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2/11

第02話:5月上旬、火曜日2

時系列的には1話の直後。


2011年12月26日に一部推敲、加筆修正をしました。

 昼休み。

 僕は放送部の一員として、放送室にいた。

 というか今着いた。

 室内では、既に二人の先輩が今日の放送の準備を始めている。

 一人は良い意味で高校生っぽくないグラマラスな外見と、セクハラエロオヤジな内面を持つ副部長、ヒロコさんこと桜ノサクラノミヤ広子。

 もう一人は小柄すぎて小学生にしか見えない三年生で放送部の部長、姉さんこと門真カドママドカ

 二人とも今は、ちょうど今日使う予定の資料を選出しているところだった。

「あれ、シズネは?」

 現れたのが僕一人だったのが不思議だったのか、着くと同時にヒロコさんが僕にそう訊ねてくる。

「もうすぐ来ると思いますよ。ちょっと寄り道していく、って言ってましたし」

 確かに教室を出た時は一緒だった。ただ途中で別行動になっただけだ。

「寄り道か……トイレだな。あの子昔からそう言うし」

「ヒロコ……それは察しても言わないであげてよ」

 ヒロコさんの余計な明言化に、姉さんが呆れ気味に突っ込む。

「いや、そう言っておけば、今度シズネがそう言ったときにカズマが想像するじゃん」

 するとヒロコさんは、愉しそうにそう言い放った。

「…………」

 ヒロコさんのセクハラ発言はいつものことなので、僕は反応せずスルーすることにした。

「カズマもそこで顔を赤くしない!」

 ……スルー出来ていなかった。

 というか姉さん、指摘しないで。スルーしたいんだから。

「あ、シズネちゃん。こんにちは」

 とか思っていると、今度は僕の背後に向かって挨拶した。

 振り返ると、そこには清楚で可憐なお嬢様という感じの少女、同じクラスのシズネがいた。

「こんにちは。あれ、カズマさん、顔が赤いですよ? 具合でも悪いんですか?」

「な、なんでもないよ!」

 僕の顔を見て不思議に思ったのか、シズネは訊ねてくる。

 言ってるそばからシズネが現れて動揺したのか、どう考えても怪しい返事をしてしまった。

「そうですか……キョウさんとメイさんはまだなんですか?」

 しかし相手はやっぱりシズネだった。

 僕の怪しすぎる対応を気にする様子も無く、すぐに自分に興味のある話題を持ち出している。

 たまにこの図太さというかマイペースさが羨ましくなるのは内緒だ。

「んー、何も訊いてないし、そろそろ来るんじゃない?」

 その問いに、姉さんがやや投げやりに答えた。

「んー、でもちょっと遅すぎない? キョウさんたち、何かあったんじゃ」

 気になったので訊ねた、その直後。

「呼んだか? カズマ」

「カズマ、邪魔。そこどいて!」

 それに答えるように、背後から二つの声が聴こえた。

 一つはだるそうだがどこか温かみのある、男らしい低い声。

 もう一つはハキハキしていて良く通る、女の子の声だ。

 振り返ると、ドアのすぐ前に見慣れてきた二人の先輩が立っていた。

 一方は守口モリグチキョウ。僕より一つ上、二年生の先輩だ。

 身長はぱっと見で180cmくらいと僕より高いのだが、体つきは中肉中背な体格の僕と同等くらいかそれ以上に細い。

 しかしお昼の放送中20分間、ずっとBGM担当としてギターを掻き鳴らしていることを考えると、痩せているのではなくて、余分な肉がつきにくい体質なのだろう。

 顔つきも細めで、美形といえるくらいに整っている。

 だが目が隠れるほどに長い前髪とどこか気だるそうな表情で、初見だと近寄りがたいくらいに怖い雰囲気がある。

 その物憂げな表情などで女生徒に人気らしいのだが、彼女がいるという話は聞いたことがない。

 そしてもう1人、は守口鳴メイ

 キョウさんの双子の妹らしく、顔つきもキョウさんを少し丸くしたような感じになっている。

 キョウさんに比べると少し幼い感じがするが、それがむしろ女の子としての可愛らしさを引き立てていて、可愛いとも綺麗ともいえる顔立ちになっていた。

 身長は姉さんより拳二つ分くらい高くて、髪は後ろをピンクのリボンで縛ってポニーテールにしてある。

 リボンは姉さんと違ってそれが標準なのか、今までに違うリボンをしているのを見たことがない。

 また体つきは森口家の遺伝なのか、キョウさん同様にかなり細い。

 スリーサイズはぶっちゃけ幼児体型な姉さんと互角だ。

 ……遠回しに表現したら、かえってわかりにくくなった気がする。

 というわけでストレートに言い直そう。

 かなりの貧乳だ。

 ぼん、きゅ、ぼん、って表現に倣って表すならきゅ、きゅ、きゅ、って感じ。

 顔つきもちょっと凛々しいところがあるので、ボーイッシュな格好をしたら性別を間違えられるかもしれな……

「カズマ。今何か、失礼なこと考えてない?」

「い、いえ! 何も!」

 そんなことを考えていると、メイさんに睨まれた。

 鋭い……。

「まあまあ。みんなそろったんだし、始めようよ」

 そんなメイさんの視線に気付いたのか、姉さんが全員に向けて言い放った。

 メイさんは渋々といった感じだが、それに従い、はい、と簡潔に返事をしてから持ち場に移動する。それに連なって、他のメンバーもわかりましただのはーいだのおうよ、だのと各々が返事をして持ち場に移動していた。

 僕と姉さんはマイクのある席。

 その少し後ろにBGM担当のキョウさんがアコースティックギターを構えて、その辺のイスを引っ張り出してきて座る。

 その隣に同じくイスを引っ張り出してきてメイさんが座り、ヒロコさんとシズネは少し離れたところで打ち合わせを始めた。

「よし、準備はできたね。始めるよ!」

 言いながら、姉さんはマイクの横にある「On Air」と書かれたボタンを押す。

 さあ、お昼の放送スタートだ。



「やっほーみんな、元気ー? 放送部の部長、マドカでーす!」

 姉さんがハイテンションに、マイクに向かって話しかける。

 それと同時に、キョウさんがなんだか楽しそうな、三拍子の曲を奏でていた。

 他の高校はどうなってるのか知らないが、僕らの『お昼の放送』はどこかラジオじみた雰囲気のものだ。

「部員のカズマです。今日は生徒会からの伝言はないので、早速最初のコーナーに入りたいと思います」

 そう言いながら、姉さんに目で合図する。

「おれの話を聞けぇ! 略して! オレハナのコーナー!」

 僕の合図を見た姉さんは、舌っ足らずでありながらもハイテンションな声でタイトルコールをした。

 でもその声で『おれ』って言うのはなんていうか微笑ましすぎると思う。

「イェーイ!」

 そんなことを考えながら、僕も乗る。

「はい、皆さんからの投稿を読み、それについて語ったり、突っ込んだり、そのまま終わったりするオレハナのコーナーです」

 そしてすかさず落ち着いた雰囲気を作り、『オレハナコーナー』の趣旨を解説した。

 放送部の部室前には手紙を入れる穴が開いた木箱、通称目安箱が設置されている。

 さらに僕らの放送は学園でも人気らしくて、毎回結構な数の手紙が来るのだ。

 だから今では、放送時のコンテンツは全てその手紙を使ったものになっていた。

 ちなみにコーナーは三つあり、兄弟姉妹ごとに一つを担当している。

 そして僕と姉さんの担当がこの『オレハナコーナー』なのだ。

「じゃあカズマ、最初のお便り読むね。ペンネーム『かつて佐藤と呼ばれた鈴木』さん……ペンネームから突っ込むべき?」

 なんというかアレなペンネームに、姉さんが意見を求めてきた。

「触れないでおいてあげようよ、きっと複雑な家庭事情があるんだよ」

 各コーナーの時間は5分。

 変に脱線すると時間が足りなくなるため、スルーさせるするつもりで僕は言う。

 しかし姉さんはそれに感心したらしく、どこか寂しそうに「そだね」と呟いてから再び手紙の朗読を再開した。

 ごめん姉さん、そこで本当に複雑な家庭事情を想像しないであげて。

「『放送部の皆さん、こんにちは。最近、家で飼ってるミーアキャットのタマが可愛くてしかたありません』 あは、にゃんこ自慢だ」

 冒頭を読み終えてから、姉さんが嬉しそうに感想を漏らした。

 ウチにもファングという名前のトラネコがいるので、ネコの話題は親近感が沸くらしい……ってちょっと待て。

「姉さん、ミーアキャットはネコじゃない」

「え? みーあ、って鳴くにゃんこじゃないの?」

 心底不思議そうに姉さんはそう言った。

 ちなみにこのバカ姉は本気でこの言葉を吐いている。

「違う! ミーアキャットはマングース科だよ!」

「カズマ、詳しいな」

 ギターを演奏しながら、感心したようにキョウさんが呟く。

「む」

 その直後に何故か、メイさんに睨まれた。なんで?

「まぁいいか。えっと」

 困惑する僕を放ったらかしにすることで強引に話を戻し、姉さんは続きを読み始めた。

 お便りの内容を要約すると、ゲームをしていたり、本を読んでいたりするとミーアキャットが遊んで欲しそうにじゃれてくる、というものだった。

「あー、これはわかる。可愛いよね」

 そして読み終えてすぐに、姉さんが嬉しそうに感想を漏らした。

 隣を見ると、とてもいい笑顔をしている。

 思い出してみれば、姉さんも家では同じような感じだった。

「ファングも、姉さんがリビングでごろごろしながらテレビ見てたらじゃれついてくるもんね。昨日も確か、うつ伏せに寝てる姉さんの背中に乗っていたっけ」

「ちょっとカズマ、余計なとこまで言わなくていいの!」

 僕の言い草にどこか恥ずかしい点があったのか、姉さんは一転して赤い顔でそう言った。

 あ、これは掘り下げると放送中に姉弟喧嘩をすることになりそうだ。

 というわけで。

「思ったより長かったし、今日のオレハナのコーナーはここまでかな」

「カーズーマー!」

 こういう時は、さらっと話を流すに限る。

「ほら姉さん、次のコーナー入るよ」

 そう言いながら、シズネとヒロコさんに目で合図すると、それにいち早く気付いたヒロコさんが姉さんを押しのけてマイクに向かった。

「よーし、じゃあ次は! ヒロコとシズネの! お悩み相談、略してナヤソーのコーナー!」

 そして手早く、自分たちが担当するコーナーのタイトルコールをする。

 それにあわせて、僕と姉さんはマイクから離れた位置にある、待機中のメンバー用の席へと向かった。

「く……カズマ、ヒロコ……覚えてなさいよ……」

 姉さんが何か言っていたが、今は気にしないことにした。

「匿名お悩み相談のコーナーは、文字通り匿名で寄せられたお悩みに、私たち桜ノ宮姉妹が答えるコーナーです」

 シズネの解説を、ヒロコさんが引き継ぐ。

「ちなみに略称がオナソーでなくてナヤソーなのは、オナソーだとなんかエロいたッ!?」

 昼食時に相応しくない発言をしようとしたヒロコさんに、姉さんが後ろから高速で水平チョップを叩き込んで黙らせる。

 ブンッ、と風を切る音がし、ヒロコさんの……早すぎてよく見えなかったが、多分後頭部を直撃したんだと思う。

「失礼しました。じゃあシズネちゃん、続きをお願いね」

 そして妙に良い笑顔でシズネにそう告げて、再び待機メンバー用の後ろの席へと下がった。

 ……どうやら、さっきの仕返しも兼ねていたようだ。

「あ、はい。えっと、では最初のお便りを」

 そしてシズネはシズネで特に気にすることも無く、淡々とコーナーを進めていた。

 なんだかんだでシズネは大物だと思う。

「あ、アタシが読むよ」

 と思ったら、あっさりヒロコさんは復活して横から手紙を奪い取り、読み始めた。

 タフだなあ……。

「えーっと、ペンネーム『恋する乙女』さん。おお、恋愛相談だ」

 その手の話題が好きなのか、ヒロコさんの声が弾んでいる。

「『放送部の皆さん、こんにちは』 こんにちは」

「こんにちは」

 ヒロコさんが挨拶を返すのに合わせて、シズネも挨拶をする。

「『最近、好きな人が出来ました』 いいねぇいいねぇ。青春だねぇ」

 ヒロコさん、なんていうか反応が女子高生じゃないです。

「『でも、その人には彼氏がいるみたいです。どうしたらいいのでしょうか』……か。うん」

 一度沈黙するヒロコさん。

 ちょっと考えているらしい。

「……ごめん、ちょっともう一回読む時間をください」

 普段は姉御肌で言動も男らしいヒロコさんが、急に丁寧な喋り方でそう言った。

 そして言うが早いか、黙って真剣な表情で手紙を読み直している。

 良く見ると、冷や汗をかいている。

 ……僕も今のうちにちょっと今の内容を整理しようと思う。

 えっと、投稿者が『恋する乙女』さん。ペンネームから察するに女性だろう。

 そして悩みは。

 好きな人が、彼氏がいるような人である、ということ。

 彼氏……好きな人に、彼氏が、か……。

「…………」

 誰かフォローできる人はいないか、と思いながら全員の顔を見回す。

 ヒロコさん本人は珍しく、難しそうな顔をしている。

 仕方ないよね。僕も正直、なんて答えればいいのかわからない。

 ヒロコさん同様にナヤソーコーナーの担当、シズネでもさすがにこれは困ってるに違いない……そう思って彼女に視線を移す。

 すると、なんとシズネはなぜヒロコさんがそうしているのかが分かっていないようで、きょとんとしていた。

 相変わらずの大物だが、フォローする気も無さそうだ。

 キョウさんのギターも、さっきから曲が安定しておらず、ころころと変わっていた。

 BGMの曲調を決めかねているようだ。

 メイさんはペットボトルの水を飲んでいる。

 姉さんはさっきの手紙で恋しくなったのか、携帯でファングの写真を見て微笑んでいた。

 って、メイさんと姉さんは聞いてすらいない!?

 なんていうか清々しいくらいに……ヒロコさんに助け舟を出せる人がいないことが確定した。

 仕方ない。ここはヒロコさんの底力に期待しよう。

「……えーっと」

 少しの沈黙の後、ヒロコさんが口を開く。

 どうするんだろう。

 ヒロコさんの判断は――

「好きなら奪い取っちゃえばいいと思うよ、うん。以上! シズネ、次!」

 強引に流した!

 僕も人のことを言えないけど、うちの部は『強引に流す』という手段を愛用する人が多すぎだと思う。

「はい、じゃあ次のお便りは……」

 そしてシズネもそれにあっさり応える。

 なんていうか、豪胆な姉妹だった。



「はい、じゃあ今日のナヤソーコーナーはここまで! みんなもなにか悩みがあったら、一人で悩まずアタシらに相談しろよ!」

 もう一つの手紙に答えてから、ヒロコさんはそう締めくくった。

 これで桜ノ宮姉妹担当のコーナーも終了だ。

 桜ノ宮姉妹は後ろの席へ移動し、守口兄妹ことキョウさんとメイさんの二人がマイクに近づく。

「キョウと」

「メイの!」

「「うろおぼ演奏!」」

 それから二人でタイトルコール。

 盛り上げる前提のため、キョウさんは適当にギターをかき鳴らしていた。

「というわけで、うろおぼ演奏のコーナーです。このコーナーは、皆さんのリクエストした曲を俺のギターとメイのボーカルで再現する、そんなコーナーです」

 まずキョウさんがコーナーの解説をする。

「本日は、ペンネーム『水木カナ大好き』さんのリクエスト、水木カナさんの『Hug and Love!』です」

 その後すぐ、メイさんが今日のリクエスト曲を発表した。

 水木カナは最近流行りの女性アイドルだ。

 また『Hug and Love!』は恋する少女のまっすぐな気持ちを歌った歌で、テンポが良くて歌詞も可愛らしく、聴いていて楽しい。

「いくぞ、メイ」

 ギターを構えたキョウさんが、メイさんに合図。

「ん。ワン、ツー」

 それを受け、リズムをあわせるためのカウントをメイさんが始めて。

「「ワン、ツー、スリー、ハッ!」」

 それに合わせてキョウさんの声が重なり、キョウさんのギターによる前奏から曲が始まる。

 そして水木カナの曲は全体的に前奏が短いので、すぐに歌が入る。

「今すぐ君を♪ 抱きしめたい♪」

 メイさんは年齢相応の無垢な可愛らしさと、女性らしい綺麗な高音を絶妙に合わせ持った、いい声をしている。

 姉さんも『可愛い声』をしてはいるのだが、どちらかといえば子ども特有の微笑ましさ、といった方がしっくりくるのだ。

「hug and Love! 飛び込むからね♪」

 また、『うろおぼ演奏』と言ってるわりには二人ともちゃんと練習してきているようで、かなり巧い。

 完璧に原曲を再現できているわけではないのだが、どちらかがミスをしたときにもう片方が巧く合わせて、まるでそういうアレンジだ、とでもいうようにごまかして、平然と続けているのだ。

 というか、僕自身も放送部に入ってしばらくはその『ごまかし』に気付いていなかった。

 最近になってから、原曲からアレンジされていると思った時のメイさんの照れ笑いや、キョウさんのちょっとすまなそうな表情を見て勘付き。

 さらに姉さんが『あ、またごまかしてる』と隣で茶化すように呟いたので確信できた、というのが正直なところだ。

「愛してあげるー!」

 メイさんが最後のフレーズを叫ぶ。

 そしてその興奮が冷めないままキョウさんがノリノリで後奏を弾き切って、演奏は終わった。

 やっぱりこの二人は巧い。

「「水木カナの、『Hug and Love!』でした! ありがとうございました!」」

 そして締めの挨拶を終始息ぴったりに決めて、今日のうろおぼ演奏のコーナーも終了である。

 そして担当コーナーが終わると、キョウさんはマイクから離れてBGM担当に戻り、メイさんはその隣に移動した。

「さーて、本日もそろそろ、お別れの時間がやってまいりました」

 そして部長として締めの挨拶をするべく、姉さんが再びマイクに向かった。

 キョウさんもそれに合わせて、落ち着いた雰囲気の曲を奏でている。

 ちなみに締めの挨拶は姉さんのみの担当なので、僕は下がったままである。

「担当はいつもどおり放送部全員、門真円、一馬、桜ノ宮広子、静音、守口響、鳴の六人でお送りしました」

 こうやって真剣に締めの挨拶をしている姉さんを見ると、改めて姉さんが部長であることを再確認させられる。

 普段は子どもっぽくてわがままで、バカな言動も多いけど。

 それでもやっぱり、僕の姉で、先輩なんだなって思う。

 だから僕は、姉さんが真面目に締めの挨拶をするこの瞬間がどこか好きだった。

「というわきゃで」

 ……感心してるときに噛まないでよ。

「こほん……というわけで。今日の放送はここまで! 次の放送をお楽しみに! ありがとうございました!」

 そして噛んだことをごまかそうとしているのか、少し早口で締めくくる。

 やっぱ駄目だ、この姉。

 ……まあ、とりあえず。

 本日の放送も、なんとか無事に終わったのであった。



――続く。

2話は以上になります。

楽しんでいただけたでしょうか?

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