8. 後悔
「二人ともちゃんと話す。可能な限り全部を・・・」
家の食卓に着き、父は語りだした。一言も目は簡潔に。
「俺は獣騎士だった。」
父は部屋へと戻る前に持ってきていたであろう鉄剣、槍、そして軽鎧を机上に並べた。
「マリーは知っているね。君にはたっくさん話したからね。」
そういい微笑む、母も同様に懐かしそうに目を細める。
「アレッシオ、私はね。ここじゃない別の国で騎士をしていた。」
ここから父は長く長く話した。嫌そうに苦々しそうに。彼の話は物語のようだった。自分と同じ元々はただの農民であったこと。たまたま豊穣神の加護があり、彼のいた国も魔物による被害で人手不足でたまたま騎士になれたこと。それまではいい、どこにでもありそうな話だ。彼は物語の英雄だった。ただの魔物狩りではない。龍殺しそれが彼を英雄と呼ばれた所以との事だ。その後、彼は英雄ともてはやされた。そしてある時、彼はこの国へと亡命した。ただ一人こっそりと。その理由だけは何も話さなかった。ただ父があまり過去を話したがらない理由はそこにあるのだろう。そう彼の表情が感じさせた。そうして亡命した先で彼は母に出会い今に至る。
そして彼が亡命し、母と結婚する際に結ばれた条件、それが『自分』だ。
『生まれた子に加護があるならば、その子を獣騎士として召し上げること』
それが彼とその妻マリア・チェルヴォコルニ。もとはそれなりの貴族らしい。それを騎士団は隠蔽した。結果、今に至ると。
「二人とも今まで話さずに済まなかった」
「ありがとう、父さん。結局母さんも僕に隠してることがあったじゃないか」
「ごめん・・・なさい。こんな話があるとは思わなかったから。必要ないと思っていたから」
部屋は薄暗かった。そんな薄暗がりにとの弾む音が響く。
「夜分に失礼」
ピエトロだ。父が戸を開き迎えに行く。
「そろそろ話されたかと」
「はい」
「いやはや、相手を思っていても隠しごととはままならぬものですな。ばれた時の痛みはもとより知っていた時の比ではない。それまでの後ろ倒しにしてきたその痛みが雪崩れてくるようなもの。家族を、守りたいものを持つということは人をどれだけ愚かに、臆病にさせるものか」
失敬とつぶやきつつ彼は部屋へと入り込み、一つ客席を勝手に用意する。
「そんな折にせかすようで済みませぬが、もう一つの決断を早めにしていただきたいですな」
「わかっています。息子の、その友達のこれからに係ってくることですから」
ピエトロに続き父も席に着く。その表情に後悔を滲ませつつ
「私が二人に戦い方を叩き込みます。そして・・・貴方たちにも」
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