脱出
俺たちは一心不乱に逃げ出した村の入り口に着くと大量に張られてあった蜘蛛の巣がきれいさっぱりなくなっている。「許された」そんなことも思う暇も無く来た道を戻っていく。
スマホの明かりを点けるという思考に至らずただ山道を走り続ける。山道は暗く月の明かりすらも届かない、完全な闇に覆われていた。風による木々の騒めき、どこまでも続く暗い闇の道。そして心に巣食うあの化け物が追いかけてくるという幻影そのどれもが俺たちの心を恐怖で蝕んでいく。
そうして、恐怖に追われ山道をただ走る。何度も山道を転ぶが恐怖によってすぐに立ち直りまた走り出す。服は何度も転ぶことで汚れ、傷つき、破れるがそれでもその一切を気にすることなくただ走る。
その走りはただ恐怖から逃げ出す本能による走りだった。
走りともいえぬただ気力だけで動いて山道を歩いている頃、ようやく道が開ける。目に朝日の光が入ってくる。一晩中歩き夜が明けた時に眼前に移る景色はお世辞に言ってもとても美しいとは言えない景色だったが、今の俺たちにはそれで十分だった。
目に映る朝日と人の手によって造られたアスファルトの道路は自分たちが生きてあの廃村と化け物から逃げ切ったことを感じさせ目に涙が浮かぶ。
「俺たち、生きてんだよな。」
「ああ、足も手もついてるし土の感触もある。ちゃんと俺たちは生きて帰れたんだ。」
その言葉を口にした瞬間、感情が溢れ出した。生きて帰れた安堵感による涙はなかなか止まらなかった。涙が止まり帰るために歩き出す。
だが、いきなり目の前に停まった黒いワゴン車から人が降りてくる。黒い服を纏った男が頭に布を被せてくる。抵抗しようとするが、夜通し歩き続けた為体力はもう底がついており。あっさりと捕まり、車に乗せられる。
これから俺はどうなるのだろうと不安を抱きながら車は何処かに向かっていく。




