ソティが家に来た時の話を聞いたのだが殺されそうな時に……光がお前を守ったと聞いた。他にも理由があるが主にこの二つが理由だ」
「……ラピスの加護は?」
「王女の場合は、はっきりと分かっている訳ではないがおそらく絶対的な幸運、他にもあるとは思うが分かっていない……生まれてから俺と俺の部下で警護してきたが、警護の穴を付かれて何度か殺されそうになっているが……普通の人なら死んでいる状況でも生き残っている。暗殺者は、邪神の加護を受けた者と邪神教の者だ……状況を見て王宮の中にも数人いることも分かっている」
「……誰かは、分かっていないのですか?」
「全ての人物がわかっている訳ではないが、分かっている中で言えば、今日お前が試合をしたオネスト・コルカールもその一人だが証拠を残さない……奴が休みの日、勤務の終わった後に監視する兵士が一人として戻って来ない……死体もだ!」
「……そこで、何故僕ですか?このまま父様達が守った方が安全なのではないですか?」
「いや、最近になって分かった事だが……王子、王女の中にも邪神教の者がいるので、王宮にいるのが危険な状況になって来た為、少し早いがソティの傍に置くことにした」
「少し早いって、早すぎでしょ! まだ6才ですよ? 僕は」
「確かに早いとは思うがお前なら守ってくれると信じたからだ」
「……今日連れて来た9人は大丈夫なんですか?」
「ああ、あの9人は大丈夫だ。俺の部下であり調査も終わっている」
「そうですか……それにしても何故、最初に相談してくれなかったんですか?」
「相談したら素直に婚約したか?」
「……しないと思います。手は貸すかもしれませんか」
「だろ? だからこんな手を使ったんだ」
「……もういいです。話は分かりました。で、婚約って本気ですか?」
「ああ、それは、もう決定だ。結婚したいならいつでもいいぞ?」
「……」
ソティアスは、諦めたが返事をしないで部屋を出て溜息を吐いてから厨房に向かったが思ったより話が長引いた為、晩御飯の準備が終わった所だった。
「すみません皆さん、準備を手伝えなかったですね」
「ソティアス様、お気にしないで下さい」
「お話は終わったのですか?」
「はい、終わりました。……皆まだみたいですね? 呼びに行って来ます」
「いいえ、ソティアス様、私達が呼びに行って来ます」
「そうですか? すみませんがお願いします」
「「「「「はい」」」」」
ソティアスは、父リキドも食事をさせる為に呼びに行き食堂に連れて来て席に着かせた。暫くすると全員が席に着いたので、食事を始めた。
「全員もう知っていると思いますが、此方にいる方は、王女ラピス・イストリアです……がラピスの事を王女様と呼ぶ事を禁じます。呼び捨てが様で呼んで下さい」
「「「「「はい」」」」」
「ラピスは、僕達と同じくこの家で一緒に住むことになります。仲良くしてあげて下さい」
「ラピス・イストリアです。よろしくお願いします」
「ソティ君、本当にいいの?」
「ええ、理由は言えませんが、今は納得しています」
「ソティ様、ラピス様も一緒に勉強するんですか?」
「そうですね、本人が勉強したい物があればですが」
「はい、魔術を習いたいと思っています」
「分かりました……皆も明日から魔術と剣術が習う事が出来ます」
「「「「「本当ですか?」」」」」
「はい、言葉の読み書き、算術の後でですけどね」
「「「「「はーい、わかりました」
「父様、またお酒ばっかり飲んで、二日酔いになっても明日は王宮に行って下さいね」
「お前も行くか?」
「行きません」
「なら、何をする?」
「……父様、気が付いていますか? 王都内に盗賊が入れ替わりで出入りしている事に」
「何? 本当か?」
「ええ、現在確認できるだけでも20人ほどいます。明日は、盗賊を付けてみようと思います」
「……お前なら大丈夫と思うが気をつけろよ」
「はい」
「盗賊は捕まえて来てもいいが殺しても問題ないぞ」
「みんなのいる所で言う事ではないと思います」
「!? ああ、すまん」
「不必要に殺す気はありませんが……危険な場合は……ます」
「そうか」
「僕は、部屋に戻りますが、皆も遅くならないように寝て下さい。特に父様、さっさと部屋で寝て下さい」
「「「「「はーい」」」」」
「分かってる」
ソティアスは、部屋に戻り考え事をしていると眠りについてしまった。




