第11話 飯盒炊飯をやってみる
仕事も終わりギルドへ報告する。
その後エヴァンス商会へ向かいトトさんと会った。
「コメ、ですか? 」
「ああ」
ん~、と腕を組み考えている。
いきなりコメと言われても困るだろう。
しかし親方の話でエヴァンス商会が仕入れているのは分かる。
もうすでに売り切れていたら別の商会を探さないといけないが、出来れば親方が食べているコメを使いたい。
私が考えているとトトさんがこちらを向いた。
「別大陸にもコメのようなものがあったのですかな? 」
「そんな所だ」
「なるほど。故郷の味に飢えている、といった所ですな。良いでしょう。まだ余っていることですし、コメを卸しましょう」
余っているのか。それは助かる。
感謝の言葉を告げる。
気恥ずかしいのか頭を掻くトトさんに連れられ商会館の裏側へ移動する。
大きな建物が見えて見張りの男性がこちらを向いた。
――倉庫だ。
彼はトトさんに挨拶すると倉庫を開けて私達を中へ誘導する。
私とハクアは見張りに一礼し中へ入った。
「実の所売れ行きが良くないので、こうして買ってくださる人はありがたいですね」
言いながらトトさんは光球の魔道具に魔力を流して光を灯す。
すると山積みになったコメ樽があった。
「定期的に購入するようにしているは良いもののドルド殿以外に買ってくれる方がおらず」
「……何で? 」
「さて……。ワタクシもイルネスで実食したことがあるのですが、何がいけないのか......。この国で食べると味が無くパサパサしているのです。イルネスで食べるには、それはとても美味しいものなのですがこの国ではいまいち。なのでコメが広がるわけなく……。これはいける! と意気込んで定期購入したは良いもののこの有様なのです」
苦笑いを浮かべながら「時々あることなのですがね」と皮肉って、いくついるか聞いてくる。
ハクアと相談し一先ず樽一つ頼んだ。
「ありがとうございます。エヴァンスホテルへ送ったのでよろしかったでしょうか? 」
「いやここで受け取るよ」
私の言葉に驚くトトさんだがハクアが収納を発動させてコメ樽一つ異空間に収納した。
「収納魔法?! それもこの重さを?! 」
「まぁハクアだしな」
更に驚くトトさんにハクアが少し誇らしげに胸を張りながら「終わりました」と言う。
するとトトさんは興奮した様子でこちらを向いた。
「羨ましいですな。因みに今後商人をする予定は? 」
「今の所ないな」
「商人にとって夢のような魔法。もったいないと思いますが、ライバルが出ない事に喜ぶべきか」
「はは。大袈裟な」
「大袈裟ではありませんよ。ヨウコ殿の力にハクア殿の魔法。お二人で行商すればきっと成功するでしょうねぇ」
トトさんは想像しているのか上を向いて瞳を閉じている。
流石にこのままではいけないので彼を現実に戻して倉庫を出る。
エヴァンス商会の商会館へ再度入り、他に必要な物を買っていく。
「……香辛料の桁がおかしい」
「コメ樽の百倍以上……」
「それは仕方ありませんよ」
一階のフロアで物色しているとトトさんが教えてくれる。
どうやらこの国で香辛料は貴重品扱いらしい。
「香辛料を生産している国は少ないので」
「それでこの町の食事は味が薄かったのか」
言うとトトさんは苦笑しつつ頷いた。
「代わりとして、甘く美味しいコメを流通できればと考えたのですが、中々うまくいかないものですねぇ」
無い顎鬚を擦る仕草をするトトさん。
コメを仕入れたのにはそういう理由もあったのか。
これは町だけでなく国全体薄味なのかもしれない。
それに甘いものも限定されているかもしれないな。
考えていると塩が目に入った。
値段をみて隣のトトさんに聞く。
「塩は香辛料よりも安いんだな」
「ええ。この国は海沿いにあり作る事が出来るので比較的安く手に入りますねぇ」
海があるのか。
なら魚料理もあるかもしれないな、と思いながらも買い物を済ませる。
トトさんに見送られる中、私達はタルドを引き連れて町を出た。
★
「はじめちょろちょろなかぱっぱー……。この後って何だっけ? 」
「じゅうじゅう吹いたら火を引いて、一握りのワラ燃やし、赤子泣いても蓋とるな。ですよ。ヨウコさま」
「何だそのヘンテコなうた」
「交換」で買った飯盒炊飯にコメを入れて炊いているとタルドが奇妙そうに聞いてくる。
確かにヘンテコだが炊飯の手順だ。
まさか小学生の頃にやった飯盒炊飯の実習が役に立つ時が来るとは思わなかった。
私としては塩を少量入れて塩味を効かせた方が好みなのだが、私がドワーフに振る舞う最初のコメとの事で我慢した。
歌を歌いながら右に左に体を揺らす。
変に癖になるリズムなんだよな、と心の中で苦笑しながらもハクアを見ると彼女もそれに合わせるように「なかぱっぱー」とうたいながら体を揺らしている。
無自覚に揺れている大きな尻尾がこれまた可愛らしい。
木の葉を更に追加してさらに歌う。
火を止めると「ひゅー」と音が鳴ると、タルドが吃驚して蓋を開けようとしたがそれを止める。
「開けるなって言っただろ? 」
「お、親方みたいな怒鳴り声を出したぞ?! 」
「でもダメだ。ちょい待て」
ドルドはこんな怒鳴り声をするのかと、ギャップに笑いを堪えながらもじっくり待つ。
そして出来上がり、蓋を開けた。
「「「おおおーーー」」」
米が炊けた良い匂いだ!
匂いにつられたのかタルドとハクアも私と顔を揃えて覗き込んでいる。
「ではよそいますね」
「これ全部食って良いのか? 」
「まずは三等分だ。この後も工夫しながらコメを炊くから腹は空かせておけよ? 」
「こんなに美味そうなのにまだ違う炊き方があるのか! 」
驚くタルドに「そうだ」と言っているとハクアがどんどん盛っていく。
そして木製のスプーンに手をやりホクホクご飯を口にした。
「お。うまうま」
「何だこれ?! ふっくらしてやがる。しかも甘い」
タルドが口にすると目を見開いた。
その気持ちは分かる。
オーク丼を作った人には悪いが、味や食感が全然違う。
タルドは余程興奮しているのか白米をガツガツと食べている。
一瞬でタルドはご飯を平らげてしまった。
★
「ドワーフ的にこの白米はどうなんだ? 」
食事が終わりタルドに率直な意見を聞く。すると彼は腕を組んで考える。
食事の対価が試食だからな。
真剣に考えてくれるのは嬉しい。
「……美味い。それこそ食べたことないくらいに」
「お酒とこの白米ならどちらを選びますか? 」
「……悪いが酒だな。俺達にとって命の水みたいなもんだからな」
ハクアが聞くと申し訳なさそうにタルドが言う。
酒か、と思いながらも腕を組む。
種族特性のようなものでドワーフ達はお酒が大好きだ。
それを踏まえたうえで個人の趣味に合わせるのはかなり難しい。
ここから牛丼をアレンジして、新オーク丼を作るのだが、出来れば酒を超えたいな。
いや待てよ?
「なぁタルド。酒って普通に売ってるのか? 」
「当たり前だろ? 「ドワーフいる所に酒あり」と言われるほどだ。鍛冶屋にしろ俺達のような建築にしろ、ドワーフが切り盛りしている店は、どこかしらの酒蔵と契約してるぞ? 」
何を当たり前な、と呆れられながらもその言葉にニヤリとする。
タルドに頼み私達は酒蔵に行った。
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