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チーターの仕事  作者: 飛守 ツヨシ
第一章
7/9

エイプリルフールはまだ先だ

契約書【重要】

『必ず以下の内容を確認し、ご承諾したうえで金属(メタル)電脳(サイバー)制御(コントロール)装置(デバイス)(以下、MSCという)を装着すること』


 貴方は以下の条件を承諾し、別冊の規定書を厳守するという場合のみに限り「チートが使用できる者の仕事」(以下“チーターの仕事”)ができる。

 ここで言うチーターとは、MSCによりチートを使用できる特殊な人物であり、かつ民間運輸関連会社(以下“PTC”)の社員となっている人物の事をいう。

 また、チーター以外のチートを使用する者のことを“ガム”という。

 大半のガムは悪意のあるチートを使用するため、これに接近する際は十分注意せよ。ゆえに、我々は任務の一つにガムの攻撃の回避、あるいは戦闘がある。


 チーターの条件の三原則

一.如何なる場合をもってしても、人の命を蘇らせてはいけない。ただし、回復のチートデータの使用はこれにあたらない。

二.如何なる場合をもってしても、財産、もしくは資産を増幅させてはいけない。

三.禁忌のチートデータ、およびそれらに値する改造省の許可されていないチートデータの使用はチート条約第八条に違反し、また、他の憲法や国際条約にも違反するためにしてはいけない。


 これらに違反した場合はそれなりの罰が待っているということをココロするように。


 補足

 この他にも特殊条件A項、および同じくB項の内容も把握しておくこと。

 別冊規定書、及びMSCの使用方法、用途、初期入力チートナンバーのエフェクト、簡略名などは初任務までに全て暗記すること。

 また、PTCの表向きは民間の運輸業に関する仕事を受け持つ会社なので、そちらの仕事もしなければならない。もちろんのことだが、それらの仕事を引き受けている際はチートの使用を固く禁じられている。

 報酬は専属の上司より、依頼相応の報酬を受け取る。また、報酬内容の多くは新たなチートナンバーとなる。

 主なチーターの仕事は悲運な人の救出をすることが多く。錬度を上げることにより、より難易度の難しい依頼を引き受けることができる。


 最後に我がPTC社長、ラブ・ストーリーより一言

「御機嫌よう。これを読み終えた時、あなた達は新たな人生を手に入れたに等しいことになったでしょう。PTCメカニカル部門により開発されたこのMSCは電脳世界にあなたの意思を共有することができる優れものです。悪用はしないでくださいね。私から言えるのはそれぐらいですかね。さぁ! こんなつまらない文章よりも、早く目の前にあるMSCを装着したいですよね。っていうことで、私もこの辺で失礼させていただきます。それでは皆さん良い人生を」

 何か問題があれば就職管理部部長までお尋ねください。

          以上。PTC就職管理部部長 ピース・エンジェル


「これ、根本的に俺が読むべき内容じゃないよな」

 さっきパスに渡された、承諾書とかなんとかだ。

「べ、別にあなた一人なんかのために手を差し伸べるほど現実は優しくないっていうことよ!」

 ちなみにコイツは、俺がもっと自分の持てる時間を取れ、と言ってから少しキャラが変わった。何ていうか、すごい人間らしくなってきた。

「はいはい、現実は厳しいってのは分かったがな。MSCを使用しない俺にMSCからの説明が初っ端に来てんぞ。よく見ろ! 『必ず以下の内容を確認し、ご承諾したうえで金属(メタル)電脳(サイバー)制御(コントロール)装置(デバイス)(以下、MSCという)を装着すること』だってよ。俺はどうやって承諾したことにすればいいんだ?」

「あのね。これ言うの何回目ですか? あなたは三歳の時から監視してる、その時から入社の事は決まっていたのよ。それから、新入社員には必ずこれを渡すことが義務付けられてるの。文句を言うならそこの就職管理部だとか何とかに言って下さい」

 三歳から内定とか、この世の人が聞いたら驚愕ブルブルものだぞ?

「あなたの場合、唯一の存在ですので我々としても予測の範囲を超えた能力がいくつもあるかもしれません。あなたはガムと自分の身体だけの心配をしていてください。サポートは我々が全力でします」

「前々から思っていたけど、すっげー待遇良くないか?」

 ずっと思ってたことだ。どうして三歳から監視されなければならなかったのか? その辺をこいつらに聞いても完全にしかとしやがる。

「理由は簡単です。我々にも勧誘ノルマと言うものがありまして、できるだけいい人材を効率よく集めた人にはボーナスのチートナンバーがもらえます。ただそれだけですね」

「おいおい、そんな人材不足なんか? PTCって」

「勿論嘘ですよ」

 コイツは笑いながら答えた。何か完全にバカにされた感じだ。

「要はこのピース・エンジェルとか言うやつに文句を付ければいいんだな?」

「ま、ままままままま待ちなさいよ! そ、その、ピース様は貴方が会えるほど簡単な方じゃないのですよ!」

 こいつは顔を赤くして俺に刃向ってくる。何か小さいのに威勢が良いいな。

「でもこれ読んだら、何かあればそのピース様のところに行けばいいんだろ?」

「そ、それは、あれですよ!」

(どれだよ?)

「あ! ピース様は世界中を旅しておられてですね。簡単に会うことはできないというのはそういう意味です。ちなみに、この承諾書が使い回しされてるのもそう言った意味があります」

「つまりめんどくさがりなだけだな。よし、俺一発殴ってくるわ」

「ややや止めてください!」

 ちなみに今は、コイツと一緒に街中にあるコンビニまで歩いているところだ。まあ話してる途中でコイツがちょっかい出してくるから、家を出てかれこれ二時間ほどが経過したかな?

「兎に角、いいですか! あなたがまずしなければいけない事は、えーっと。要は……」

「能力を自分のモノするんだろ?」

「それです!」

 こいつってもしかして普段こんな性格なのか?

(それはそれでいいかもな)

「あ、今少し気色悪い妄想しましたね」

 彼女はまた歩くのを止めて、俺の眼前に人差し指をピシッと刺した。

「誰がお前なんかに欲情するか? 俺そういうタイプじゃないし」

「じゃああれだね。いわゆる巨乳熟女がいいんだね?」

(こいつ、昼間っから大声でなんてこと言い出すんだよ。ほら見ろ、大体の通行人の視線が俺たちをガン見してんじゃんかよ)

「なら私にだって出来るもん!」

(え?)

「あなた、チート舐め過ぎよ!」

 おいおい、さすがにここでは止めてくれよ!

「ウッソピョーン。はは、騙されたぁ」

「この野郎! 待ちやがれ!」

 パスは手を羽のように広げて走り出した。

(こっちの性格の方が、幸せそうだな)

 ちなみに、コンビニに着いたのは出発から三時間後の事だった。

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