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LEXRAD  作者: 磯ヶ谷 拓斗
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2/8

第一話 解放

「ハァハァハァハァ・・・」

 私は暗い夜道を走っていた。学校の帰り道・・・安全な道のはずだった。はずだったのに・・・

「なんなの!?あの怪物は・・・!?」

 私の右腕は完全に再起不能状態だ。先ほどからものすごく痛むしもう腕を上げる力もない。それに大量の血が流れていた。

 突然私の目の前を黒い影が遮った。早すぎた。私の目の前にはもうすでに怪物がいたのだった。

 ――死ぬの・・・かな・・・?

 それを最後に体に痛みが走った。それと同時に意識も薄れ始めた・・・。

 

 

 *************************************************

 

 それは私が高校生になって早めに学校に来たときのことだった。

 私は一緒の高校に入った友達たちと教室に入る。運よくみんな同じクラスになれたのだった。

「また一緒のクラスだね。」

「うんうん。これからもよろしくね。」

「・・・・・うん・・・・・。」

 左の子が飯沼(いいぬま) 沙羅(さら)ちゃん。勉強は苦手らしいけれどもスポーツ万能な元気な子。

 右の子が岡部(おかべ) 小百合(さゆり)ちゃん。ほとんど会話をしない子で、勉強の成績は学年トップ3。

 中央の子が私、山城 ギン(やましろ ぎん)。男っぽい名前だって言われているけれども、特に気にしてはいない。だが、昔はいろいろとやんちゃをやっていた。

 それは真面目に悩める悩みだ。

「ん?」

 教室に入って辺りを見回して始めて気がついたがまだ生徒が一人しか来ていなかった。

 その一人は男子生徒のようで・・・てか男子生徒。眼鏡をかけていて幾分か短い黒髪。何というか普通の生徒だった。

 気が弱そうな雰囲気で本を読んでいて、題名は・・・「クリスタル」?私は彼のほうに近づいていった。

「えーっと・・・みんな遅いですね・・・」

「うん・・・。まだ時間30分ほどあるからね。」

 彼は時計を指差しながらこちらを見ずに答えた。数分ほどその状態が維持され、私が後ろを向いたとき彼に言われた。

「夜道は危ないです。気をつけたほうが良いですよ・・・。怪物に食われたくなかったらね・・・。」

 私はビクっと反応して彼のほうに向きなおした。彼はこちらを見て少し首を曲げながらにっこりと微笑んでいた。

「え・・・それいったいどういう・・・」

「ギン~~~~暇だからトランプしない~~?」

 私は返事をした後に友達のほうへと駆けて行った。その後姿を彼は見つめていた。彼は最後に一言

「そう・・・もう誰も死なせたりはしない・・・一般人もね・・・。」

 そういうと目線を本に戻してまた黙ってしまった。

 

「彼は・・・?」

 私は沙羅ちゃんに彼のことを聞いてみた。意外な顔をして沙羅ちゃんは言った。

「へぇ~~ギンってああいうのが好みなんだ・・・。」

「ち・・・ちがうよ!!・・・何か変な感じがしただけ・・・。」

「まってね。あいつらに調べてもらうから。」

 沙羅ちゃんは赤い携帯を取り出してどこかに電話をかる。

 とりあえず沙羅は彼の情報をいろいろと教えてくれた。沙羅はその美しい容姿で情報部の実権を握った恐ろしい友なのだ。

 彼の情報を整理してみよう。

 名前 高野(たかの) 宗次(そうじ)。中学までの経歴は完全に不明。家族関係は母、父、兄の4人のようだ。

 中学もどこに入っていたかは分からない。なんでも完全に消滅していたらしい。それともうひとつ。

 彼は私たちよりも一つ年上・・・珍しく中学がダブっているらしかった。何でもタバコを持っていたのが見つかったとか・・・。

 最後に沙羅ちゃんは、彼にはあまり近づかないほうが良いかもしれない・・・と付け加えた。

 それを教えてもらったのはこの日の昼放課だった。それまでは私は普通に授業を受けている。シャーペンを指で回しながら私は彼のことを考えていた。

 別に好きとかそういう意味ではない。ただ・・・彼の持っている『何か』に私は引かれた。何だったのかはよく分からない。

 

 私は、彼に何かを感じた。それは何だったのかはよく分からないが、今考えてみればそれは、事が起きる前の前兆だったこと・・・

 それに気づかなかった私は今も後悔している。

 

 私は昼放課の後に一人屋上にいることにした。午後の授業をサボったのだ。基本私はそっちの系統なので罪悪感とかそんなものは存在しない。

 考えることがある。それは高野のことだった。何べんもいうようだが好きではない。私が一目ぼれなどあるわけがないのだ。

 まぁ・・・少しは悪くはないとは思うけれども外見的には・・・でも少し外角に外れた。って・・・

「わたしは何を考えているんだ!?」

 その時私は自分の中学時代のことを思い出していた・・・。

 

 私は普通に授業を受けるタイプではなかった。どちらかと言えばサボる傾向が強かった。それに喧嘩などもやったので不良と呼ばれても仕方がいぐらいひどいありさまだった。

 私が学校に行ってもみんなすぐに私を避けていった。まぁ、当たり前のことなんだろうけれどもさ。

 授業の時間はいつも外を見ている。毎日が暇でたまらなかった。だから喧嘩をするのだ。私はいつも生傷が絶えなかった。

 それを変えてくれたのがあの二人・・・

 その日私はむしゃくしゃしていた。それは学校で先生に叱られた事だ。こっちが逆切れしてさっさと切り上げてきた。

「ちっ。久しぶりに学校に行ってみればそういう扱いかよ!!!」

 基本的に自分が悪いのにやつ当たりだった。中学のときの私は自己中心的だったのだ。世界は自分を中心に回っていると思いがちな・・・そんな自分だった。

 ぶらぶら歩いていると公園に入ってしまった。気づけばもう夜・・・誰もいなかった。

 私は不意に下に落ちてた空き缶を蹴り飛ばした。カツンという空っぽな音がした。だが・・・こういうときに限って・・・

 ドガァ

「ぐえぇ!!」

 目の前に人がいた。それも集団で。私は急いで走り出して、『ごめんなさい』と謝った。そういう所は叔母から徹底的に教えこまれた。だが・・・こういうやつ大抵おんなじことを言う。

「おうおう!!姉ちゃん!!頭蓋骨が陥没しちまったじゃねぇか!?あぁ!?」

 見た目で不良だといわんばかりだった。予想通りの反応だったし。

 当たった男は黒髪のアフロ。片手には木刀だった。後ろの人たちを見る数は7人・・・全員で8人だった。みんな片手には鉄バットやらナイフやらと危ないものばっかり持っていた。

「ん!?姉ちゃんよく見たらかわいいかおしてるなぁ・・・?」

 アフロの不良は私の顔に触れてきた。確かに噂ではそうだった。私は知る由もなかったが自分のクラスではトップ3に入るほどだった。ただ性格が問題なだけだった。

 アフロの男はニヤニヤと笑っている。こういうときは大概『体で払え』とか言うんだ。そういうやつはよく見る。

 私はハァーっとため息をつきながら目をつぶる。そして目を開く。私はそうするとスイッチが入る。入ると目つきがものすごく悪くなるのは気にしない。

 いきなりの反応に驚いたアフロはかなりの隙があった。

 私はとりあえずアフロの横腹を右手で一発入れてやった。「ぐえぇ!!」と缶の当たったときと同じ声を出しながらその場に倒れて行った。それを見た他のやつらは呆然としていた。

 私は気絶しているアフロを見下すように見て一言

「さわんなよ!!クソボケが!!!」

 すぐに思考が戻ったやつから攻撃を仕掛けてきた。最初のやつは普通にこぶしで勝負を仕掛けてきた。

 右腕を引いてまっすぐ伸ばす。いい右腕のストレートだった。だが私はそれを懐に潜り込みながら避け、アッパーを決めてやった。

 相手は少しの間空中を浮遊していた。その間に次の奴がやってきた。片手にはナイフが握られていた。

 最初の奴と同じように右腕を伸ばしてきたがそれをターンして避けて、そのまま裏拳を叩き込んだ。教科書どおりだった。

 二人目が倒れるのと一人目が倒れるのは同時だった。一人目の奴が長い間空中浮遊してたのだ。

 三人目はバットを握っていて、突っ込みながら横薙ぎにしてきた。私はしゃがんでそれを回避して、お腹に一発思いっきり叩き込む。それだけで相手は倒れこんだ。

「疾風の雷撃か・・・」

 敵の一人がぼさっとつぶやいた。それを聞いたとき私は正直に驚いた。その名は私の喧嘩時の二つ名だった。

 その時一瞬だけ判断が鈍った。真横から接近してくる一人に気づけなかった。気づいたときにはすぐ横にいて思いっきり顔にもらってしまった。

 相当強くて私は少し吹き飛んだ。その先には空き缶入れがあって、激突・・・痛かった。

「ううう・・・」

 当たり所が悪かった。私はその場に座り込んでしまった。そこに四人に囲まれてしまう。

 4人の中の一人が片手に持っていた鉄バットを振り上げた。その男は笑っていて・・・そのとき私は始めて『恐怖』を感じた。

 そしてそいつはバットで殴ってきた。ドグァっとバットが頭に直撃した。

「ぐわぁ!!」

 頭にものすごい激痛が走る。私は首から前のめりになった。頭からたれてきたと思われる血のせいで右目の見える範囲が真っ赤に染まっていた。それに意識がだんだん遠のいてくるのも分かった。

 鉄バットを使った男はまたバットを振り上げた。私は目を強くつぶった。悔しかった。その時

「やめなさい!!!」

 それは女の人の声だった。たぶん若い人だろうと思った。だが・・・その人物を見ようとしても目の前が赤に染まっているしぼやけてよく見えなかった。

「何だよ!?姉ちゃん!?」

「その制服・・・この女と同じ高校の奴か・・・!?」

 それだけはハッキリと聞こえた。そこで私の意識は完全に真っ黒に消えてしまった。

 

「・・・ギン・・・?」

 不意に私は声をかけられた。場所は学校の屋上・・・。話しかけてきたのは小百合ちゃんだった。

「ああ・・・小百合ちゃんか・・・。どうしたの・・・?」

「・・・午後の授業・・・いなかった・・・。」

「あ~サボったのよ。」

「・・・サボるの・・・久々・・・。」

 確かにそうだった。私は二人に出会ってからはほとんどサボらなくなった。喧嘩もやめた。噂も少しづつ薄れていった。

「でも、どうしたの?こんなところに・・・?」

「・・・もう・・・夕暮れ・・・。」

 そう言って小百合ちゃんは夕日を指差した。それを見て私はまた語りだした。

「君たちとの出会いは・・・あの日だった・・・。」

 

 頭を殴られた私は生死の間をさまよった。周りは紫や黒などの黒い色で覆われていた。360°全部・・・。

 急に目の前に少女が現れた。髪は赤色で腰の辺りまで伸びていた。服は白っぽい服でワンピースだ。そして一言、

 ――あなたは私と共に生きるために生まれた――だからここで死んではいけません――

 それは意味がまったく分からなかった。もちろん見たことがあるわけない。そして女の人は光に包まれて消えた。そのまぶしさのあまり私は目を閉じた。

 

 私が目を開けた時、見慣れない天井がそこにはあった。

 元は白だったのだろうが夕日のためにオレンジ色に染まっていた。

「・・・起きた・・・?」

 私は右を向いた。そこには一人の少女が立っていた。目は少し伏目がちで弱気な感じがした。

「あんたは・・・?」

「・・・私は・・・小百合・・・。」

 彼女は名前しか答えなかった。苗字は答えなかった。それで私はまた上を向いた。

 このツーンとくる匂いは薬品の匂いだった。ここは病院なのだ。それはすぐ分かった。だが少女のほうはぜんぜん分からなかった。

 黒髪で少し長めできちんと整えられたその髪・・・その姿は美しいといってもよかったと思う。

 突然部屋のドアが開いた。入ってきたのはまた少女だった。目はおっきくてシッカリとしている。でも私はこういう子が嫌いだった。おしゃべりが多いからだ。

「あれ?小百合ちゃんいたんだ・・・?」

「・・・うん・・・。」

 どうやら彼女は私が意識あることに気づいていないようだった。近くにカーテンがあったためだろう。彼女は歩きながらしゃべっていた。

「でも・・・山城さんが怪我するなんてね・・・。」

 突然入ってきた少女は短めのぼさぼさした髪でどっから見ても運動系だった。

「・・・怪我はいつも・・・してた・・・。・・大怪我は・・・初めて・・・。」

 彼女たちは私のことをいろいろと知っていた。初めて気づいたことだが二人とも同じ制服を着ていた。それも自分と同じ中学の。

 ぼさっとした髪の少女はこちらを向いてきた。そして初めて起きていたことに気づく。

「あれ?起きた?」

 その少女は小百合と名乗った少女と同じ事を聞いてきた。『起きた?』とは意識があると分かっているものに使うのは普通ではない。起きているのが分かっているのに起きた?と聞いて来ているのだから・・・。

「えーっと・・・山城さんは何か食べる・・・?」

「いらない。私にかまわないでくれ。」

 私は反対方向を向いてそれだけ言った。二人は近くにあった椅子に座った。そして勝手に喋りかけてきた。

「危なかったんだからね?私が到着したときにはあなたが空き缶入れの所で倒れていて、頭からすごい量の血を出していたからすぐに救急車呼んでさ・・・。あなた丸2日寝てたのよ?」

 私はほとんどを聞き流していた。だが、ぼさっとした少女は立ち上がって私の前まで回りこんで手を出してきた。

「私は飯沼 沙羅。友達にならない?」

 それが二人との出会いだった。

 

「二人とも・・・?何の話をしているの・・・?」

 屋上に来たのは沙羅だった。声で分かった。

「二人との出会いをちょっとね・・・。」

「・・・出会いのこと・・・全部言った・・・。」

 小百合の言いたいことはわかった。つまりほとんど全部話したから『ちょっと』じゃないって言いたいのだ。

 私は振り返って学校の時計を見た。時間は4時30分・・・

「私そろそろ帰ろうかな・・・?」

 そうつぶやいた。今はもう12月で暗くなるのが早くなっていった時期だった。空は太陽の反対側が闇、太陽のほうが光とちょうど半分に分かれていた。

「そうだね。それそろ暗くなるしね・・・。」

 小百合は同意した。そもそもなんでこんなに遅くなったのかがよく分からない。

「二人ともなんでこんな時間にここにいるの・・・?」

「「部活」」

 二人はそろってそれだけ言った。私は部活に入ってはいない。というか入学初日に部活加入OKは早すぎると思う。この学校はよく分からないことが多かった。どちらかといえば、校長の頭がおかしいのだ。ハゲだし・・・。

「・・・車・・・おくろう・・・か・・・?」

 沙羅ちゃんの家は実は大金持ちで登校はみんなで行くためと拒否したが帰りは車だった。校門のほうを見ると黒い車が一台止まっていた。沙羅ちゃんの車だと一目で分かった。だって・・・

「佐藤さん、手振ってるよ・・・。」

 運転手の佐藤さんは30歳過ぎの人でいつも運転手はあの人だった。私たちは手を振り替えして話を続けた。

「私は歩いて帰るわ。ありがとね。」

「うん。私もちょっと寄りたい所があるし・・・。」

 それだけ言うと小百合は「そう・・・」と少し悲しそうな声でつぶやいた。

 私たちは学校を出てそれぞれの家へ帰宅することになった。

 

 私の家は案外遠い。後半分という所まで来るともう空は真っ暗になっていた。だが、先ほどから気になることがあった。

 私の後ろに誰かいる気配がするのだ。だが、何かが振り返るなといっていた。それは理性かもしれない。カンかもしれない。

 だが、私は振り返ってしまった。

「ひっ!!!」

 目の前にいたのは人間ではなかった。疑いたくもなるようなグロテスクな見た目・・・それは犬だったのかもしれない。

 いや、犬の亜種だろうか・・・?頬が爛れていて肉が見えていた。そして今にも噛み付きそうな目をしていた。

 さらに方一歩の足が骨になっていた。それは普通死んでいるような光景だった。私は特に絶叫もせずに逃げ出そうとした。

「何かがあっても叫んではだめ!!近所迷惑だから。」と祖母ちゃんに言われてきた。ひどい祖母ちゃんだった。

 とにかく私は走り出すためにこの怪物に背を向けた。それが命取りだった。犬が噛み付いてきたのだ。狙いは私の右腕。骨はずいぶんとしっかりしていて痛かった。

 左手で引き剥がしたがその際に歯が食い込んだままだった為に肉を少し引きちぎるような感じになってしまった。ものすごく痛くて、右腕はもう動かなかった。だが、私は逃げ出した。生きるために。

 もしも私がまだ喧嘩をしているようならば戦ったと思う。死んでも悲しむ奴が少ないからだ。だが、今はあいつらがいる。沙羅と小百合・・・だから私は生きるために逃げ出した。

 

 公園まで来た。ここはあのアフロの不良たちがいたところだった。だが、今はそんなこと考えている余裕はなかった。

「なんなの!?あの怪物は・・・!?」

 一人自分に聞いてみたが、返事があるわけでもない。

 私の右腕は完全に再起不能状態だ。先ほどからものすごく痛むしもう腕を上げる力もない。それに大量の血が流れていた。

 突然私の目の前を黒い影が遮った。早すぎた。私の目の前にはもうすでに怪物がいたのだった。

「わたし・・・死ぬのかな・・・?」

 少しづつ意識が薄れ始めていた。だが、私は死ねない!!生きるんだ!!

「うぉおおおおおおおおおおお!!!」

 私は左手一本で突っ込んだ。

 

 僕は今電柱のに立っていた。見ているのは一人の少女と怪物・・・『デビルドック』だった。

 勝てない相手ではない。すぐに助けに入るつもりだった。だが・・・僕のポケットの中のものが光っていた。赤色に。

「適合者・・・?」

 ほとんど独り言に近かったのになぜか返事が返ってきた。

『のようですね・・・覚醒するのを待ちますか?』

 それは女の人の声。でも姿はどこにも見えなかった。だが、僕は気にしない。それが当たり前だから。

「死ぬ前には助けに入るよ。」

 

 私は突っ込んで行っていきなり左腕で犬を殴り飛ばす。でも私は右利きだった。そこまで力は出ない。反対に押されて跳ね返ってしまう。私は吹き飛んで空き缶入れに突っ込む。

 そこはアフロの不良たちと戦ったときに突っ込んだところだった。だが、そんなのは気にしていられなかった。

 犬が私の目の前ににじり寄ってくる。すぐ近くにその犬はいた。

 私が想った事は沙羅と小百合のことだった。今まで一緒に話あったこと。小百合の家に行った事、宿題を移させてもらったこと。いろいろだ。でも、そんなことを思うと・・・

「私は・・・死ねないんだ・・・!!!」

 私はよろけながらも立ちあがった。犬はこちらに飛び掛ってきた。今は意識もしっかりとしていた。

「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 私は叫んだ。そのとき私の体が光だした。真っ赤な赤色に。だが、明るくならない。つまり光りだしても懐中電灯のように道がよく見えたりとはしなかった。光源がおかしいようだ。

 そこまで考えたときに犬が近寄っていることに気がつく。私は左腕でストレートを放つ。時間稼ぎにはならないとしても、やれることだけはしたかった。そのとき『よし!!』という声が聞こえた。

 そちらの方向を向くと電柱に誰かが立っていた。月をバックにしているために誰かはよく分かった。だが、それはあまりにも意外な人物だった。

「高野・・・?」

 あの危ないといわれた少年だった。服装は少しおかしかった。真っ黒な服で風になびいていた。

「やっぱり僕のこと見えるんだね・・・君だ。これを持って!!!」

 高野は何かを投げてきた。暗闇の中でもそれをキャッチできたのは私と同じ色に輝いていたからだ。

「『解放』と唱えるんだ!!」

 私はよく分からないが言われるがままに唱えた。

「解放!!!」

 赤い光が強さを増した。

 

 小百合は佐藤の車の運転で家に帰る途中だった。だが、何か胸騒ぎがするので、ギンの方へと行くことにした。

「・・・佐藤・・・ギンの帰り道・・・そっち・・・。」

「はい。お嬢様。」

 車は後数分で公園の所に来るところだった。

 

 私は正直これは夢だと思っていた。

 変な怪物の犬、電柱の上に立つ高野。そして・・・いきなり現れた剣。

「何なのよこれ!?」

 これとは、自分の手元にある少し大きめの剣だった。もちろんここは日本だ。こんなものを持っていれば捕まることは必死である。

 私があたふたしていると声が聞こえる。

「その剣でその犬を斬れ!!!」

 私はすぐに正気に戻った。目の前には敵がいるのだ。この剣ならばなぜかあいつを倒せるような気がした。だが、右腕は噛み付かれていたのでほとんど動かない。左手で振るしかないのだ。

 利き腕の反対で使うのはあんまりよくないほどの重さだ。当たっても致命傷にはならなかった。それに、体力がそんなに持つとは思えない。

 一撃で決める必要があったのだ。だが、一撃で仕留める方法など知らない。知らないはずだった・・・

「はぁあああああああああああ!!!!」

 私は左手で剣を持ち上げ、地面と平行になるように引いた。それを右手で支える。そこまでやると体を覆っている赤い光がさらに強く光りだした。

 敵のデビルドックもこちらの出方を伺っていたが、やがて突撃して来た。途中から口を開いて飛び掛ってきた。その起動の先にあるのは私の首。噛み付かれたら間違いなく死ぬだろう。

 私はデビルドックのジャンプのタイミングに合わせて、その格好を維持したまま突撃した。そして一気に剣を突き出す!!

『豪突閃(ごうさせん)』

 知らぬ間にその技の名前を口にしていた。

 私の剣の突きは、デビルドックの空けた口に入った。そのまま剣から自分と同じ色の何かが発射されたと思うとデビルドックの体は口から避けて上下に真っ二つになった。

 だが、二つに割れても生命力は高くてまだ生きていたのだ。上の部分の方がそのままのスピードで襲ってきた。

 ガジュサ!!

 デビルドックの上半分の歯が左腕に噛み付く。そのまま離そうとしない。左腕は皮を突き破られて血が垂れ始めていた。

 上半分の体を振り落とそうと考えたその時何かが私の首に突き刺さった。それはデビルドックの下半身だった。

 口から避けてきってしまったので下の部分には足が四つあった。そのまままた跳躍したのだろう。左腕を見ていたので気づかなかったのだ。首に突き刺さった歯の力が上がった。それと同時に首から鮮血が上がる・・・。

 

「ちっ」

 これは誤算だった。『デビルドック』は確かに初めて『解放』した者には少しきついとは思ったが、あの山城 ギンなら大丈夫だと思っていた。

 たしかに『デビルドック』ならば先ほどの豪突閃で勝っていたことだろう。『デビルドック』ならば・・・。

 アレはデビルドックではなかったのだ。アレはよく似ているが、『デスデビルドック』・・・『死の悪魔犬』。つまり簡単には『死なない』のだ。

『デビルドック』の危険度はC。『デスデビルドック』はB+だった。その違いは歴然だったのだ。

 僕は急いで助けに入ろうとした。せっかく適合者を見つけても、死なせては元も子もなかった。それに豪突閃ができたのは奇跡としか言いようがなかった。それだけでも収穫はあったと思う。

 そして僕は電柱を下りようと思った。だが、そこで誰かの声が聞こえた。

 

『解放!!』

 

 私は目が覚めたときに病院にいると分かった。首元を確認している。自分の首はしっかりとついていた。

 私が最後に覚えていることはあの犬に首をかまれたところだった。

 首を確認した後、私はもう一度天井を見た。その天井には見覚えがあった。不良達と戦ったときの天井だった。

 足元が重いと思って上半身を上げてみた。足元には小百合ちゃんが寝ていた。看護に疲れたのだろう。

 私は次に窓を見た。空は夜だった。星たちがきらめいていた。

(あの時・・・あの宝石を使ったことは覚えている・・・。)私は机の上にあるあの時の宝石に気づいていた。知らぬ間に気づくようになってしまっていた。

 それに・・・最後に私を助けてくれた人・・・それも気がかりだった。俺は言わないといけないのだ。ただ、高野ではないことは確かだった。首をかまれた時点で視界はほとんど無くなっていたが聴力はあった。あれは女の子の声だった。まちがいない。

 また視線を足元に戻して足元に寝ている小百合ちゃんの頭をなでた。

「はぁ~ん・・・優しい顔しているじゃないか・・・?」

 突然声が響いた。私は驚いて扉のほうを見た。知らぬ間に扉は開いていてそこから高野がこちらを見ていた。

 こちらの視線に気づくとこちらに近づいてくる。目の前まで来るとすぐ近くにある椅子に座った。

 彼は一度宝石のほうを見て、またこちらを見てきた。

「この前のことは覚えている・・・?」

 高野はいきなり聞いてくる。あのことは忘れたくても忘れられないことだった。

「うん・・・。」

「あの時宝石を使っただろ?赤色のさ・・・。アレは『クリスタル』と呼ばれている。それぞれに意思がああるんだ。」

「意思・・・?」

「ああ。俺のクリスタル『翼天(よくてん)』は20代の女の人だけどな。」

『よろしく。』

 どこからか声が聞こえてきた。それは彼の持っていた宝石であることにすぐに気がついた。

「名前は・・・?」

「君のクリスタル?それはね・・・自分で決めるんだよ。」

「私が・・・?」

「クリスタルと意識をあわせるんだ・・・って言っても難しいな・・・。まぁ、とにかく今は怪我を治せばいい。」

 それだけ言い残すと高野は部屋を出て行った。私はもう一眠りすることにした。

 クリスタル・・・その単語が最後に頭に浮かんだものだった・・・・・・・・・・・・・。

 

 僕は正直に驚いていた。

 まさか彼女が出てくるとは思ってもいなかったのだ。

「友達と言うのは偉大だなぁ・・・。」

 本心だった。

 僕は彼女の部屋から出た後に報告へと急いだ。僕の考えでは彼女は即戦力だった。

「一緒に旅をすることになるな。」

 僕は独り言をつぶやきながらどこかへと消えてしまった。

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