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伝承怪異譚  作者: 夜渡
始まりと蜘蛛と探偵と
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異界

 そもそも、異界とは何か。迅曰く、異界とは自分たちのいる現実世界とは違うまた別の世界だそうだ。異界は様々な姿を取り、現実世界に風景を似せるもの、まったく違う不気味な世界を作るもの、永遠と続く道を作るものと話によって姿を変える。


 そしてそのどれもが異界で起きたことは現実には何も影響しないということだ。付いた傷などはそのままだが異界でどれだけ暴れようが現実には一切影響がないそうだ。


 そう、何をしてもだ。例えダイナマイトを爆発させたとしても音が届かないように声や電波は一切届かない。ネットに関しては一部は繋がる異界もあるそうだがここでは使えないようだ。


 何が言いたいのかつまりこの異界に来た時点で外部との連絡は遮断されている。


「さすがにネットには通じないか。見渡した限りだと俺一人だが、誰かいないか探してみるか。」


 周りには何一つない暗闇が広がっており動くものは見当たらない。異界からの脱出方法はあるとはいえあまり長居しすぎるものではない。それに早く見つけないと猿渡の命が危ない。


「あの二人は見当たらないし、俺一人で探索するしかないのか。」


 そう、この異界に落ちた時、二人が異界に入ったかの確認はできておらず、あの二人が異界に居るのかも分からない状態であり、かなり心細い状況である。


 来る前に買っておいた懐中電灯を光らせてみるが暗闇が晴れる気配はない。だが光自体はあるので誰か気づくかもしれないという希望を込め、懐中電灯を点けたまま異界を歩く。


 足音すら響かぬ暗闇の世界を歩き続けること早三十分誰とも出会わない。スマホの時計としての機能が生きていたのは幸いだった。


  それからさらに三十分後今だ誰にも会わない。音が響かず、景色が変わらない空間というものは想像しているより精神を蝕んでいく。一人でいる恐怖、暗闇の奥から何か出てくるかもしれない恐怖、猿渡の生死の有無すら分からない恐怖、様々な恐怖が暗闇によって増幅され気が狂いそうだ。


 だが、どこからか声が聞こえる。極限の状態で生み出された幻聴かもしれないが一縷の望みを賭け自分も声を上げる。一拍置き返事が返ってくる。人がどこかにいる!そのことに気づき俺は声のする方に駆け寄っていく。


 まだ見えないが声は徐々に大きくなる。しかし、一つ違和感を覚える。俺が探している猿渡は当たり前だが男である。だが聞こえる声は女性に近い高い声だ。


 そして、人の姿が見える位置までくる。そこで気づく人影が二つあることに。暗闇のせいでうまく見えないがどうやらもう一人は横になっていて眠っているようだ。


 顔が見える位置までくると一人は髪を長く伸ばした二十代ほどの女性と猿渡だということが分かる。


 猿渡の顔が見えた瞬間俺はすぐに駆け寄り状態を確認する。素人知識だが猿渡の状態を確認する。脈に異常はなく呼吸や変な症状は見られないためただ寝ているようだ。


 猿渡の無事を確認して俺はもう一人の女性に話を聞くことにした。

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