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第1話 捨て児

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   子夜しやと呼ばれる時間帯、子供が小さな女の子が起きているはずの無い時間に女の子は、不思議な声に導かれながら高台にある自分の家を抜け出し坂を下り村の西門に向って歩いていた。

 女の子は、ミール・フォルティス3才、この国では珍しくも無いブラウンの瞳にブラウンのセミロングストレートただ、3才にしては整った顔立ちで、村の中では人気のある可愛い女の子のであるが父と母に比べると優れた能力が無いので同年代の子供から馬鹿にされからかわれる事が多い。

 

 現在学校で習っている各種勉強、魔術の授業全般が苦手なのだが親が教えるようなことはなかった。何故なら母親が学校の校長であり魔術教師なので、授業以外で娘に教えると他の生徒の親達から贔屓をするな、と苦情を言ってくるので、かわいそうだが見て見ぬ振りをしていた。ミールも3才ながらに周りの空気を読むので母に助けを求める事ができずにいた。

 なら父に助けを、と思っても父はこの国、イストリア国王都イプハールの王宮で将軍位であり王女の近衛隊長をしているので1年のうちで数日しか戻って来ない為に心配させたくないので黙っていた。

 相談できる本当の友達がいないので、学校が終わると常に一人で寂しい毎日を送っていた。


 この日も食事をした後に部屋に籠りする事が無いので早めに就寝についていたのだが夢の中に美しい女性が悲しそうな顔で悲しそうな声で「……私の声を聞える方お願いします。私の……私の赤ちゃんをお願いします。私の赤ちゃんを助けてください……」女性が繰り返し繰り返し同じ言葉を繰り返すので、ミールは目を覚ました。

 

 「……変な夢だったなぁ!」

 目を覚ましてから独り言を喋った後に夢の中の女性の声が頭の中に直接語り掛けてくるように聞えてきた。

 「よかった!! あなたは、私の声が聞えるのですね? お願い! 私の赤ちゃんをお願いします。イサーラ村の西門まで来てください。お願いします。貴方の安全を保障しますので……お願いします」

 「……夢じゃなかったのかな……こんな夜に家を出ると怖い……」

 窓から外を見ると思っていたより明るかったので、外に出でみる事にした。

 2階にある自分の部屋の戸を音を出さないように開けて廊下に出るとまだ音が出ないように閉めてから階段をゆっくりと1階に降りると母がいない事を確認すると玄関から家の外に出た。

 夜は暗く怖い物だと思っていたミールだったが雲一つない月明かりに星々の美しさに見惚れて怖いという感情が微塵も湧いてこなかった。

 「夜って怖い物だと思っていたけど美しい物だったんだ!」

 あまりの美しさに感動していたが女性の声が聞えてきた。

 「……お願い! 早く来て!」

 

 すっかり忘れていた為ハッ! と思い出し急いで自分の家のある高台の坂を下り始めた。

 下り始めた頃から女性の優しい声が聞えてきた「大丈夫! 怖くないよ!」と繰り返し聞こえてくる声と月明かりで全く怖くないのでどんどん歩き始めたが暫くすると異変に気が付いた。

 子供は寝る時間だが大人が寝るには早い時間帯なのにここに来るまでに一人も見掛けない事に少し不安はあったが気にしないで歩き始める事にした。こんな時間に子供が歩いているのが見つかると家に連れ戻されると思いいい方に思う事にした。

 西門に着くと普段なら門番が立っているはずなのに門番もいなかった。

 「ここまで、誰も見掛けなかったし……門番もいないなんで……」

 西門から村の外に出た瞬間に村から20メートル先にある森の中に月明かりよりも眩しい光が輝いていた。

 「なに、あの光?」

 その光が気になり普通なら夜の森に女の子が入る事が無いのにミールは、怖い気持ちより興味の方が強かったので気にせずに森の中に入った。

 森の中でも魔獣魔物はもちろん鳥や動物達の鳴き声さえ聞こえてこなかった。

 光を放っていた場所に到着すると木の根元に生まれたばかりの様な赤ちゃんが置かれていた。

 赤ちゃんを抱き抱えようとするとまるでミールが来るのを待っていたかのように小さい両手を上げて微笑んだ。

 「か、かわいい! エストと同じくらいかわいい!」

 エストとは、一ヶ月前に生まれたミールの妹だ。妹のエストの瞳と髪もブラウンだった。

 

 赤ちゃんを抱っこし森を出ると眩しい光が収まり元の月明かりだけに戻った。

 

 ミールが赤ちゃんを連れて森を出るのを確認したかの様に遠くに止まっていた馬車が走り去って行った。

 馬車の事も気になったが今は、赤ちゃんを早く家に連れて帰りたいと思い家に戻る事にした。

 村の西門に入り暫くしてから後ろを振り向くと門番が立っていたし来る時には一人も合わなかった村の大人達も歩いていたので見つからない様に隠れながら家に戻る事にした。

 やっとの思いで高台の坂を登りきると走りだし家の玄関を

 「お母さん、お母さーん……お母さーーん!」と

 勢いよく玄関をお母さんと2度3度と呼びながら入った。

 お母さんと呼ばれた年齢18歳ブラウンの瞳、腰まであるブラウンのロングストレートの女性イルマ・フォルティスは、眠たそうな顔、眠たそうな声で、

 「……どうしたの? エストが起きるでしょ……えっ! ミール……その子はどうしたの!?」

 イルマは、ミールの腕の中にいた生まれたばかりのような赤ちゃんが安心したような顔で寝ていたのに驚きながら聞いた。

 「森で拾ったの」

 「森で? まだ外も暗いこんな時間にどうして森に行ったの?」

 「不思議な夢を見て起きたんだけど……最初は夢だと思っていたら夢の中で聞いた女の人の声が頭の中に聞えてきたの、お願い私の赤ちゃんをお願い、と、あと村の西門まで来て、と呼ばれて」

 「夢? 女の人の声? なんでお母さんに黙って1人で行ったの?」

 「ごめんなさい、でも、一生懸命に私を呼んでいたので、早く行かなければと思って」

 「そう……1人で怖くなかった?」

 「うん、全然怖くなかったよ! 月明かりがとても明るかったし、女の人の声がずっと聞こえていたから」

 「森に行って、赤ちゃんの他には誰がいなかったの?」

 「赤ちゃんの傍には誰もいなかったけど、森から出たら遠くの方で馬車が走って行くのを見たよ」

 「何処の馬車がわかる?」

 「ううん、遠くって見えなかったよ……」

 「そう……」

 イルマは少し考えてから、まだ夜中なのに気が付き眠たそうにしているミールと赤ちゃんを見て一度寝かせた方がいいと思い優しく言葉を掛けた。

 「ミール、まだ朝まで時間があるからもう少し寝なさい、その子もベッドに寝かせるからお母さんに渡して」

 「……はい、わかりました。赤ちゃんをお願いします……。おやすみなさいお母さん」

 「はい、おやすみなさい」

 ミールは返事をするとイルマに赤ちゃんを渡して自分の部屋に戻りベッドに潜り込むとほっとしたのか時間も掛からずに深い眠りに付いた。

 

 イルマはミールから赤ちゃんを受取り抱っこすると自分の部屋に戻りベビーベッドで寝ている1ヶ月前に生まれたもう一人の娘エストの隣に寝かせると部屋の隅に置いてある椅子を持ってきて2人を見守るように眺めながら独り言を呟く。

 「君は誰かな? どこから来たのかな?」

 と言いながらホッペをつっつくと赤ちゃんはニコッと笑った。

 イルマは、一瞬驚いたが直ぐに

 「……ふふ、かわいい! もう少し眠りなさい」

 イルマは赤ちゃんの頭を撫でながら呟いた。

 すると赤ちゃんは、微笑んだかと思うと眠りについた。

 子夜しや=夜の12時(午前0時)

 最後までお読み頂き有難う御座います。

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