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いくら言葉を紡いだところで、本質はそこに現れてくれないし、何ら解決策なんて、ただつらつらと書き連ねて吐き出したいだけの私には、そんなもの浮かんでこないのだ。こんなことを思いながら、私は今日も寝る前に日記を書いた。
「明日はどんな日になるだろう。」
こんなにも現実的な問いかけが、今の私にはまるで意味のない夢見ごこちのように、明日がどうなるかなんて事に全く興味が無いかのように感じられるのは、いつからだろうか。
ささいなことが私の心の海に波を立て、常人には想像もつかないほどの荒波となって私のことをもみ消してしまう。これがどんなに馬鹿馬鹿しい事か、やっとのことで気付けたあの時を思い出している。
いや、いちいち言葉にしてしまうのはよそう。なんだか自分でも興冷めな気がするし、あまり具現化せずに心に留めておきたいのだ。いつか、腐ってしまわないと良いけれど。だれか、とっておきの哲学を私に教えてはくれないかな。そうして私の心が明日、今までよりもずっとずっと楽で居られるように、私を救ってほしい。
勘違いという類の妄信や、宗教なんてものにすがれるくらいに私が世間知らずだったらば良かったのかもしれない。けれど、この世界の根底を見逃さないで居たいのだ。あの瞬間と、その時の私の想いをちゃんと、噛みしめてあげて居たいのだ。
「まだまだ、眠るわけにはいかない。」
頭の中でぐるぐると、ただ吐き出したいだけの私が考えていたところで何も物事は前に進まないのに、ただただ私は考えていたい。
解釈したいのだ。あの瞬間を、人々の想いを、そして何よりも自分自身のことを。解るまで寝られない、寝る訳にはいかないと、心が私に迫っている気がするのだ・・・
朝が来るのが少し嫌だ。私はこのままでは、何も解らないまま、変われないまま、あの荒波のなかに身を投じることになってしまう。耐えられないほどではない程のつらさに、私はまた甘んじて、耐え忍ばなければならなくなってしまう。
あぁあ、こんなんじゃ駄目だな。このままの私では、あの瞬間と、あの時の私の想いに報いるだけの現実を創り出せないだろう。
頭の舌がよく回る。そいつがしゃべり続けているせいで、心がそいつに、そうするよう迫るせいで、私は頭に悶々とする感じを受けながら、今日もなかなか寝付かない。
「あぁ」
たまに心が躍る。気持ちが溢れ出てくる。生きているということが分かる。現実をかすかに感じる気がする。でも、たぶん私は何も解っていないのだろう。
これら一通りの、私の思い得る範囲のこと全てを言い終えて、私は、ようやくまどろんで来る。おそらく私は、何かを知らないのだろう。知らなければならないのだろう。もしそうだとしたら、答えを出すには明日が必要だ。




