第19話 犯罪者を突き出してみた
「まさかの女の子だったか」
森を出ながら一人ポツリと呟いた。
てっきり男の子かと思ってかっこいい名前をつけたが失敗だったか?
いやウルフィンガルドだから愛称はウル。
ウルと呼べばギリ女の子に聞こえるからセーフ。
「さてあと少しのはずだが」
出来れば私が外に出るまでにハクアがウルに教えることができれば一番良い。
けれどハクアが「森を出ていてください」ということは、教えていることは難易度の高い事だと思う。
ならば早々に出て二人が外に出ても安心な状況を作り出すのが最善。
今、いつも案内役をしてくれているハクアはいない。
けれどこの道は慣れた道。
警戒は怠らないがサクッと出よう。それが良い。
思いながら歩いていると血の臭いと共に声がする。
何事かと集中すると話声が聞こえてきた。
「いってぇな、クソッ! 」
「……ったくせっかく見つけたのによ」
すぐに気配を消して木の陰に隠れる。
強化された視覚で探し、聴覚で声を拾う。
「ガキでもフェンリルってことか」
「こっちとしては死ななかった分だけマシということか」
「ちっ。依頼失敗か」
「依頼主はどうする? 」
「帝国の旦那か? どうするったって……」
「何か言い訳でも考えねぇと俺達も消されかねないぞ? 」
遠くを眺めると傷を負った男達が傷の手当てをしている。
こいつらがウルを傷つけた奴らか。
思うと心の奥から怒りが湧いてくる。
腰の刀に手を添えた。
「ゴブリンにも劣るゴミめが」
★
「これは一体……」
「密猟者です。あとなんか帝国とかいう国とつながりがあるみたいなので調べてみてください」
顔なじみとなった門番に気絶した男達を引き渡す。
土属性魔法を使用して作り上げた鎖で森から引っ張ってきたせいか、彼らの体はボロボロ。
しかし起きる様子はなくまだ眠っている。
「確かに普通のやつら、ではなさそうだな。ヨウコ殿も一度詰め所に来てもらうことになるが……」
申し訳なく言う門番に了解の旨を伝える。
門番の男性が詰め所までボロボロとなった密猟者を引き摺り向かう。
建物の中へ入るとそこには一人の年配の男性が座っており、そして事情を話した。
「フェンリルにあったか。それは運が良い。しかし子供が狙われたとなると……」
嘘と思われるかもしれないと少しビビっていたが杞憂だったようだ。
衛兵長の話によると、時々フェンリルは確認されているとの事。
というよりもあそこは「幻獣の森」と呼ばれているらしく親フェンリルが森の守り神的な役割をしているらしい。
初めて知った。
「本当ならば国際問題だ。ヨウコ殿の話を疑う訳ではないが……、この者達にも確認させてもらおう」
「構わない」
「恩に着る。してヨウコ殿はいつまでこの町にいるのかな? 」
私は彼に旅人と伝えている。
ウルを捕えようとした犯罪者達の証言をするため、いつどこにいるのか知っておきたいのだろう。
しかし——。
「まだわからない。その時々の気分だからな」
言うと衛兵長は「そうか」と少し困ったような表情をする。
何か考えたかと思うと「確か冒険者だったよな」と聞いてくる。
それに頷くと机の下から紙を出してきた。
「悪いがこれに署名を」
了解、と言いランクと名前を書く。
読むと何か証言が必要な時にギルドを通じて呼び出しがかかるようになっているようだ。
何とも便利な事かな冒険者ギルド。
書き終えた私は解放される。
一先ずエヴァンスホテルへ向かい、自室に入る。
鍵を閉めて異空間の中へ入ると、視界がスイートルームから青い空が広がる農地へと変わる。
「白亜様は神社でございます」
「ございます」
ハクア達はどこかな、と探しているとハクアの眷属が突然現れた。
彼女達にお礼を言うと軽く「コン」と鳴いて消えていった。
「彼女達の存在も中々に不思議存在だよな」
独り言ちながら野菜を保存庫に入れているゴーレム達を横切る。
ウルが眷属になったということはウルもあんな芸当ができるようになるのだろうか。
それを考えておかしくなりくすっと笑う。
密猟者のおかげで嫌な気分になっていたが吹き飛んだ。
気分を持ち返して森の方角へ向かう。赤い鳥居を潜り抜けると、そこには社の前で話しているウルとハクアがいた。
「ウル、ハクア」
「ヨウコさま」
『ウル? ウル? 』
「あぁ。ウルフィンガルドだから略してウルだよ」
『ウル! 』
愛称で呼ぶと子犬程度まで小さくなっているウルが駆けてきて飛び込んできた。
それをキャッチし抱きかかえているとハクアがどこか不満げな顔をしている。
子供相手に嫉妬しなくても、と苦笑い。
ゆっくりとこちらに向かってくるハクアに今の状況を伝えた。
「ウルに関してはシルバーウルフに見えるように幻術をかけようかと考えています」
「シルバーウルフに? 」
「ウルがフェンリルだと知れ渡ると面倒なことになりかねないので」
「確かに」
「ヨウコさま。冒険者ギルドで従魔登録をしましょう。それならヨウコさまがウルを連れていても不自然ではないので」
「了解。けど流石ハクアだな。よく考えている」
「そ、それほどでもないです」
ハクアは少し喜び「コホン」と軽く咳払いをして私に聞く。
「いつこの町を出ますか? 」
「それなんだよなぁ。因みにハクアは行くならどこが良い? 」
「私はやはりコメがあるという皇国イルネスでしょうか」
「私もだ」
『いるねす? どこ? 』
「この前食べた白い食べ物がある所だ」
『ウルもいく! コメ、おいしい! 』
肉とマッチしたコメが余程美味しかったのかウルは抱きかかえられている状態で暴れ出す。
流石に暴れられるとしんどいので彼女を置いて一人と一匹を見る。
「なら決定だな。できれば冒険者ギルドの依頼のついでに移動できればいいんだけど」
「外国へ行く依頼は見たことがありませんね」
「なら相乗り馬車か……。それとも依頼を受けながら町を経由しながらイルネスへ向かうかだな」
相談しながら階段を降りる。
ゴーレム達が新しい種をまいているのを横目で見ながらそうこの前へ。
「日程は早めの方がいいかもしれませんね」
「どういうことだ? 」
「その帝国とやらが子フェンリルであるウルが幻獣の森にいることを察知していたのなら、再度刺客を送り込んでくるかもしれません」
「早めに移動してその刺客とやらから逃げるということか」
「ええ。それに捕らえられた者達を放っておくとは考えられません。迎え撃っても良いのですが……」
「面倒事は却下だな。よし。ウルの登録済ませたらすぐにでも移動しよう! 」
ハクアの言葉に賛成する。
苦笑いを浮かべるハクアに私達が何を言っているのかわかっていない様子のウル。
大方の方針を決定し、ウルを残して異空間から私とハクアは外に出た。
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