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第11話 魔術授業

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 イサーラ村では、当たり前の光景になっている4才から10才までの子供達による村壁の外周を本気で走り競争が終わった後でミールに花掛けてきた10才クラスの子供達がいた。 


 「あとちょっとだったけど、勝てなかったなぁー」

 「ミールちゃん……どれだけ体力あるの? 汗一つかかないし」

 「流石に10才クラスですね。かなり危なかったです」

 「一度に何周くらい走れるの?」

 「やってみた事無いですけど、6~7周でしょうか」

 「それなら、走れば王都まで1日で行けるんじゃない」

 「王都ですか?」

 「あぁ、俺たち定期的に王都の冒険者ギルトで依頼を受けに行ってるんだけど、一緒に行かないかい?」

 「私ですか? 一緒に行ってもお役に立てないと思いますけど」

 「ミールちゃん、剣術Eランクだよね? なら王都までの魔物・魔獣は余裕で倒せるし、依頼も簡単なものだよ」

 「本当ですか?」

 「本当だよ。倉庫内の清掃とか、迷い猫探しとかの簡単なものだよ。王都はイサーラ村の6倍近くあるから似たような依頼が多いから順調にいけば、1日で2~3件は達成できるよ」

 「私、弟と妹が5才になってから行こうと思っていまして……」

 「うん、それもいいと思うけど、1度経験しておくのもいいと思うよ? 三人共素人より一人でも経験者がいた方が依頼も達成しやすいと思うけど」

 「……本当に私でいいんですか?」

 「構わないよ」

 「お母さんに聞いてみてもいいですか? いつから行くんですか? 何人で行くんですか?」

 「うん、まだ6才だしね、イルマ先生の許可は必要だね。往復の日数を入れて6日程の予定だよ。人数は、今の所、男3人女2人の5人だよ。パーティーは、1チーム6人までだから」

 「許可が下りるが分かりませんけど、持ち物は何を持っていけばいいですか?」

 「絶対必要なのは、武器だね、後は、回復薬1~2個、保存の効く食べ物、水を多めに、外は村より暑いからフードとお金を、500マルテ位かな。 後は自分が必要と思う物を用意して持ってきて」

 「500マルテで、足りるのですか?」

 「充分だよ。泊まる宿は、1日100マルテ、食事は1日50マルテ、足りない分は、依頼の達成金で賄うから大丈夫。達成金は平等に分ける。分けきれない分は、皆で相談して、その依頼で活躍した人の分と決めている。もちろん泊まる部屋は、男女別々だよ」

 「ミールちゃん、心配しないで、男達からは、私達が守るから」

 「「「えっ!?」」」

 「俺達、信用ない?」

 「冗談よ、冗談フフフ」

 「じゃあ、ミールちゃんイルマ先生に相談してみてね」

 「はい」

 「では、朝のお掃除に入りますか」

 「はい」

 

 村の清掃が終わり子供達が各々家路に着いた。

 三人は、家に戻り朝食を食べ終わるとミールは、ソティアスとエストを先に学校へ行かせると自分は、先程の話を母イルマに相談するとあっさりと許可が下りた。

 「お母さん、本当に行ってもいいんですか?」

 「いいわよ、依頼は、FとEランクだけでしょ? なら危険もないしね……でも、気をつけなければいけない事があるわ」

 「気をつける事?」

 「そう、ミールが思っているほど今の王都は治安は良くないの。街の狭い裏道、特にスラム街は危険よ!」

 「どのようか危険ですか?」

 「殺し屋・盗賊・人攫い等の犯罪者達……殺し屋は人を殺すのを楽しむだけの人、盗賊はお金と品物を盗む、盗む為には人を殺す事も厭わないが子供は裏奴隷商人へ売る。人攫いは、殺しも盗みもしないが裏奴隷商人へ売る人。違法とは言え一度でも裏奴隷商人へ売られて身分が奴隷に落とされると例外を除いて一生奴隷として生きなければならないから気を付けるのよ!」

 「表と裏の違いは? 例外ってなに?」

 「表とは、売られる本人と売る人両方が納得して奴隷商人に売られたのが表奴隷、裏とは、売られる本人が納得していないのに奴隷商人に売られた場合が裏奴隷、奴隷制度は禁止されている訳ではないので、表も裏も奴隷商人は罰せられる事は無いのよ! 裏の奴隷商人に売った人は王侯貴族でも罰せられるの。 表奴隷は、2年奴隷として働いて主人が放棄すれば奴隷の身分から一般に戻ることが出来るが放棄する主人はいない。奴隷は全員首輪をされていて主人の命令を破ると首が飛ぶ様になっているので、2年が来る前に一度売ってまた買い戻す主人もいて、そうするとまだ2年働かないと駄目になるの! 裏奴隷は何年働いても奴隷の身分から外れる事は無いけど売買した奴隷商人が裏と認めた場合のみ奴隷から一般の身分に戻る事が出来る。その国の奴隷商人に売られた奴隷は国王が認めた場合のみ一般の身分に出来るが他国の奴隷商人に売られた場合は一般の身分にすることはできないから表と裏の奴隷商人に売られた場合、助け出すのは不可能に近いので十分に気を付けるのよ!」

 「……はい」

 「今の話で迷ったのなら少し考えなさい……遅れるから学校へ行きなさい」

 「はい、行ってきます」


 ミールはイルマから王都の怖い話を聞いてしまったが心の中では、行く決心はできていた。

 ミールが学校に行くのを確認し自分も学校へ向かった。


 教室にイルマが入ると生徒全員が元気よく挨拶をした。

 「「「「「先生ーおはようございまーす」」」」」

 「おはようございます。今日は、午前中は、大陸の歴史と魔術の知識、午後からは、魔術の実技をします」


 「世界の歴史

 世界の起源は、今から1000万年前に2柱の上位神と50柱の下位神(補佐)により作られた。上位神の1柱は、8つの大陸を作り、もう1柱は、生命を作った。補佐役の50柱は、草木を作り、海・川を作り、生命が住みやすい環境作りをした。50柱は、自分達がやるべき事がなくなると上位神の2柱に後を頼むとそれぞれの道に分かれた。それぞれの下位神は各大陸の地神に海の神、川の神、山の神、森の神等、残りの神は、人の中に入り見守る事になった。

 世代を重ねると神としての意識が失っていき戦争を始めるようになった。最古の戦争は、100万年、人族対人族、獣人族対獣人族、人族対獣人族、世界のあらゆる所で戦争ばかり起こるようになった。

 戦争・戦争・戦争……終わったと思ったら又戦争、いつまで経っても戦争が終わらない事に生命を作った女神は心を痛めた。痛めて痛めて……そして、心に闇が生まれて邪神となり戦争ばかり起こすなら無に帰そうと思い始めた。

 魔族に自分の加護を与えて命令を忠実に実行する者を増やしていった。最後の戦争は、二千年前に神聖帝国を中心にした人族が世界を統一してやっと終わり最後まで抵抗した邪神の加護を受けた魔族がザラーム大陸に追いやられた。

 8大陸を1大陸に神聖帝国による統一国家にしようとしたが世界が広大なため無理と判断し断念した。

 その代りにバラバラだったお金・距離・大きさ・重さの単位を統一し言語は、人族の言葉を標準言語にしたが各種族の言葉を使うことを許した。

 各大陸は、神聖帝国の親族親戚又は地域の出身の者に治めさせたが暫くすると各地で一斉に王国が興った為に神聖帝国は手を出す事が出来なく見守る事しか出来なかった。

 現在は、身分制度、人種差別等はあるか外交努力で一応の平和が訪れています。

 歴史は歴史なので全てか史実とは限りませんので頭の片隅に覚えておくだけで結構ですが国や宗教によってはこの歴史を絶対視している所もあるので馬鹿にする事だけはしない様にしてください」


 「魔術の種類

 下位4属性魔術・中位4属性魔術・上位4属性魔術の3種類あります。一つ一つ説明していきます」

 ・下位4属性魔術には、4属性の土>水>火>風があります。魔力のある人……つまりこの世界にいる者なら修行をすれば、最低1属性を唱える事が出来る為に下位に位置づけされています。人間族とは別の方法で魔獣魔物でも唱える事が出来ます。

 下位4属性魔術には、組み合わせによる得手不得手がありますが絶対ではありません。

 ・土は、水に強く風に弱い

 ・水は、火に強く土に弱い

 ・火は、風に強く水に弱い

 ・風は、土に強く火に弱い

 得手不得手はこうなっているが、圧倒的な魔力差には当てはまらない」


 「中位4属性魔術には、契=創=造=加の4属性がある。

 ・契=契約魔術とは、魔物・魔獣と契約し仲魔にするための魔術

 ・創=創作魔術とは、下位4属性魔術を2つ以上組み合わせて新しい魔術を作成する魔術

 ・造=創造魔術とは、装備品のすべての作成、建物の作成、その他色々の者を作成魔術

 ・加=加工魔術とは、装備品に魔石を加工、魔晶石に命令術式を組み込む魔術

 中位4属性魔術は、専門職的な魔術です」

 

 「上位4属性魔術には、聖=天=地=空の4属性がある。

 ・聖=聖魔術とは、治癒魔術、状態異常の回復、上位になると瀕死(少しでも息があれば)からの回復、時間内(24時間以内)の失った体の一部の回復。さらに最上位になると時間に関係なく失った体の一部を回復できる。死んだ人間が生き返る事は絶対にない。

 ・天=天魔術とは、天候を操る魔術

 ・地=地魔術とは、地上のあらゆるものを操る魔術

 ・空=空魔術とは、魔法陣を使っての転移魔術

 上位4属性魔術を完全に使いこなせる者がいないので、使える魔術を教える事が出来ませんし州と行く方法も教えられません」


 「少し早いですが午前中は、此処までにします。午後からは、実技に入りますが自分の習いたい下位4属性魔術を考えておいてください。分からない場合は、先生の得意な水魔術から教えます。下級魔術が使える人は、自分の得意な属性魔術を鍛えるのもよし、全く別なものでもいいので考えておいて下さい。

 「「「「「はーい」」」」」

 「では、解散」

 「「「「「ありがとうございました」」」」」


 「ソティ君とエストちゃんは、何を習うのですか?」

 「僕は、聖魔術です」

 「!? 聖魔術って使える人少ないんでしょ? それにイサーラ村で使える人はいないと聞いたよ! 習得は難しいんじゃない?」

 「難しいと思いますけど、冒険者になるなら使えた方が安心して冒険できると思いますので」

 「先の事考えているのね」

 「私は、火魔術かな」

 「火魔術が得意だから?」

 「いいえ……不得意だから」

 「不得意だから習うなんで凄いね!」

 「皆は、どうするの?」

 「「「「「どうしていいか分からない」」」」」

 「分からないならとりあえず、4属性全部やってみたらいいよ」

 「全部!?」

 「うん、自分の得意な属性は、結構簡単に覚える事ができるし、不得意な属性は、なかなか覚える事が出来ないから1つの基準になるよ?」

 「うん、とりあえず4属性全部やってみるね。ありがとう」

 「いいえ、がんばろうね」

 「うん」

 「じゃあ、昼食にしましょうか」

 「うん、そんだね」

 「今日も家に戻るの?」

 「いいえ、今日は弁当を作ってきました」

 「……1 一緒に食べていい?」

 「もちろんです」


 昼食を皆で仲良く色々な事を話しながら楽しく食べて、暫くすると昼休みが終わり各々の習いたい魔術の教室に移動した。エストは、火魔術の教室にソティアスは、聖魔術を習うために村の教会に移動した。教会に着くとシスターが外で待っていた。

 「あなたが、聖魔術を習いたいソティアス・フォルティスさんですね? ようこそいらっしゃいました」

 「よろしくお願いします」

 「では、中へどうぞ。簡単に説明させて頂きます」

 「はい」

 

 「どうぞ此方にお座り下さい」

 「有り難うございます」

 「説明させて頂きますがあまり期待しないで頂きたいです」

 「!?」

 「習得方法の詳しい方法は現在紛失していまして、はっきりした方法は分かっていません。この村で使える人がいないので、此方では可能性のある方法をお教えしているだけなのです」

 「はい、大丈夫です。習ってみたいだけですので」

 「分かりました。神像の前での瞑想、西の森の池のさらに奥に滝があります。その滝に打たれての瞑想、教会へのご奉仕くらいしかわかっておりません」

 「とりあえず、神像の前で瞑想してみます」

 「ご案内いたしますので、此方へどうぞ」

 「はい、よろしくお願いします。他の方は来ているのですか?」

 「……いいえ、あまりにも習得出来ないので誰もこなくなりました。習得出来るか出来ないが分からないので時間の無駄だと思っているみたいですね。ソティアスさんが久しぶりの生徒さんです」

 「そうなんですか」

 「着きました。此方で、楽な姿勢で両手の掌を合わせて目を瞑って、瞑想してみて下さい。その間私は、お庭のお掃除をしてきます」

 「はい、分かりました」

 ソティアスは、言われたようにやってみた。


 瞑想を始めてかなりの時間がたっだとき、ソティアスは、頭の中に聞き取れない声音で聞えたような気がして目を開けるとシスターの声が教会中に響いた。

 「誰がー誰が来てください」

 その声に他のシスターと神父が走って行ったのでソティアスも気になったので声のした方へむかってみた。

 行ってみるとその場の全員が固まっていた。声を発したシスターの腕の中には1才の女の子が胸にナイフが刺さったままの姿で抱かれていた。

 「神父様、回復薬をお願いいたします」

 「……現在、教会には1枚もありません。誰が買いに行って来て下さい」

 「分かりました」

 教会の護衛の人が薬屋まで走っていくが、皆、心の中では分かっているようだ……間に合わないと。

 「この子を寝台に寝かせましょう」

 「そうですね」

 女の子を寝台に寝かせるとその場の全員が諦めているように見えたが、1人だけ諦めていない男の子がいた。

 ソティアスは、女の子の傍に来ると……いきなりナイフを抜き取り、自分の右の掌をナイフの刺さっていた場所に置くと周りから怒鳴り声やら悲鳴等が聞えてくるがソティアスは気にしないで頭に浮かんだ魔術を唱える。

 「きゃ――――――」

 「ソティアスさんいったい何を」

 「ナイフを抜くなんで」

 「なんでことをするんだー」


 「”治癒ヒール”」


 するとまぶしい光が発して女の子の胸の傷に収束されると傷が塞がっていった。

 その光景にその場の全員が驚きの顔をし驚きの声を発した。


 「なぁ……治癒魔術!?」

 「え!?」

 「ま、まさか! 治癒魔術が使えるなんで……」

 「イサーラ村で久しぶりに治癒魔術を使える者が現れた」

 「うおぉぉぉぉぉーー「」

 「わぁぁぁぁぁぁl--」

 

 暫くすると女の子が目を覚ましたのを確認した両親は、泣きながら喜んだ。喜びのあまりお礼を言うのを忘れて帰って言った。

 「「「「「…………」」」」」

 「神父様、お礼を言わないで帰られましたね?」

 「ま、まあ喜びのあまり忘れたのでしょう。それにお礼を言われるのは我々ではありませんよ……彼です。」

 「そうですね」

 「それにしても、治癒魔術が使えるなんで凄いですね」

 「先程使えるようになりました」

 「先程!?」

 「はい、先程、瞑想している時に」

 「先程?」

 「「はい、治癒魔術を唱えられるようになったので、今日は帰りますね。ありがとうございました」

 「……いいえ、此方こそ有難う御座いました」  


 ソティアスが教会を後にすると回復薬を買いに行っていた護衛の人が戻って来る所だった。ソティが学校の教室に戻るとまだ誰もいなかったので、水魔術教室を覗きに行くと皆、一生懸命に練習をしていた。教室に入るとイルマがソティアスに気がつき声を掛けてきた。

 「ソティ、聖魔術の方はどう? 覚えるのは無理だったでしょ?」

 「”治癒ヒール”を覚えました」

 「!? え! 本当に覚えられたの?」

 「はい」

 「ソティ君、凄い」

 「ソティ見せてもらえる?」

 「いいですよ」

 ソティは、教室内の見渡し、一人の女の子の腕に怪我があるのを見つけて、掌を怪我に置いて唱えた。

 「”治癒ヒール”」

 光が収束されて怪我を塞ぐとイルマがソティアスに抱きついた。

 「ソティ君、本当に凄いわ、聖魔術を使えるなんて」

 「か、母様くるしいです……皆、見てますよ」

 「……!? あっ! 皆、ごめんね。驚いてしまって」

 「いいえ、驚くのは当然です」

 「ありがとう、それで、どうやって習得したの?」

 「神像の前で、2時間ほど瞑想しました」

 「それだけ?」

 「はい」

 「…………」 

 「どうかしましたか?」

 「瞑想なら今までにも何人もしてきたけど誰も習得できなかったのに……他にも必要な事があるのかしらね?」

 「必要な事?」

 「うん、例えば、魔力の質・量とか無詠唱又は詠唱短縮できるとかね……分からないけどね」

 「よく分からないですけど」

 「時間みたいね、今日は此処までにしましょうか」

 「「「「「はーい」」」」」


 「あのーソティ君、魔術の練習に付き合ってくれませんか?」

 「僕!? 付き合うのはいいけど教える事は出来ないですよ?」

 「なんで?」

 「僕は魔術を無詠唱で唱えているから詠唱付きは教える事が出来ません。エストも一緒でいいのならエストに教えてもらえると思いますけど……エストはいい?」

 「私はいいけど……私でいいの? ミナちゃん」

 「エストちゃん、ぜひ一緒にお願いします」

 「うん、なら此れから行くけど大丈夫?」

 「大丈夫だけど……何処でやるの?」

 「森の池の所よ」

 「森の池? 魔獣出るんじゃない?」

 「出るけど、あの辺りの魔獣は弱いし……魔石を落とすからお小遣い稼ぎにもなるよ」

 「!? 魔獣退治してるの? いつから?」

 「少し前からだけど……毎日出るわけじゃないから大丈夫だよ」

 「ソティ君、本当?」

 「うん、本当だよ。池より奥に行けば少し増えるけど、池の手前は、2~3日に1匹位だよ」

 「……充分多いと思うけど……二人がいるならだいじょうぶかな? よろしくお願いします」

 「「此方こそお願いします」」

 「では、行きましょうか?

 「はい」

 

 3人は、学校から森に向かって歩きはじめエストとミナは。魔術の事や色々な話をしながら森の池まで歩いた。


 「ごめんね、ミナちゃん……ソティが鈍感だからミナちゃんの気持ちに気がづいていないみたいで」

 「!? ち、違う……わ、私は、別に……そんなことは……」

 「クスッ、本当に? 時間はいっぱいあるしがんばって」

 「……違うって言ってるのに」

 「はい、はい」 

 「……もう」

 「クスクス、今は、魔術がんばろっか」

 「うん」


 池に着くとミールが来ていて風魔術の練習をしていた。

 「ミール姉様、今日は風魔術の練習ですか?」

 「二人共来たのね! その子は?」

 「此方は、ミナちゃんです。魔術の練習をしたいって言うので連れて着ました。一緒でもいいですか?」

 「いいわよ。ミナちゃんね、よろしく」

 「はい、よろしくお願いします」

 「ミナちゃんは、何魔術が得意なの?」

 「はっきりとは分かりませんけど、今の所、火魔術だと思います」

 「火魔術か……この中で火ならエストかな? エスト教えてあげられる?」

 「私もあまり得意ではありませんけど、下級魔術ならなんとか」

 「エストちゃん、よろしくお願いします」

 「よろしく、でも、あまり期待しないでね。少し向こうで練習しよ」

 「うん」

 「ソティ君は、何魔術の練習するの?」

 「僕は、風魔術を」

 「私と一緒ね」

 「はい」

 

 「……エストちゃん、もしかして、ソティ君って……シスコン?」

 「……分かる? シスコンの弟とブラコンの姉」

 「見ていたら、分かるよね?」

 「うん、はっきりとね……ミナちゃん、ライバルは手強いけど、がんばって」

 「う……うん」


 一生懸命に魔術の練習をしている時にソティアスがミールに思っていた事を聞いてみた。

 「ミール姉様、風魔術を使ったら、空飛べないかな?」

 「……! 飛べないと思うわよ」

 「やって見てもいいですか?」

 「いいけど、 無理だと思うけどやるだけやって見たら? でも、そのままやるの?」

 「そうですね……あ! あの板を使いましょう」

 「ミール姉さん、ソティは何してるのですか?」

 「……風魔術で、空を飛ぶみたいよ」

 「「………………え!?」」

 「無理でしょ」

 「うんうん、無理だと思います」

 「やって見なければわからないです」

 

 ソティアスは、板を持って戻って来ると地面に置きその上に両足で乗ると「”ウィンド”」を唱えた。

 唱えると板が浮かび前に進もうとした時、板だけ勢いよく飛んでいき木にぶつかり砕け散った。ソティアスは頭から地面に落ち両手で頭を押さえ「”治癒ヒール”」を唱え痛みがひくとゆっくりと立ち上がり後ろを振り向くと三人共声を抑えて笑っていた。

 「ぶっ……くすくす」

 「ぷっ……わ、笑ったら悪いわよ」

 「ソ、ソティ君、クスッ……だ、大丈夫?」

 「大丈夫です。笑いたいなら笑って下さい」

 「「「ごめんなさい」」」

 「でも、惜しかったわね」

 「今の光は、何?」

 「あれは、聖魔術の”治癒ヒール”です」

 「聖魔術!? 唱えられるようになったの?」

 「はい」

 「流石ソティ君、凄いわね」

 「そうですか? ありがとうございます。話は変わりますけどミール姉様、王都に行かれるのですか?」

 「うん、お母さんの許可は下りたからね」

 「出発はいつですか?」

 「3日後から6日間」

 「……気をつけて行って来て下さい。いま、イサーラ村と王都の間にある山の近くに盗賊と山賊が出るようですから」

 「盗賊と山賊?」

 「はい、父様の手紙に書いてありました。アジトが見つからないので退治するのが難しいそうです。王都に来ることがあるなら気をつけよと」

 「ありがとう、気をつけるわね」

 「はい」

 「村の入口に戻りましょうか? 走る時間も近いから」

 「「「はい」」」


 3日後の早朝、ミールを含め男3人女3人の6人はイルマ、エスト、ソティアスと他の家族に見送られイストリア国王都イプハールに向かって旅に出た。


 半分が重傷を負い半分が帰って来ない旅になる事も知らずに…… 

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