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トロフィーヒロイン・モンスターガール  作者: タカリ
第一章 トロフィーヒロイン・モンスターガール
41/50

41 機械のダンジョン(★★)・2回目

「いた、モンスターだ!」

「任せて!」


 通路の先でこっりに銃口を向けている三体の機械型モンスター。わずかな動きで照準が合わさりレーザーの発射準備に入ったのがわかる。

 走りながらわたしは体内の魔力を練り上げていく。ご主人さまから貰ったカードが私の中の力と共鳴する。お腹の奥から熱が溢れ出して更なる力を発揮した。


「【眷属召喚<赤>】!!」


 わたしを守るように三体の赤いコートを着たハイゴブリン――レッドキャップ(・・・・・・・)たちが出現した。

 照射されたレーザーがわたしの眷属たちの体に突き刺さり、肉が焦げる匂いがした。


「行くわよ!!」

「「「ウオオオオオオオオ!!!!」」」


 だけど彼らは倒れない。殺気を漲らせて攻撃してきた相手を睨みつける。

 わたしを守るように陣形を組んだまま走り出し、相手の攻撃を何度受けても足を止めることはない。そうして敵との距離が十分に近づいたのを見計らって、わたしは真っ赤な盾から躍り出た。


 レッドキャップたちの体を足場にし、壁を蹴り、敵モンスターに切りかかる。立体的な動きで目まぐるしく動くわたしに照準が追い付いていない。すでに手が届く距離。ここまで近づいてしまえば危険度は大いに下がる。

 こいつら接近戦には対応していないからカモなのよね。

 両手のナイフを銃口に叩きつけ、一抱えほどの大きさの胴体部分を殴りつけた。眷属たちも傷ついた体で攻撃に加わると、ほとんど間をおかずに倒してしまった。


「お疲れ、赤華! 凄くいい動きだったぞ!」

「このくらい当然よ、ご主人さまに貰ったプレゼントだもの♪」


 ご主人さまが始めたボスマラソンによって集めたカード。

 その中にあった【眷属召喚(★★)】のスキルカードをわたしは渡されていた。



 【眷属召喚】のカードは魔力を使って眷属を召喚できるスキル。

 このスキルをご主人さまが使えばご主人さまのMPが減るけど、わたしが使えばわたしの魔力で眷属を召喚できる。

 だからご主人さまは、ご主人さまのMPを節約するために【眷属召喚】のカードを【わたし専用】のカードにしてくれた。ただのモンスターカードに、貴重なスキルカードを【個人登録】してくれた。


 嬉しかった。

 わたしのためだけのカード。世界中にありふれている無数の【眷属召喚】のカードの中から、たった一つしか存在しないわたしのスキル。

 だからだろうか。この【眷属召喚】のスキルがいつの間にか【眷属召喚<赤>】のスキルに変異していたのは。ランクは変わらず★★のまま効果だけが変わっていた。


 【眷属召喚(★★)】:眷属ゴブリンを複数召喚する

 【眷属召喚<赤>(★★)】:眷属レッドキャップを召喚する


 変異した【眷属召喚<赤>】のスキルとわたしの持っている【繁殖力強化】が合わさってレッドキャップを一度に三体召喚できるようになった。

 ただのゴブリンと比べると格段にステータスが高い。タフだから攻撃にもよく耐えるし、素早さもわたしほどじゃないけど悪くはない。

 それになにより召喚したレッドキャップたちは使い捨ての肉壁にしても文句も言わない。成長をしない代わりにロストもしない。ゴブリンのモンスターカードを集めて使うよりもよっぽど便利だった。



 倒したモンスターがドロップした魔石と素材を拾う。

 毎日わたしの魔力が尽きるまで、召喚した眷属のレッドキャップが尽きるまでモンスターを狩っている。

 最初の頃はそれでも収穫は少なかったけど集めた魔石をわたしが優先的に貰っているので毎日ちょっとずつ魔力が伸びていた。

 今は一日十個くらい魔石のドロップがあるけど、これからもっと増えるのは間違いない。

 でも、わたしの分だけじゃなく、ご主人さまやお姉さまの分の魔石も必要だし、もっともっとがんばらないといけないわね。


 ■


「また後でね、ご主人さま」

「ああ。部屋についたら呼び出すよ。また後でな」


 戦いが終わった後はダンジョンの中で一旦ご主人さまとはお別れ。

 外を出歩いてはいけないと言われているけど、離れ離れになるのは寂しい。お姉さまもすまし顔だけど本当は寂しがっている。


 カードに戻るとわたしの意識は途切れる。

 けど、名前をつけてもらった時から、少しだけ外の状況が分かるようになってきた。

 ご主人さまの見ているもの、聞いているものがぼんやりとだけど伝わってくる。

 寝る時に微睡んでいるように、夢現であやふな感覚だけど、それでも何もわからないよりはいい。


 学生寮に戻る。ご主人さまの家の方が広かったしいろんな部屋を自由に使えて良かった。さすがに三人だと狭いわ。


「あ、赤華。せめてベッドまで待ってくれ……」

「ダ~メ♪ もう待てないわ、ご主人さま♪」


 お風呂タイム。ちょっと狭いけど三人でくっついて入る。ご主人さまの体をお姉さまと一緒に隅々まで洗ってあげるの。楽しいけどちょっと我慢が利かなくなってくる。


「あのスキルを使うとここが熱くなるんですもの……ね、ご主人さま……いいでしょ?」


 【眷属召喚】と一緒に発動する【繁殖力強化】のスキル。

 このスキルを使うと体の奥に熱が籠っていくのよね。

 戦闘中は別のこと――戦いの楽しさ――に気を取られているけど、安全な場所に戻ってくると溢れてきてしまう。

 ちゃっかり参加しているお姉さまと一緒にご主人さまを押し倒し、ベッドの上で押し倒されて……。


 ご主人さまの温もりを感じながらわたしは夢の中に落ちていく。寂しさはなく、満たされた心地よさに目を閉じる。

 ああ……ご主人さまの子供、産みたいなぁ……。

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