第9話 初登校の早朝
イサーラ村の中央地区にあり村の中心部にある朝6時の鐘が鳴る少し前、村壁の外周を競争するがのような早いスピードで走っている3人の子供の姿があった。
3人の子供はイサーラ村の西門をスタート地点にしていた。1周し西門に戻ると4才から8才までの子供達が3人が戻って来るのを待っていたようで「おはよう!」と、挨拶を交わしながら走り抜けると待っていた子供達も後ろに続いて走り始めた。
先頭を走り村の子供達を引き連れて走るのは、ミール、エスト、ソティアスのフォルティス3姉弟で、こうやって走る様になってから約1ヶ月になる。最初は3人で走っていたが毎日1人、2人と増えていき今では、50人を超えるほどになっていた。
朝が早く狩りや畑仕事のある村人以外はまだ寝ている時間帯なので、息を吸ったり吐いたりする音以外は全く聞こえない。一緒に走る決まりの一つで、寝ている人になるべく迷惑にならない様に無言で走ることとある。
1周し西門に到着すると先頭を走っていたミールが右手を上に挙げるとそれを合図に全員で競争をはじめ本気で走り始めた。
何故競争になるのかと言うとそれは、7才・8才の子は、年下のミールに負けたくないから6才の子は、同い年の女の子に負けたくないから4才・5才の子は、エストとソティアスの年下に負けたくないからである。
そして、6,7,8才はミールに4,5才はエストトソティアスに勝てなかった場合は、村の朝早くに騒音という迷惑を掛けているのでお詫びとして東西南北地区の中央地区に通っている大通りを清掃する事になっていたのでさらに全員本気になって走っていた。
6才、7才、8才の子供は、エストとティアスには勝てるがミートには勝てない。
4才、5才の子供は、エストとソティアスには勝てない為に結局、全員で大通りの清掃する羽目になっているのが1ヶ月前からの決まりであり現在のイサーラ村の毎朝の慣例行事になっていた。
毎日朝夕に走っているのでイサーラ村の4才から8才までの体力は過去に例を見ないほどに向上していた。
競争に勝ったミール、エスト、ソティアスの3人も清掃に参加している。みんなで迷惑を掛けているので全員で清掃をと言うのがミールの言葉である。
現在、ミールは8才以下の子供達のリーダー的存在になっていた。
「ミール姉さん、やっぱり早いです」
「エストも早いわよ、3才で村三周も走れるなんて……私は、4才になってからよ!」
「私よりもソティの方が凄いわよ、三周もして二周まで息切らさないで走れるから」
「んー……男の子と女の子の差なのかな? ミールももう少し体力がつけば息切らさないで、走れるようになるわよ」
「はい」
「ソティ君ももう少しで、三周走っても息切らさないで走れるようになるんじゃない?」
「はい、でも、ミール姉さまは、汗一つかかないですよね?」
「三周くらいではね! ソティ君やエストに負けないように、かなり走ってきたからそんなに簡単には、抜かれないわよ」
「ミール姉さまには、まだ勝てる気がしませんけどエストには、負けないようにします」
「ソティ、私にも姉さまを付けなさい!」
「なんで?」
「なんでって、私の方が年上だからよ」
「……年上って言っても1ヶ月でしょ?」
「1ヶ月でも年上は年上だからよ」
「ソティ君、エストにも姉さまを付けてあげたら?」
「でも、今更って気がしますけど」
「確かにね、私に姉さまって呼ばない人が弟に姉さまって呼べって言ってもね」
「ミール姉さん、それはそれ、これはこれ、です」
「何処でそんな言葉を覚えたの?」
「くすくす」
「ならエスト、一周でも僕に勝てたら姉さまって呼ぶよ」
「本当!?」
{う、うん、そんなに姉さまって呼ばれたいの?」
「呼ばれたい!」
「躊躇ないね! なら、がんばって僕に勝ってね」
「絶対勝ってみせる」
「おーい、3人共早く掃除を終わらせようぜ!」
「「「ごめんなさい」」」
「まあまあ、いいんじゃない? いつもの事だし」
「あはははは」
「それにしても俺達8才クラスでも一人もミールに勝てなくなったなぁ」
「まぁ、情けないけどな、勝てるようにがんばろうぜ!」
「4才、5才クラスもせめて、エストとソティに勝てるようにがんばれ」
「「「「「はい」」」」」
「ミール、掃除もこれくらいでいいんじゃないか? 今日からエストとソティも学校だろ?」
「はい、そうです」
「みなさーん掃除はこれくらいにして、朝食を食べて学校の準備をしましょう。夜は、16時から来れる人だけ集まって下さい」
「よし、今度こそ負けないようにがんばろうぜーみんなー」
「「「「「おー」」」」」
こうしてみんな解散した。それを見ている村人達の目はとても温かい。
「「お母さん、ただいま。おはようございます」」
「母様、おはようございます」
「お帰り、ミール、エスト、ソティ……おはよう。今日も全員で大通りのお掃除してきたの? いつも勝っているのだから3人は、お掃除しないでいいんじゃない?」
「いいえ、皆で迷惑を掛けているから全員でするべきです。……此処まで人数が増えるとは思いませんでしたけど」
「ふふ……ミールの仁徳かしらね?」
「仁徳ですか? そんなんじゃないと思います。年下とか女の子に負けたくないからだと思います」
「そうなのかしら?」
「そうです」
「まあ、いいわ……それより迷惑とか思わないでいいのよ、村の人達も感謝しているのだから」
「「「感謝!?」」」
「ええ、あなた達のおかげで4才から8才までの子供の基礎体力が信じられないくらいに高く過去最高の平均値だと思うわよ。それと、子供達で一致団結しているしね」
「みんな、ミール姉さまとエスト目的だと思うけど」
「ソティ君、何を言っているの? ……そんな訳ないでしょ」
「ソティ、それを言うならあなたもでしょ?」
「!?」
「気が付いていないの? 他人の事は気が付くのに自分の事は分からないなんで鈍感なのかしら。どう見ても女の子は全員ソティ目的だと思うわよ?」
「うん、ソティ君がみると女の子達は顔を赤くしているものね」
「……全然知らないです」
「聞いた話によると、ソティ君を守る会があるみたいよ」
「何ですかそのソティ君を守る会って?」
「おかしな女から守るとか、話をしてもいいけどその場合は二人以上とか、勝手に告白はしないとか他にも色々な会の決まり事があるみたいよ!」
「お母さん、3才のソティ君に何ですかその決まり事は……あ! あるみたいよってお母さん知っていたの?」
「え! あー! まあ、お母さんがソティ君を守る会の発足人で現会長だから」
「「「!?」」」
「母様が発足人で会長? なぜ、そんな会を?」
「ソティ君が可愛いから……皆で守ろうと思ってね」
「母様、何を言っているのですか?」
「お母さん、会員は何人くらいいるのですか?」
「えーと……ミールとエストを抜かして、2才以上の村の女……全員かな」
「「「……………………」」」
「ミール姉さま、エスト……この村おかしくないですか?」
「そうだね……ソティ君が可愛いのは分かるけど、ちょっとやりすぎなのでは?」
「うん、おかしいと思う」
「解散は、出来ないのですか?」
「無理だと思うけど……ソティ君は反対?」
「…………分かりました。僕は聞かなかったことにします。ミール姉さまもエストも聞かなかったことでお願いします」
「「分かったわ」」
「ソティ君も認めてくれた所で、朝食にしましょう。学校に遅れるわよ」
「認めたつもりはないですけど」
和気藹々の中で朝食を食べ始めた4人
ソティアスは、怖いと思いミールとエストは私達のソティアスを取られないようにしようとお互い頷き合い
イルマは、ばれちゃったと思いなからの朝食になった。
食べ終わった3人は、家の玄関を出で隣にある学校の玄関に向かった。