第2話 異世界ともふっ娘
「夢か現実か」
目を開けると遠くに緑の葉っぱが映った。
所々茶色いのは木の枝だろう。
風が青臭い臭いを運んでくる。
地面の感触からすると草むらか、それとも芝生といった所にでも転がされていることがわかる。
現実的でない現象に見舞われたが、さてはてここは本当に異世界なのだろうか。
少なくとも知らない所へ送られたのは本当のようだが……。
実は全て嘘で外国に売り飛ばされた、なんてオチだけはやめてほしい。
「縞パンロリっ子!!! 」
体を起こし首を動かして探す。
ここは森のようだ。周りには木が生えており太陽の光を遮っている。
すぐ隣には泉のようなものがあり、こぼれる光を反射していた。
神々しい光を放つそれはRPGでいう所の回復の泉のようなものだろうか、と思いながらも肩を落とした。
「いないのか」
がっかりしながらも立ち上がる。
モチベーションは一気に下がったがまずやるべき事は多い。
何をするにしても食べ物を探さないと、と思っていると違和感に気が付く。
「これうちの巫女服じゃないか! 」
腕を見ると白い布が覆っている。下を見ると赤く長い袴だ。
見間違えるはずがない。私が大学を卒業するまで着ていた巫女服だ。
なんでこんなものを着させられているのかと思っていると、目線がいつもよりも低いことに気が付いた。
まさかとは思うが縮んでる?
色んな事が一気に起こり混乱していると「チリン」と鈴の音が聞こえた。
顔を上げて警戒しながら周りを見る。
草むらがガサっと動いた気がした。
反射的に構える。
空気がピリつく中そこから現れたのは――。
横縞の下着を着た、二つの可愛らしいケモ耳を生やした、――四足獣だった。
『コン』
「違う!!! 」
★
上下ストライプ下着を着た一体の白狐から目を放して空に叫ぶ。
「違う! 意味が違う! 」
『? 』
「確かに縞パンロリっ子かもしれない! 体は小さいものな! けど……、けど……、そこは狐獣人だろうぉぉぉぉぉ!!! 」
森に私の声が響く。
呪詛にもとれる言葉を放っていると、蒼白い光を放っている白狐が『きゅぅん』と悲し気な声を放った。
慌てて彼女? に近寄り宥める。
ストライプ模様のブラジャーをつけているから恐らく雌だと思う。
「君が悪い訳じゃないんだ。悪いのはあの神様君だ。君が悪い訳じゃない。悪いのは神様君だよ」
膝をつきもふもふしている頭を撫でながら彼女に言うと、瞳をとろんとさせて気持ちよさそうにする。
お、これはこれで可愛らしい。
手入れがされているのか毛もサラサラで触っているこっちも癒される。
一通り撫で終わると腰を上げる。
さてどうしたものかと考えていると白狐が『コン』と鳴いた。
「え? 」
放たれている蒼白い光が一気に収束している。
何が起こっているのかわからないまま見ていると、白狐がいた所にケモ耳を生やした女の子が立っていた。
「お久しぶりです。陽子さま」
少女は黒い膝上スカートを軽く摘まんで優雅に一礼する。
様子に見惚れていると、ゆっくりと顔を上げてニコリと表情を緩める。
そして堪らず私は飛びついた。
「なにこの子可愛い!!! 」
「きゃぁ! 」
「え? なに? 変身するタイプだったの?! それなら早く言ってよぉ」
「よ、陽子さま。頬ずりしないでください」
「良いではないか、良いではないか~」
「陽子さまぁ~」
幼い声で狐っ娘は手を伸ばし助けを呼ぶ。しかし助けが来るはずもない訳で。
この可愛い生物を楽しんだ後に少し観察。
どうやら自在に変身できるタイプのようだ。
私にいじくりまわされたせいか、彼女は白い肌をほんのりと赤らめながら、キツネ型のウエストポーチに手をやっている。
ポーチのチョイスも可愛らしい。
しかし……任務を完遂するとこの子を日本に連れていけるできるってこと?
神様君、マジ神!!!
ポーチから長物を出している彼女をよく観察する。
スカートの後ろからは白く大きな尻尾が覗いている。
スカートの中に仕舞い込んでいるにしてはスカートが膨らんでいない。どんな仕組みだ? と思いながらも後ろに穴でも空いているのだろうかと想像する。
黒いスカートに合わせたのだろうか、上は小さいフリルのついた上品な白いブラウスを着ている。
所謂ゴスロリのような服ではない。品のある白と黒。清楚系美少女が着るような雰囲気の服だ。
それにあれほどにわやくちゃにしたのに服に皺一つついていない。
彼女はさっき変身した。それと同時に服も出た。
何故にストライプ柄の下着を着たまま登場したのかわからないが、要は全て不思議な服だ。
理解の範疇の外にある摩訶不思議服とならば考えても無駄。
きっと私がもみくちゃにしたくらいでは皺はつかないのだろう。
――流石神様君が寄越した人材。侮れない。
ケモ耳縞パンロリっ子、といった所か。
私の趣味を的確に刺激している。
――やはり、侮れない。
「こちらが創造神「ル・エキナ」様より預かった品物になります」
「え。神様君はそんな名前だったの? 」
「……名乗らなかったのですね。あの駄神」
「何か言った? 」
「いえ特に」
向日葵のような笑顔を咲かせて返事をする。
その笑顔が逆に私を不安にさせる。
この表情は、知っている。
無理をしているハードワーカーの笑顔だ。
しかしここで指摘するのも無粋というものだろう。
もし彼女が旅について来るのなら、その間だけでも彼女の休憩になればと心の中で願った。
私は優しい笑みを浮かべながら彼女が出しているものを受け取る。
重くはないが、この形状には覚えがある。
「こちらは武器になります」
「刀? 」
頷く彼女に「抜いても? 」と聞くとOKが出た。
「おおおーーー」
「魔法が使えるので必要ないかもとの事でしたが、女性の旅。武器を持っているだけでも安全性は増すでしょう、とのことでした」
刀身が木々から零れてくる光を反射する。
銀色に輝く刀は美しく、使うのがもったいないくらい。
軽く振ると「ヒュン」と音が鳴る。
「武器候補は色々とありましたが、その昔剣道と居合を習っていた陽子さまにはこれが一番かと」
「……良く知ってるな」
刀を木製の鞘に納め彼女に聞くと、口元に手を当てくすりと笑う。
笑う要素がどこにあったのかと首をかしげていると彼女は言った。
「それは知っていますとも」
「どういう意味? 」
「わたしは陽子さまの神社で祀られていた稲荷ですから」
トンデモ事実が発覚した。
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