包囲
村の入り口に着いた俺たちはすぐにこの村から出ようと足を踏み出す。その瞬間、足に糸が絡みつき俺たちはすぐに足を戻した。
一度、森の方にスマホのライトを照らし、目を凝らすと細かな糸が大量に張られてあるのが確認できる。しかもかなり奥まで張られているようでこのまま突き進んでも糸に絡めとられ動けなくなりあの化け物に食われることだろう。
「くそ!あの化け物、糸をこんなに張りやがって俺らを絶対に逃がさねぇ気だな!」
「いや!まだだ!糸が張られていない場所があるかもしれない!探すぞ!」
だがそんな希望を打ち砕くかのように糸のない場所は存在しなかった。
「どうするんだよ...これ...逃げ場なんてないじゃないか...」
「仕方ねぇ、こうなったら最後まで抗うしかねえな。」
「抗うたって、どうすりゃいいんだよ!」
「それを今から考えんだろうが!お前もなんか案出せ!お前の方が得意だろこういうのは。」
「そう...だな...わかった。こうなったら最後まで抗ってやる。まずは持ち物の確認だ。何か使えるものはないか?」
そうして持ち物の確認が始まった。互いに確認し使えるものはスマホのライト、虫よけと殺虫剤、ライターだけだった。
「使えそうなものはこの程度か。」
「ライターがあるんだったら、糸を燃やしながら行けばいいんじゃないか?」
「いや、それだと時間が掛かりすぎるし、光で居場所がばれる、それに山火事が起きるかもしれないからその案は却下だ。」
「殺虫剤はあの巨体だし効きそうにねぇしな。」
「ライターと殺虫剤で即席の火炎放射にするってのはどうだ!」
「炎は効くかもしれないが燃え尽きるには時間が掛かる。その間に飛び掛かれでもしたら俺たちが火だるまになる。」
「じゃあ、どうするんだよ。」
「もう一度あの屋敷に潜入してあいつについて調べる。あいつはたぶんこの村で信仰されている白吐様だ。ならそれに関する文献があの家にあってもおかしくない。もしかしたら怒りを鎮める方法があるかもしれない。」
「だが、あいつがどこにいるかわかんねぇんだぞ。どうするんだ?」
「俺が囮になる。その間にお前が調べてくれ。」
「本気で言ってんのかそれ。」
「ああ、本気だ。それに逃げ切る算段も付いてる。」
「それでもお前の方が調べることについては向いてるだろうがよ。」
「ああ、俺の方が確かに向いているとは言えるがこの場合必要なのはじっくりと調べる力じゃない短時間で必要な情報を探し出せる運と直感を持ったお前の方が適任だ。だから頼まれてくれるな。」
「なら、何にも言わねぇよ。あの化け物の弱点を調べてやっからよ。死ぬんじゃねぇぞ。」
「当たり前だ。」
そして、作戦は始まった。