怪異
ひとしきり、村長の日記を読んだ後、俺らは溜め息をついた。
「この村、かなりやべぇところだったんじゃねぇか?」
「やばいどころの話じゃないなこれ。明らかに人を生贄にしたと思われることも書かれてあったし、白吐
様とか言われるものを信仰している因習村のような場所だったんじゃないか?」
「にしても、この村の掟ってなんだ?来客が何かあしてはいけないことをしたのはわかるが肝心の掟について何一つ書かれていないから何も分からないな。」
「それなら、ここは書斎だし調べればそのことに関する何かが出てくるんじゃねぇのか。」
「それも、そうだな。まだ迎えは来そうにないし調べてみるか。」
その時だった、窓から何か視線を感じその方向を見ると、女が立っていた。
だが、それは絶対にありえない。人というものは地に足が必ず付くはずだ。ならなぜ女は逆さまに立っているんだ。
そのことに思考を巡らせていると窓が割れた。甲高い音が鳴り、ガラスが飛び散る。そして女が入ってくる。
ずるりと天井を這いながら窓を超え、書斎に入ってくる。書斎に入ってきて女の全貌が見える。
その姿は子供ならば一口で平らげることのできそうなほど大きな蜘蛛の下半身を持ち、上半身には女の体を持っていたが、その顔は酷く醜く歪んでおり、子を殺された親のような顔で復讐に身を焦がす怒りの顔をしていた。体から汗が噴き出る。頭の中では警鐘が鳴り、逃げろと頭の中で吠える。
だがそのおぞましい姿を直視したことにより俺は足が竦んで動けなくなっていた。
その時、猿渡の「逃げろっ!!」その一言で俺は自意識を取り戻し、すぐ書斎の入り口に走り出した。扉を開け屋敷を飛び出し外に逃げる。猿渡も俺の後ろにつき逃げる。
あの化け物も追ってきたが猿渡が機転を利かし、本棚を倒したことで化け物が怯んだ隙に俺たちは村の入り口までたどり着くことができた。