合流
僕は今、とてつもない安心感を覚えた。もう駄目だと諦めていた時、間一髪で僕を助け、檻から手を引いて連れ出してくれたこのお兄さんに。お兄さんが手を引いてくれるとこの危機的な状況でもどうにかなる、そんな気がするんだ。
今の僕ならどんなことでも乗り越えられそうだ。
そんなことを考えながら僕たちは走っていく。向かう先はシャッター街の入り口。そこまでいけばお兄さんの仲間と合流して逃げることが出来るらしい。ようやく逃げられる希望が見えてきた。
だがそれ以上に暗寂鬼の攻撃が激しくなってきた。今までは遠くから姿を見せたり、死角から一撃を与えてくる程度だったのが、今や近くに転移してくると同時に捕まえようとしてくる始末だ。日の出まで刻々と時間が過ぎていくことに焦りを覚えているのだろう。
だけど、その程度では僕たちを捕まえられない。僕たちは互いに死角を補い合い、すぐに対処できるように陣形を整えていた。
そしてついにシャッター街に着く。僕たちの体力は限界一歩手前だったが、たどり着いた。
「車がない?」
そこには誰も居なかった。お兄さんは電話を掛けようとするが上から黒い手が伸びスマホを弾く。
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スマホを弾かれた。俺は咄嗟に拾おうとするが暗寂鬼の爪がスマホを貫く。
(まずい!連絡手段を壊された!それにもう相手の間合いに入ってる。)
俺は相手の間合いに入っていることに気づき、白兎君を抱きかかえ離れようとするが暗寂鬼の振りかざした爪が俺の二の腕を引き裂く。
「う”っあ”あ”あ”~!」
痛みにより俺は叫ぶ。痛い、痛い、痛い。想像の倍以上に居たかった。傷は浅いがそれでも血が止めどなくあふれてくる。怖い、怖い、怖い。痛みにより感じていた恐怖がより鮮明になる。痛みと恐怖は切っても切れない関係だ。実際、俺は傷を受ける前と後では目の前の化け物に対する恐怖の度合いが違う。傷を受け、流れ出す血がこいつは俺を殺せるという事実を突きつけてくる。
暗寂鬼は俺たちの前に近づき、手を振りかざす。俺は動けなかった。もう終わりだと思ったとき。
「ちょっと待った~!」
そんな声が聞こえると車が目の前の暗寂鬼に衝突し暗寂鬼は跳ね飛ばされる。
「間一髪やな。秋良君!早よお車に乗り!」
車に乗った迅が急かしてくる。俺は開けられた扉から車に白兎君と共に乗ると、車はすぐに出発した。
「間一髪だったな。秋良。腕大丈夫か?」
「ああ、マジで死ぬ一歩手前だった。あと腕は傷自体は浅いけど血が止まらん。」
『大丈夫?腕の治療しようか?』
猿渡と香奈さんが話しかけてくる。香奈さんに腕の治療をお願いし、止血が終わると迅が話しかけてきた。
「こっから先は車で逃げることにするけどええな。」
「それはいいですけど、車だと不利だと言ってませんでした?」
「それに関してはもう大丈夫や。怪異用の機械は出来上がっとるからな。今なら車の方が有利っちゅう訳や。」
俺は納得した。怪異用の機械が何かは分からないが断言するということはそれ相応の物なんだろうと思い迅に運転を任せ、少し休むことにした。
日の出まであと三時間




