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短編連載『仮面の記録者』  作者: 赤虎鉄馬
3/12

第3話 記録者(レコーダー)



「カウントダウンって、何なんだ……?」


香緒のスマホ画面では、無機質な数字がゆっくりと減っていく。


 04:59 → 04:58 → 04:57……


小さく震える香緒の指先。

“これを見たのは初めてじゃない”という顔をしていた。


「最初にこれが出たのは……私の顔が変わった朝だった。

そのあと、しばらくして、夢を見始めたの。

自分じゃない誰かの――“記憶”みたいな夢」


香緒が語る「夢」は断片的だった。

知らない町、知らない名前、けれど確かな感情だけが刻まれていた。


「でも、それが……現実になっていったの。

夢で見た出来事が、数日後に目の前で起きた。

誰かが言った言葉、誰かが死ぬ瞬間――全部、夢で“記録”されてた」


俺は、言葉を失った。

だが、胸の奥にある違和感が、静かに共鳴していた。


――昨日、夢を見た。

誰かに刺される夢だった。

暗い路地で、知らない声が囁いていた。


> 「お前はもう、元には戻れない。記録者になったんだから」




まさか、あれも……“予兆”だったのか?


「これ、ただのアプリじゃない。

私たちの“記憶”を、どこかに転送してるの……」


香緒がスマホを伏せた瞬間、背筋が凍った。


喫茶店の窓の外。

信号待ちの人混みの中に、“顔のない男”が立っていた。


まるで白いマネキンのようにのっぺらぼう。

スーツ姿で、じっとこちらを見ている。いや、“記録”しているように。


香緒もそれに気づいた。


「あれ……また来た。何度も現れるの、夢でも、現実でも……

あれは、たぶん――“回収者”。記録された記憶を、誰かに“戻す”存在」


カウントダウンが、ゼロに近づいていく。


00:05… 00:04… 00:03…


「ハルキ、お願い。絶対に、あの男から目を逸らさないで。

記録が始まるとき、“見られた方”が書き換えられるの。次は、あなたの番……!」


そして、表示が消えた。


00:00――。


俺の視界に、**“何かが入り込んでくる”**感覚。


記憶でも、夢でもない。

――明らかに“他人の人生”が、脳内に流れ込んできた。


名前の知らない少女の悲鳴。

誰かが誰かを殺す音。

白い部屋、無数の鏡、そして――“仮面”。


そして、最後に。


「記録者No.37、確認。次の“顔”の適用を開始します」


その声が響いた瞬間、俺の左目が、熱を持った。


記録は、始まってしまった。



---


(つづく)







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