表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/5

第5話 似た者同士 

 次の日、先輩はやっぱり怒り狂っていた。


「ああ、なんでだよ! 世の中おかしくねえか? なあ佐久間!」


「そんなこと僕に言われましても……」


「ぜってぇ誰かが俺の注文記録を見てやがるんだ。そうに決まってる!」



 ここで僕はつい言ってはいけないことを言ってしまった。


「先輩。市場が先輩の思う通り動くわけないじゃないですか。みんなの思う通りに動くなら市場は誰のいうことを聞いていいかわからなくなるから値動きがなくなりますよ。ていうか、先輩の売買なんか見てる人いませんって。《《被害妄想ですよ》》」


「こんの野郎!」


 ガッ!


 気がつけば僕は右頬をグーで殴られていた。

 元ラガーマンのパンチとか洒落にならんすよ。



「日下田! 何をしている! おい、警備員を呼べ!」


 課長が事態を収拾しようとする。


 殴られたところがじんじんする。

 殴られたのなんて中学生の時友達とケンカしたとき以来だ。




◇◇◇




 結局、先輩は1週間の自宅謹慎を命じられた。

 被害届は出してない。

 殴られたが、理性は残っていたのかそこまで強く殴られてはいなかった。

 ちょっと青あざが出来たくらいで、歯が抜けたりとかそんなことはなかった。


 それはいいんだけど、その穴埋め僕がするんですよ。

 また残業なのか……




 そうして残業していたら、梨香さんがやってきた。

 わざわざ経理部まで来るなんて。


「玲さん一人で残業ですか?」


「ええ、まあ」


「ごめんなさいね、なかなか人が集まらなくて……」


「いえいえ、梨香さんのせいではありませんよ」


「なんとかできないか考えておきますね」


「ありがとうございます」


「そういえば玲さん、通勤用のバッグを変えてますね」


「ええ、前のがちょっとボロかったので」


 そんなことを言ってくれたのは梨香さんが初めてだ。

 僕の隣にいる先輩なんか気づきもしないのに。



「結構羽振りがいいんじゃないですか?」


 ドキッ。


 なんでバレてるんだろ。

 バッグは確かに背伸びしてちょっといいブランドだが、目立つものではない。

 あと、ご飯は一品多くできるようになった。

 気持ち的に。



「私ね、お爺さまやお父さまをずっとそばで見てきたから、お金がある人やこれから金持ちになる人がなんとなくわかるの」


 さすが大企業の一族。

 いいスキルをお持ちで。

 

 ていうか、なんとなくわかる、っていうあたりは最近の僕と共通しているかもしれない。

 そう思うとなんだか親近感が湧いてくる。

 そして次の言葉が自然と出てくる。



「少し待ってもらえませんか? 残業を終わらせたらまた夕食に行きませんか?」


「いいですよ。終わったら声をかけてくださいね」



 ダラダラ仕事をするよりは、何かの目標があった方が早く終わる。

 今日の残業は早く終わった。


 そして、梨香さんと夕食に行く。

 


 話があって意気投合するうちに、二年ぶりに僕に彼女ができることになった。


 さらにその日のうちにホテルまで。



◇◇◇



 普段使わないタクシーで彼女を送って夜中に帰ってきた僕は、もちろん株価の記録をつけてから眠った。

 フジヤマシステムズの数字はまだ光っていた。 

 いつもお読みいただきありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ