捨てた日常
どうしてこうなったのか?
事の始まりを振り返っていると、この酷く疲れ切った身体の寿命が尽きてしまうかもしれない。
そんなことが、ここ数週間の短期間に、春休みという普段、学生であれば昨年度の疲労を回復する短い期間にあった。
そうなってしまった原因は分からない。いや、そもそも原因などは無いのかもしれない。そいつは理不尽にも、俺からしたら何の特殊な能力なんて愚か、スポーツも、学力も、芸術も、そのすべてにおいてごく一般的に普通な高校生の俺が選ばれたのだから。少し違えば俺でなかったのかもしれない。俺を選んだそいつの気まぐれで、さっき街角であった多々大勢の人ごみにいるお前だったかもしれない。若しくはその隣にいたお前だったかもしれない。それはまるで、六つの数字を選ぶ宝くじに当選したかのように、たまたまだったかのように。一つ違えば二等、もう一つ違えば三等。しかし選ばれるのは一等の俺だけ。それは偶然ということ、だと思う。でも、そんなことさえもただの推測だから、真の意図は知ったもんじゃない。
ただ一つ言えるのは、何の変哲もなく、ただ時間が過ぎていくだけの学校生活、そんな人生に退屈していた俺の意思を尊重してくれたように、俺は日常を失った。
そいつがどんな意思で、どんな意図で俺を選んだのかは分からない。
ただこうなることによって、俺は飽き飽きしていた日常を捨てることができた。そんなことを考えるのは、この地球人類七十億人の中で俺だけが持つことができる、持つ権利のある隠された欲望なのか。
春休みに入る前までの日常では、無意識のうちに非日常を望んでいたということを、春休みが終わって知ることができた。
それを与えてくれたことに関して言えば、俺が選ばれた理由も、まんざら偶然ってわけじゃないのかもしれないな。
こんな日常は飽きた。この思いがあったから選ばれたのだとすれば、俺はこうしてこの仕事を続けられる。俺が選んだ道なのだから、続けられる。
非日常という世界ってのが真っ暗ないばらの道であったとしても、それを選んだのが自分なのだろうから。と、この疲れ切った身体に言い聞かせることができる。
この死闘に満ちた春休みが、ほんのプロローグとは知らなかったが。
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序盤の段階では数は少ないですが、今後コメディ要素なども多くしていく予定ではあります。
どうかゆっくりとお付き合いください。