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親を探す旅に出ただけなのになぜ世界を救うことに…?  作者: 黄昏の大陸
第2章 少年編 はじめての冒険からイサーラ村の試験……そして
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第4話 王都イプハールに到着

 出発して2時間、狭い山道を歩いていると前方から”コボルト”50体がこちらに向かって歩いてきたのを見て子供達は悲鳴を上げ、盗賊達は、数の多さに絶句していた。ソティアスは何事もないようにコボルトの前に歩み寄り火魔術”火矢散ファイアアローシャワー”を唱えると火矢数百本がコボルトに向かって飛んでいくとコボルト50体が何もする事もできずに全滅した。

 「「「「「!?」」」」」

 「な!? 何だ今の魔術は? それに詠唱無し?」

 「いや、 確か治癒魔術も使っていたし詠唱もしていなかった」

 「そんなに驚く事じゃないでしょ」

 「いやいやいや、普通は驚くだろ! 今の魔術は何だ!? 見た事がないぞ」

 「今の魔術? 自分で考えただけですけど?」

 「な!? お前もしかしてガキの振りして人族じゃないのか? 成人しても姿がガキのままの種族が居るみたいだし」

 「……僕は、人族で、今年で6才です」

 「そ、そうなのか……」

 「まあ、いいですけど……それよりも僕の実力を見せておけば逃げ出す事はしないでしょ?」

 「……ああ」

 

 「ソティ次は、私たちも戦うよ」

 「ミール姉様とエストは、子供達を護衛していて下さい」

 「「わかったわ」」

 

 ソティアスは、コボルトの死骸を集めて、火力を上げた”ファイア”を放ち一瞬で燃やし尽くし残った骨も形を残さないようにして踏みづけバラバラにして”ウィンド”を唱えて吹き飛ばした。

 「ソティ何故そんなことを?」

 「そのままにしたらアンデッドになって蘇るからです」

 「そうなんだ」

 「ええ、さあ、出発しましょう」

 

 暫く歩くと前方から商人風の格好をした5人組が歩いてきて、近くまでくると挨拶してきた。

 「やあ、こんにちは、これから王都へ?」

 「こんにちは、はい、王都に行き……」

 ソティアスが挨拶し終わる瞬間に腰のナイフを抜き襲ってきた。

 「ソティ――――――――」

 「”火壁ファイアウォール”」

 ”火壁ファイアウォール”を唱えると突っ込んできた二人の体が半分燃えていた。”火壁ファイアウォール”の向こう側にいる残り3人に”水玉ウォーターボール”を放つと”火壁ファイアウォール”を突き破り顔面に直撃し気を失った。

 「……瞬殺」

 「エスト、縛るの手伝って!」

 「……うん」

 5人を縛り終わると後ろにいる盗賊に聞いた。

 「この人達お仲間ですか?」

 「……盗賊仲間ではあるが……俺達とは関係ない」

 「本当ですか?」

 「ああ、本当だ」 

 「わかりました」


 ソティアスは、半分焦げている2人に”治癒ヒール”を唱えて聞きたいことを聞く事にした。。

 「こんにちは」

 「……ああ」

 「後ろの荷物は何ですか?」

 「「……フン」」

 ソティは躊躇なく2人の足に剣を突き刺した。

 「ぐぅぅぅううううう」

 「ぐぁあああぐぅうう」

 「……”治癒ヒール”……もう一度聞きます。あなた方は、盗賊ですよね? そして、後ろの荷物は誘拐した子供ですね?」

 「……ああ、そうだ」

 「素直になって頂き有難うございます」

 「……」

 「……カタル、カース、ナギの3名の名前を聞いた事ありませんか?」

 「……いいや、聞いた事無い」

 「本当ですか?」

 「本当だ!」

 「……まあ、いいでしょ……エスト、一番後ろにお願いします」

 「わかったわ」


 「よお、お仲間さん、あんたらも捕まったのかい?」

 「……ああ、あんた等は、よかったな腕切り落とされなくって」

 「……!? なぁ! なんで腕無いんだ?」

 「そこのガキと女2人に切り落とされた」

 「なにもんだ?」

 「さあね」


 ソティアスは、さらに気を失っている3人を起こして同じ質問をするが答えは一緒だった。

 「エスト、この3人もお願いします」

 「了解」


 ソティアスは、荷台に近寄り麻袋を確認すると男の子3人、女の子2人が裸にされて詰められていた。

 「……盗賊さん……誘拐した子供は、裸にするのが決まりなんですか?」

 「……裸にしとけば逃げられないからな」

 「そうですか」

 

 ソティアスは、怯えている子供達に服を着せて話をする。

 「こんにちは、僕は、ソティアス・フォルティスと言います。皆さんは、王都から誘拐されてきたんですか」

 「うん、全員王都から誘拐されてきました」

 「此れから王都に向かいますけど一緒に来ますか?」

 「はい、お願いします」

 「では、後ろの船に乗って下さい」

 「「「「「はい」」」」」


 山道も終わりに近づいた時、王都イプハーの全域が見えた。

 「あれが王都ですか大きいですね」

 「王都は、初めてかい……盗賊の俺が言うのもなんだか最悪の都だぜ」

 「最悪?」

 「ああ、身分制度の酷い場所だ。冒険者、商人、職人以外は、仕事に着けない者は、スラムで汚い仕事をするが盗賊になる者が多いんだ」

 「……同情はしますが……だからと言って誘拐や犯罪行為の正当化にはなりません」

 「…………」

 「行きましょう」

 「……ああ」

 

 夕方頃に山道が終わり王都まで残り5km地点で探知に盗賊が引っかかった……その数60人。

 「ミール姉様、エスト、盗賊がきます。約1km、数60人……盗賊40人誘拐された子供20人です」

 「!? 盗賊40人? ソティ君どうするの?」

 「どうもしません。一気に片付けます。ミール姉様とエストは、後ろで子供の守りをお願いします」

 「1人で大丈夫?」

 「はい」

 

 「皆は、ここにいてください……盗賊のみなさんは逃げようとしたら頭を吹っ飛ばします」

 「……わかった」

 

 ソティアスは、1人で前方から向かってくる盗賊に近づいた。

 「なんだ! ガキ俺達に用か?」

 「ええまあ、聞きたいことがありまして」

 「……殺されないうちに消えろ。見逃してやる」

 「そうはいきません……”泥沼ボォグ”を唱えると盗賊40人の足元が液状化して全員沈んていく。足首まで沈むと止まった。盗賊が驚いているのを確認して”水玉ウォーターボール”を顔や鳩尾に当て気絶させた。

 全員気絶しているのを確認して泥沼を解除すると地面が元に戻った。ミールとエストを呼び縛るのを手伝ってもらい全員縛るのにかなり時間がかかった。

 「ふぅ……流石に40人は多かったですね」

 「「そうね」」

 「結局、1人で片付けてしまうなんで」

 「これくらいの相手なら、1人でも大丈夫です」

 全員縛り終わったのを確認して、盗賊を起こし今までと同じ質問をする。

 「こんにちは、盗賊の皆さん僕は、ソティアス・フォルティスと言います。後ろの荷台は、誘拐した子供達ですか?」

 「知らねーよ、クソガキ、自分で確認しろ」

 「どいつもこいつも……」

 ソティアスは、目の前の盗賊の足に剣を突き刺した。

 「ぐぅう!」

 「お! 耐えますね……このナイフお借りします」

 毒ナイフで胸に突き刺した。

 「ぐぅううあぁあ……さ。さっさと……殺せ」

 「うーん……流石この盗賊団のリーダーですね。感服です」

 「な!? なぜ……俺がリーダーと分かった」

 「内緒です…………なら隣の人は、どうですかね?」

 躊躇ないソティアスの行動を見ていた指名された盗賊は、顔色が悪くなっていく。「では、早速」と盗賊の胸に自分の剣を左胸に突き刺し肺に穴をあけた。

 「喋って頂けます?」

 「くそガキ」

 ソティアスは、右胸にも刺して右肺にも穴をあけた。

 「ぐっ……ひゅーふゅ」

 両肺に穴があき息ができなくなり青白くなり……窒息死する寸前で、ソティアスは、”治癒ヒール”を唱えて傷を治して、ついでに最初の男も”解毒プワゾン”と”治癒ヒール”を唱えて傷を治す。

 「いやー死ぬ寸前でしたね」

 「ハァハァハァー……このやろー」

 「喋る気になりましたか?

 「うるせー……殺す度胸もねえヤローが」

 「なかなか根性のある方達ですね」

 ソティアスはそう言うと踵を返し後ろにいる盗賊の所まで歩き話しかける。

 「あの盗賊団なかなか根性ありますね。貴方の知っている盗賊団ですか?」

 「……俺達の盗賊団の一つ上の組織だ」

 「なにか説得の方法はありませんか?」

 「……ない事もないが……あの組織のリーダーを派手に殺せは……リーダーが怖くって下が喋らないだけたと思う」

 「うーん……やっぱり、それしかないですかね」

 「……」


 前方の盗賊団のリーダーの所に戻り、もう一度説得を試みる。

 「どうでしょう……素直に喋ってくれませんか?」

 「…………クソガキ」

 「まあ、あの荷台の事はもういいです。中身は、誘拐してきた子供でしょうから」

 「……」

 「……カタル、カース、ナギの名前聞いた事ありませんか?」

 「な!? 何故その名前を」

 「まあ、僕が旅をする目的の1つですね。この中にいますか?」

 「…………」

 「この中にはいないが、3人の事は話せない……ですか?」

 「……」

 「あなたより上の立場の者なのでしょうね。もういいです……エスト! 向こうの盗賊団を連れてきて此の盗賊団を後ろに繫げて下さい」

 「了解」

 ソティアスは、荷台の麻袋を開けて驚いだ……裸なのは一緒だが全員……頭の上に犬の耳が付いている犬人族でかなり酷い扱いを受けていたのが殴られた跡がひどい、衰弱して居る者、意識のない者もいる。 

 「これは……ひどいな……」

 ソティアスは、人語で話し掛けたら一人の女の子が反応したのでその子と話をする事にした。

 「こんにちは、僕は、ソティアス・フォルティスです。言葉分かりますか? あなたのお名前は?」

 「……はい……犬人族のメリスです」

 「よかった。何処から連れてこられたのですか?」

 「……大森林です」

 「やっぱり……此れから言うことをみんなに通訳して下さい。此れから順番に傷を治して服を着せますので僕を信用してくださいと」

 メリスは、獣人族の子供達にソティアスの言葉を通訳すると……全員頷いたのを確認してから”治癒ヒール”を唱えて服を着せた。全員、少し安心したような顔をして何やら話をしているが全く言葉が分からない。

 「メリス……少し話をしようか?」

 「……はい」

 「みんなは、大森林に帰ったら……家族はいるのですか」

 メリスは、左右に首を振った。

 「どういう事が聞いてもいいですか」

 「……はい……私たちみんな、同じ集落にいました……半年前にあの人たちが来て集落を襲いました。私たちの集落、戦える人いません。殺された人いっぱい。他の場所に連れていかれた人もいます。私たちなにもしていないのに……なぜ、こんなひどいことするの? ううううううわああああああああん」

 ソティアスは泣きだしたメリスを抱き寄せて胸を貸した。そんな後ろで先程捕らえた盗賊団のリーダーは、怒鳴り声で、言葉を発した。

 「獣が泣くなうるせーぞー」

 メリスは、その怒鳴り声で泣き止みソティアスの胸でビクビク怯えていた。その姿を見たソティアスは、盗賊団のリーダーに”風切ウィンドカッター”を放った……すると両腕が切り落とされていた。

 「メリス……泣かないでいいよ……もう大丈夫だから」

 「……うん」

 その光景をみていた犬人族の子供達は、驚いていた。人族が自分達獣人族に優しくしている姿が信じられなかった。

 「もう大丈夫?」

 「はい……服汚してごめんなさい」

 「気にしないでいいよ!」

 頭を撫でると嬉しそうに尻尾を振って喜んでいる。そこにミールとエストが寄ってきた。

 「どうしたの? ソティ君」

 「……この子達……帰る場所がないみたいです。集落ごと襲われたそうです」

 「え!? これからどうするの?」

 「わかりませんが、とりあえず王都に連れていきます」

 「うん、そうね」

 「そうだね……あの盗賊の怪我治してあげたら?」

 

 ソティアスは、返事をしないで盗賊団のリーダーに歩きより”治癒ヒール”を唱えて傷口を塞いた。

 犬人族の皆を呼び寄せ船に乗せようとしたら子供達がざわざわしていたのでミールは聞いてみた。

 「獣人族と同じ船に乗るのやだ」

 「とうして?」

 「獣人族は、汚いし人間じゃない、身分が違う」

 それを聞いたメリスは、俯いてしまった。ソティアスは、子供達に言葉をかける。

 「みんな身分って言うけど……今回もし僕が助けなかったらどうなっていたが分かる?」

 「……?」

 「分からない? 最下層の身分……奴隷になっていたんだよ?」

 「え!?」

 「知らなかったのかい? 身分なんでものはすぐ入れ替わるんだよ? もし将来、奴隷になったとして大勢の人に馬鹿にされたりしたらどうする? それに人族が上とか獣人族が下と言う身分は無いんだよ? 大昔からの人種差別があるだけなんだよ! もし戦争が起きて獣人族に負けたら奴隷にされる可能性があるんだよ!」

 「そんなのやだ!」

 「うん、やだ!」

 「ごめんなさい」

 「「「「「ごめんなさい」」」」」

 「うん、分かってくれたらいいよ。皆も乗せていいかい?」

 「「「「「はい」」」」」

 「ありがとう」

 「さあ、みんな乗って」

 「ありがとうございます」

 「「「「「さっきは、ごめんなさい」」」」」

 「うん」

 「さあ、出発しよう」

 ソティアスは、この場をミールとエストの2人にまかせて先頭までいくと、少し喋るようになった盗賊の1人に聞いてみた。

 「獣人族ってそんなに身分低いんですか?」

 「うーん、俺は身分なんで関係ないが王都から東に生まれた者は、獣人族は人間じゃない、獣と一緒だと思っているみたいだな。あの子供達の怪我は、おそらく全員に殴られていたのだろうさ……ストレス発散とかでな。商品を殴るとは信じられないぜ」

 「いい事言っているのでしょうか……盗賊が言うとありがたみないですね」

 「まあな」

 2人で爆笑していたのを見ていたその場の全員が呆気にとられている。

 2時間ほどで、王都イプハールの西門に到着した。

 盗賊が門に近づくと並んでいた人たちが恐ろしさのあまり左右に割れた。その光景を見ていた警備隊の3人がこっちに走ってきた。ソティアスが対応した。

 「何の騒ぎだ! なぜ堂々と盗賊が歩いて来るんだ」

 「こんにちは、警備隊の方でよろしいですか?」

 「ああ、そうだか、お前は?」

 「はい、僕は、ソティアス・フォルティスと言います。冒険者です」

 「ソティアス・フォルティス? フォルティス? ……もしかしてリキド・フォルティス大将軍の知り合いか?」

 「はい、リキド・フォルティスは、父です」

 「……大将軍の息子さんがどうして盗賊と一緒にいるのですか?」

 「はい、イサーラ村から王都に来るまでの道中に盗賊に襲われましたので返り討ちにしていたらこの人数になりました。あと、誘拐されていた子供達を連れてきました」

 「返り討ち!? 誘拐されていた子供?」

 「おい、フォルティス大将軍に息子さんが来ているとお知らせして来い。あと冒険者ギルトに連絡して職員を派遣してもらえ」

 「「はっ」」

 2人が走っていくのを確認してからソティアスに向き合った。

 「詰所の方でお待ちください」

 「わかりました。子供と盗賊は?」

 「とりあえず御一緒に中へ」

 「わかりました。皆さん中に入りますよ」

 20分程で冒険者ギルトの職員が来た。最初にソティアス、ミール、エスト三人の”身分記録レコードカード”と”成長記録グロウスカード”を確認し盗賊と子供達のを確認をした。

 「冒険者ギルトで討伐依頼をしていたのは、17人……計2、010、000マルテ

  子供達の救出依頼が、15人……計3,500,000マルテ

  合計5,510,000マルテになります。 

 マルテの受け渡し、ランクアップ手続きは、準備をしておきますので、翌朝以降にお願いします。

 冒険者ギルトの職員は、戻っていった。入れ違いでリキドが来た。

 「ソティ、ミール、エストよく来たな。盗賊を討伐しながら来たって? やるなぁ流石は、俺の子供達だ。それで、盗賊達は?」

 「ハッ、此方です」

 「うむ……!? これ全部か?」

 「はっ! 全部です」

 「ソティ……」

 「はい、なんでしょう父様」

 「……多くないかい?」

 「そうでしょうか?」

 「大将軍、討伐されてきたのは確かですので、懸賞金と盗賊達の持っている品物の全ての譲渡をおこないたいと思います」

 「ああ、そうだな」

 「懸賞金額は、以下になります。

 盗賊ランク Fランク    10、000×28人=   280,000 

 盗賊ランク Eランク   100,000×14人= 1,400,000

 盗賊ランク Dランク   500,000×12人= 6,000,000

 盗賊ランク Cランク  1,000,000×4人= 4,000,000

 盗賊ランク Bランク  3,000,000×1人= 3,000,000

 合計金額14、680、000マルテになります

 

 普通の武器・防具は此方で買い取らせて頂きます。合計88,500マルテで買い取らせて頂きます。

 特別な武器・防具・装飾品はお持ち帰り下さい。

 アジトの1つを潰してくれた報酬が1,000,000マルテ

 誘拐された子供の救出の報酬が1,000,000マルテ

 全ての合計で”16、768、500”マルテになります。

 お金はソティアス様に一括の支払いとなります。

 この度は、お疲れ様でした」

 「有り難うございました」


 「ソティ……それにしてもどうしてこんなに盗賊を?」

 「……イサーラ村の裏切者を探していましたら襲ってきたので返り討ちにしてきました」

 「やっぱりか……最近あの3人の情報は一切入って来ないぞ!」

 「はい、何となくわかります。この中に知っている者もいるみたいですけど絶対に口を割りませんでした。かなり上の立場みたいですね」

 「わかった。情報提供感謝する」

 「はい……子供達はどうなりますか?」

 「親に知らせに走っていますので、もうじき迎えに来ると思います」

 「獣人族はどうなりますか?」

 「さあ、我々は、存じ上げません」

 「なぜ?」

 「獣の面倒は我々の仕事ではありませんので」

 「では、担当の方は?」

 「……奴隷商人かと」

 「な!? 父様」

 「すまん……王都の兵士は人族しか面倒を見ない決まりなのだ」 

 それを聞いたミールとエストもリキドに迫る。

 「父さんは、それでいいのですか?」

 「規則だ」

 「お父さん」

 「姉様、エスト、父様の立場では仕方がないでしょう」

 「すまん、わかってくれ」

 「……一つ聞いてもよろしいですか?」

 「なんだ」

 「今現在、この子達の権利は誰の者ですか?」

 「現在は、助けたソティアス様の持ち物となっていますので。奴隷商人に売るなり自由にして下さって結構です」

 「…………では、僕が引き受けます。よろしいですか?」

 「ご自由にどうぞ……しかし、獣人族を5等級地区(一般市民)以下居住区から出さないで下さい。この辺りはは3等級地区になりますので歩けませんのでここから出て北門から入りなおして下さい。今回のせめてのお礼として、北門からの出入りの自由の許可証と10日間5等級地区教会に泊まれる許可証をお渡しします」

 「よろしいのですか?」

 「ええ……盗賊退治を続けるのでしょう?」

 「はい、そのつもりです」

 「ならば、先行投資と受け取って下さい」

 「……ありがとうございます」

 「遅くなりました。今日は、もう教会に行った方がいいでしょう」

 「はい、失礼します。父様……失礼します」」

 「ああ、気をつけていきなさい」

 「はい」


 3人と獣人族の20人は一度西門から出て、北門に向かう事にした。

 「ミール姉様、エスト……勝手に決めてごめん」

 「「気にしないで」」

 「気持ちはソティ君と一緒だから」

 「うん、そうよ」

 「ありがとうございます」

 「メリス……皆に通訳をここから少し歩き北門から王都に入りなおし教会に行くと」

 「はい」

 メリスが通訳すると暗くなっていた顔が少し明るくなって全員、頷いた。

 

 暫く壁沿いに歩くと北門に到着した。北門の警備兵に先程の許可証をみせると疑いもせずに全員通してくれて尚且つ教会まで案内をしてくれた。

 「教会まで案内ありがとうございました」

 「気にしないで頂きたい。盗賊退治に協力して頂ける方ですから出来る限りの協力をさせて頂きますが残念ながら獣人族の方は……」

 「わかってます」

 「5等級地区以下は、一応身分差別は低い方と思います。現在獣人族の方はソティアス様の持ち物となっておりますので誘拐は無いと思いますがお気をつけ下さい」

 「はい、気をつけます。ご助言ありがとうございます」

 「いえ……これにて失礼いたします……一つ忘れておりました」

 「なんでしょう?」

 「1~4等級地区の兵士にはお気をつけください。身分の高い方々ですので、プライドが高いので……」

 「わかりました。ありがとうございます」

 「失礼いたします」

 

 北門の警備兵は戻っていった。


 「皆もう少し待っててね」 

 ソティアスは、教会内に入りシスターに許可を頂き全員で中に入り食事までご馳走になり獣人族は、寝床につくとすぐに眠りに入ってしまった。

 3人は此れからの事を話し合っていた。

 「さて……此れからどうしましょう?」

 「私は、大森林に帰すべきだと思います」

 「ソティ君の考えは?」

 「僕の考えは、大森林に帰すにしても僕達が送ると往復で約1年、儀式に間に合わない可能性があります。誰がに任せるにしても大森林に行かないで奴隷商人に行く可能性があります……」

 「ソティ君は、どうしたいの?」

 「一生と言うわけじゃありませんが自分たちでなんとか出来るようになるまで一緒にいてあげたいと思います」

 「その為に必要な物は?」

 「お金と家ですね」

 「うん、そうね……その為にすることは?」

 「お金はあります。明日冒険者ギルトに行けばもう少し増えますので、まず、土地ですね」

 「土地? 家は?」

 「土地があれば 家は、僕が魔術で建てます」

 「出来るの?」

 「出来ます」

 「わかったわ、朝に冒険者ギルトで依頼金を受け取りに行き、商業ギルトに土地を買いに行くでいい?」

 「はい」

 「一応、明日の予定が決まった所で、寝ますか?」

 「「はい」」

 

 3人は、皆が寝ている部屋に戻ろうとした時、教会の扉が勢いよく開き1人の重傷患者が5人の冒険者と思われる若者に運ばれながら入って来た。

 「神父さまー、シスターいらっしゃいませんかー」

 「……どうされました?」

 「魔物に襲われて、体中を数か所刺されました。2ヵ所胸に深く刺さった部分があります。持ってる回復薬では効き目がありません”治癒ヒール”をお願いします」

 「この傷では、”治癒ヒール”でも効かないでしょう」

 「なら、”中級治癒ハイヒール”をお願いします」

 「残念ながら”中級治癒ハイヒール”を使える神父さまは、1等級地区の教会にしかいません。それに多額の寄付金が必要になります」

 「そんなぁー」

 「それじゃ見捨てろと?」

 「…………」


 「ソティの出番よ」

 「行ってくる」

 「「がんばって」」

 「はい」


 「すいません。ちょっといいですか?」

 「あ! 、何の用だガキ」

 「今、忙しいんだ向こういってろ」

 「邪魔だー」

 「皆さんこそ邪魔しないで下さい。その方を死なせたいのですか?」

 「貴様のようなガキに何が出来る?」

 「なにも出来ないのだから向こういってろクソガキ」

 「まあ、僕のようなクソガキに出来る事は”中級治癒ハイヒール”くらいですけどね……では、失礼いたします」

 「「「「「「!?」」」」」」

 「待ってくれ」

 「このクソガキに何の用ですか?」

 「……! クソガキと言ったことは謝る……だから頼む」

 「ソティアスさま、私からもお願いします」

 「シスターに頼まれると断れませんね」

 ソティアスは、横になっていた男に”中級治癒ハイヒール”を唱えると傷は完全に塞がった。

 「「「「「「………………」」」」」」

 「治りましたので、僕は、失礼します」

 「お、おい待ってくれ」

 「まだ、ガキなのでこの時間になると眠くなるのです。失礼します」

 「「「「「「……」」」」」

 「すみません。ソティアス様は、今日1日で、盗賊を70人近く捕らえたので疲れているのでしょう」

 「!? 盗賊を70人も? 本当なら凄いガキ……いや子供だ」

 「聞えたかな」

 「たぶん、一瞬止まったから」

 「「「「「……」」」」」

 「朝にでも来られたら機嫌も直っていると思いますよ」

 「分かりました。朝にまだ来ます」

 「お待ちしております」


 「ソティ,少し怒ってる?」

 「……少しね、1日に何度もガキ、クソガキと言われたら誰だって怒りますよ」

 「「まあまあ」」

 「……もう、寝ますよ。明日早いんですから」

 「「はーい」」


 3人は、20人の子供達が寝ている部屋に戻り眠りについた。 

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