33 ★★ランクアップ
ランクアップ。
単に★ダンジョンを攻略して、★★ランクを探索可能になったというだけではない。
自分と同ランクのダンジョンを始めて攻略した場合、ランクアップが発生する。基礎ステータスが大幅に上昇し、新しいジョブスキルを習得して上位ランクのダンジョンでも活動できるようになるのだ。
そういうわけで俺のジョブ、魔物使いも★★ランクにランクアップした。
【ジョブ】魔物使い(★★)
【ジョブスキル】
・魔物使役術:①モンスターカードのドロップ率アップ ②モンスターカードのコスト軽減 ③使役モンスターの強化
・魔力強化:MPが増える。
・特殊使役術(撃破):『単独撃破』or『MVP』を獲得したモンスターに対し補正大。
今回のランクアップでステータスが伸びたが、一番の目玉は新しく習得した【特殊使役術(撃破)】というスキルだろう。
この【特殊使役術】というのは魔物使いの基本となる【魔物使役術】に補正がかかるスキルで、特定条件を満たした場合にのみ効果を発する。
【特殊使役術】はさまざまな種類が確認されているらしく、(女性)(男性)といった性別が条件だったり、(植物)(鳥)といった種族だったり、個人個人によって変わるらしい。また、基本的に【特殊使役術】のスキルは一人につき一種類しか覚えないと言われている。
つまり俺がこれから先【特殊使役術(女性)】を覚える可能性は0というわけだ。……ちょっと残念。
俺が覚えた【特殊使役術(撃破)】の条件は『単独撃破』か、集団戦の場合は『MVP』――最も戦闘に対して貢献度が高い場合に発動するというスキルだった。
特に気になるのは『単独撃破』という条件だが、どうやら『俺が召喚したモンスターは俺の武器扱い』になるらしい。つまり紅雪や赤ずきんを呼び出して普通に戦っているだけで条件が満たせるので特に気にしなくていいだろう。
ただ集団戦、他の人間とパーティを組んだ時は要注意だ。俺と俺の召喚したモンスターが一番活躍しないと条件を満たせない。そうなるとモンスターカードのドロップ率が下がるし、もしもカードを手に入れても召喚時のコスト軽減や強化の対象からも外れてしまう。
レアモンスターを相手にする時にこの効果の対象から外れてしまったら悔やんでも悔やみきれないだろう。そうそうないと思うが他の人間とパーティを組む時は要注意だ。
それともう一つの大きなデメリットは『他の人間からモンスターカードを購入しても効果の対象にならない』という点だ。
魔物使いは資金さえあれば強力なモンスターカードを買って強くなれる。ゴブリン三匹を連れていた加藤のように、普通の魔物使いならお店やオークションで買えばいい。
だが、俺の場合は『自分で撃破したモンスター』という条件がつけられている。どれだけ強力なモンスターカードが売っていても、良いスキルを持っているモンスターカードであっても【特殊使役術】の対象にならない。
もちろん効果対象外のモンスターでも使えないことはないが、それだと何だか勿体ない気分になる。どうせならちゃんと【特殊使役術】がかかる仲間を集めたい。
そういうわけで、俺は自主的に【モンスターカードの購入縛り】でダンジョンに挑まないといけなくなる。
これはかなりきついデメリットと言えた。
■
「今の堂島くんだと【洞窟のダンジョン(★★)】は難しいね」
「どうしてですか? 紅雪や赤ずきんなら同じ★★ランクだし、【特殊使役術】の補正込みならまず負けませんよ?」
【洞窟のダンジョン(★)】のボスを倒し、【洞窟のダンジョン(★★)】に挑めるようになった俺を若槻教官が止めた。
俺たちがこのまま【洞窟のダンジョン(★★)】に挑むのは無謀だと。
「前にも言ったよね、★★ランクからは罠が出てくるって。【洞窟のダンジョン(★★)】にはハイゴブリンたちが出現するんだけど、その中に【ハイゴブリン・シーフ】とか【ハイゴブリン・トラッパー】が湧くんだ。罠対策ができないと危険なんだよ」
「あっ! ……そうか、罠があったんだ……」
俺はすっかり忘れていたが★★ランクのダンジョンには罠が出てくる。特にハイゴブリンのような知性のあるモンスターが湧くダンジョンではモンスターが罠を仕掛けることがあって、【洞窟のダンジョン(★★)】には多くの罠が存在しているらしい。
斥候系のジョブかスキルを持っていないと一気に難易度が上がってしまう。それが【洞窟のダンジョン(★★)】だった。
「一番簡単なのは斥候系のスキルを持っているゴブリン・シーフなんかを購入することなんだけど……」
「……その場合は、俺のスキルの対象にならないですね」
残念ながら購入したモンスターは【特殊召喚術(撃破)】の対象外だ。
スキル効果が乗らないことを承知でゴブリン・シーフを買うこともできるが、それは何だか勿体ない。
だが、斥候系スキル持ちのゴブリンが出てくるまでゴブリンを狩りまくるとなると非常に時間がかかるだろう。モンスターが覚えているスキルはランダムだから一点狙いは大変だ。
折角覚えた【特殊召喚術】がまさか早速こんな形でネックになるとは思いもしなかった。
妥協して購入するか、自力でドロップするまでゴブリンを殲滅するか、悩んでいる俺に教官が説明を続けた。
「そういうわけだから、堂島くんは【洞窟のダンジョン】じゃなくて別のダンジョンに挑んだ方がいいと思うんだよね。この近所のダンジョンのデータはあるから、良さそうなところを探してみようか」
相性の悪いダンジョンを避けて相性のいいダンジョンを探す。
その練習をしてみようと言って、若槻教官は俺の目の前に大量の紙を広げたのだった。




