床屋と3人の男
床屋で3人の男が言い争いをしていました。
「何を言っているんだ。麦といったらゴハンだろ。麦飯とか体にもいいし。日本人ならゴハンだよ!」農家の男が言いました。
「ふん、JAに安く買いたたかれてるくせに。同じ麦を使うならパンを焼けよ。高級食パンで儲けられるぞ」パン屋の男が言いました。
「けっ、そんなブームとっくに終わってるよ。麦わらでカゴや帽子を作るのが堅実でいいんだ」雑貨屋の男が言いました。
言いあらそいはいつまでたっても終わりません。
「おい、床屋のおやじさん。もうこうなったらあんたが判定してくれ。いったいだれがいちばん利口な麦の使い方をしてると思う?」
床屋はなにやら棚の奥をごそごそやり出しました。
やがて樽を引っ張り出してきて言いました。
「とりあえずこれでも飲んで落ちつこうや」
3人の男たちは顔を見あわせ、だまってイスに腰をおろしました。
その晩、4人が密造麦酒をくみかわし、楽しく盛りあがったことは言うまでもありません。
(終わり)