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トロフィーヒロイン・モンスターガール  作者: タカリ
第一章 トロフィーヒロイン・モンスターガール
8/50

8 紅一点

 【生命力強化】、【聴覚強化】、【逃げ足】、そして【精力強化】や【繁殖力強化】などなど……。

 ★の雑魚モンスターであるゴブリンからドロップするスキルカードの数々である。

 【生命力強化】はHPが増え、【聴覚強化】は斥候職なら使う場面もあるかもしれないが、ほとんどのスキルはダンジョン攻略には役に立たない。真剣に探索者を目指している生徒からすると『ゴミスキル』と言える。それがゴブリンのスキルカードだ。


「他のカードがよかった……」

(正直ちょっと欲しい……)


 軽く凹んでいる木村さんを連れて俺たちはダンジョンを奥に進む。もう二枚くらい【精力強化】がドロップしないかな。そしたら一枚持ち帰るんだが。


「次は遠藤くん、お願いできるかい?」

「はい」


 二匹目のゴブリンが現れたが遠藤くんの炎魔法一発であっさりと燃やされた。黒こげのゴブリンが倒れていた場所に青いガラス玉のようなものが転がっている。


「さすがに魔法の威力は高いね。消費MPに気をつけないといけないけどゴブリンを一撃で倒せる火力は魅力的だ。使いどころを間違えなければ大きな戦力になるだろう」

「ありがとうございます」


 ちょっとドヤ顔の遠藤くんが魔石を拾って教官に渡す。木村さんはゴブリンを倒すまで少し時間がかかっていたので一撃で倒したことを自慢に思っているんだろう。

 だけど若槻教官が言っているように魔法アクティブスキルはMP消費による回数制限があるスキルだ。MPを使い切ってしまえば戦闘能力が著しく落ちる。

 一方、木村さんはスキルを使っているように見えなかったのでMP消費はない。瞬間火力は低いけれど継戦能力という点では比べ物にならない。

 一長一短はあるが、チュートリアルダンジョンをクリアしたばかりの★のジョブに明確は優劣は存在しない。


「次は堂島くんの番だね。大丈夫かい?」

「……はい、大丈夫です」

「モンスターカードだよね! 私、使うところを見るの初めて!」

「どうせゴブリンだろ。チュートリアルダンジョンにはゴブリンしかいないんだから」


 興味津々の木村さんや馬鹿にした様子の遠藤くんに見られながら、紅雪のモンスターカードを出す。

 手の中に出現したカードを握りしめると砕け散って大量の光の粒に変わる。その光が集まって小さな女の子が姿を現した。


 長い銀髪をツインテールにし、黒いワンピースを身につけた紅瞳の美少女。一般的な醜悪なゴブリンではなく、妖精と呼ぶに相応しい神秘的な美貌。薄暗い洞窟の中で彼女の周囲だけ光り輝いているかのよう。


「マスター、ご命令を」

「――あのモンスターを倒せ」

「かしこまりました」


 紅雪がタッと軽い足音をさせて一瞬でトップスピードに達する。

 こちらにじりじりと近づいていたゴブリンが紅雪の速度に驚き戸惑い反応できずにいるが、そのままするりと懐に入り込み――手にしたナイフを一閃。


 紅雪が横を通り抜けた後、一歩、二歩とよろよろと歩いたゴブリンは、ようやく切られたことを思い出したように喉元から大量の血を噴き出し倒れ込んだ。


「……ご苦労様」


 一瞬の早業であっさりとゴブリンを倒してみせた紅雪。

 やっぱりうちの紅雪は可愛くて強くて――最高だな!!!!


 ■


「な、なんだそのモンスター……ゴブリンじゃないのか……?」


 遠藤くんと木村さんはしばし呆然としたが、ようやく衝撃から立ち直った遠藤くんが紅雪について尋ねてきた。

 本当はあまり言いふらしたくないのだが、もう見せてしまったからには仕方ない。


「この子は紅雪。星一つの【ゴブリン】じゃなくて星二つの【ハイゴブリン】なんだ」

「ハ、ハイゴブリン!? なんで星二つのカードを……まさかお前、プライベートダンジョンに潜っていたのか!?」


 俺たちの年齢だとまだ★★ランクのダンジョンには潜れない。当然★★ランクのハイゴブリンのモンスターカードも手に入れることができない。

 もしも高ランクのカードを持っている人間がいたらそいつはプライベートダンジョンでこっそり探索をしていた可能性が高い。

 そういうわけだから遠藤くんの疑いもごく当然のことだった。

 実際にはプライベートダンジョンじゃなくて別のところで手に入れたんだけどな。


「違う。紅雪を手に入れたのはチュートリアルダンジョン。紅雪はダンジョンのラスボスだったんだ」

「ラスボスのモンスターカード!? ボスからドロップしたのかよ!? 俺たちは出なかったぞ!?」

「運が良かったんだよ。【魔物使い】はジョブスキルでモンスターカードのドロップ率アップスキルもあるし……」

「だからって、こんな……! 不公平だろ……!? なんだよこれ!?」


 ドロップするかしないかは運次第。そうは言っても紅雪が素晴らしすぎて遠藤くんは納得できないようだ。

 まあ当然だな。見た目がものすごく可愛い(重要)上に、★★ランクのモンスターだ。★ランクのゴブリンなんて敵じゃない。あっという間に瞬殺できるほどの格の違いがあるのだ。


「言うほど不公平じゃないぞ。俺のジョブがまだ星一つだから、星二つの紅雪を召喚する場合『MPコストが増加する』っていうデメリットと『格上のモンスターは一体までしか召喚できない』って制限があるんだ。コストがきつくてかなりカツカツなんだよ」


 カードのランクが上位の物ほど当然性能が良いのだが、ジョブカードのランクよりも格上のランクのカードを使おうとするとコストが増加してしまう。モンスターカードだけではなく装備カードやスキルカードも同様だ。

 さらにランク格差が大きくなればなるほどコストが増加していくのでランクが二つ以上離れると使用できなくなると言われている。


 そういうわけで俺が使っている紅雪のコストは非常に重く、装備カードやスキルカードを減らさないといけないわけだ。

 魔物使いジョブは本体の戦闘能力が低いので、このデメリットはけっこうきつい。本体というわかりやすい弱点を強化できないんだ。


 とまあ、これだけの犠牲を払ってようやく俺は紅雪を使っているわけで。

 簡単に不公平とか言ってほしくないんだが、いくら説明しても遠藤くんには通じなさそうだった。

 きっと友人グループに戻ったら紅雪のことを話すだろうし、余計なトラブルが舞い込んで来ないことを祈るしかないな……。

マサル「かー! うちの紅雪が魅力的すぎて辛いわー! 譲ってくれと言われたら困るなー! もう名付けしちゃったから譲れないんだけどなー!」

遠藤「見せびらかしやがって……! この野郎……!」


こんな感じ?

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