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トロフィーヒロイン・モンスターガール  作者: タカリ
第一章 トロフィーヒロイン・モンスターガール
13/50

13 ユニーク

 ソロでダンジョン探索を始めて数日。特に問題も発生せず順調に探索を進めていた。


「スカウト系は感覚が鋭くなるんだけど方向感覚も鋭くなるんだよね。だから迷路みたいな複雑なダンジョンだとスカウト系のジョブがいると迷わないですむから重宝するよ」

「★★からはダンジョンに罠が設置されると聞きましたけど、パーティにスカウトは必須じゃないんですか?」

「それはダンジョン次第だね。罠が全然ない代わりに出てくるモンスターが強力なダンジョンもあれば、モンスターがいないのに罠がてんこ盛りで隠し部屋に高性能な装備やアイテムが隠されているダンジョンもある。自分のパーティにあったダンジョンを見つけると攻略は一気に楽になるよ」

「隠し部屋ってこの洞窟にはあるんですか?」

「ここではまだ発見報告はないね。生徒の誰かが見つけたら第一号さ」


 若槻教官と二人きりという状況でだんまりを決め込むわけにもいかず探索中に雑談をしていたのだが、いろいろと現場の生の情報を教えてくれるので参考になることが多かった。

 通常のパーティがどんな風に探索をしているのかという話は、紅雪と二人で手探りで探索をしている俺にはとても新鮮に聞こえた。【魔物使い】以外のジョブの話もいろんなジョブが存在していて面白かった。


「そういえば若槻教官のジョブって何なんですか?」

「堂島くんは何だと思う?」


 最初の自己紹介の時に教えてもらえなかったな、とふと思って聞いたところ、逆に聞き返されてしまった。


「そうですね……」


 隣を歩く若槻教官は鎧姿に剣を装備した典型的な剣士スタイルだった。【剣士】の可能性もあるが、若槻教官を見ていると既視感を感じる時があった。


「もしかして【勇者】ですか?」

「……」


 脳裏に浮かんだジョブを口にすると若槻教官は目を丸くした。


「当たりですか?」

「……いや、半分当たりで半分外れかな」

「えっ」


 てっきり【勇者】だと思ったけど……半分?


「実は僕の最初のジョブは【勇者】だったんだ。でも後から変わって今は【英雄】のジョブについているんだよ」

「【英雄】……そんなジョブがあるんですか」

「うん。どうやらちょっと特殊なジョブらしい。まだジョブカードも発見されていないしね」

「もしかしてネットで噂されている『ユニークジョブ』って奴ですか?」


 ネットの掲示板でちょくちょく見かける言葉が『ユニーク』だ。『ユニークジョブ』『ユニークスキル』『ユニーク装備』『ユニークモンスター』……何でも『ユニーク』は出てくる。

 うちの紅雪もとても珍しい種族なのでもしかしたら『ユニークモンスター』ではないかと考えたことがあった。ネットの掲示板でも見かけないのでレアなのは間違いないだろう。


「『ユニークジョブ』ね。少なくとも【英雄】は違うよ。僕の知り合いに三人いるから」

「……けっこう多いですね」

「夢がない話だけど実際はそんなものだよ。珍しいレアなスキルとか装備とかもあるけど、そのうち二つ目三つ目がポロっと出てきたりね。僕が知っている中じゃ本当に【唯一ユニーク】なものは見たことないね」

「そうですか……」


 若槻教官がこう言うってことは『紅雪と同じモンスター』もどこかに存在しているんだろう。

 うちの紅雪は特別なんだと言いたい気持ちと、やっぱりそんなものだよねという残念な気持ちが混ざってモヤモヤする。


「僕も最初は【勇者】だなんだと言われて自分が特別な人間だと思った口だけどね。実際には僕くらいの人間は世の中にいっぱいいるんだよ」


 そう言って笑う若槻教官の笑顔は今までの爽やかな笑顔とはどこか違っていた。


 ■


 そんなこんなで特に問題もなく付き添い期間が終わり、紅雪と一緒にダンジョンに潜っていたわけだが。


「マスター。スキルカードはまだ使えないから魔石と交換する予定だったのではないですか?」

「う、うん。まあ、そうなんだけどな。ただ、同じスキルカードが手に入るとは限らないし……今のうちの確保しておく方がいいかなぁと」

「確保しておいていつ使うんですか?」

「うっ、そ、それは……予定はないけど……」

「宝の持ち腐れですよ。それよりも魔石に交換して探索効率をあげた方がいいと思います」

「くっ……! 紅雪が正論で殴ってくる……! だが、だが……! それでも俺は――」


 スキルカードを抱きしめて紅雪にはっきりと言ってやる。


「【繁殖力強化】を売る気はない!! これは取っておく!! いつか使うかもしれないから確保する!!!」

「【繁殖力強化】ってだからいつ使うんですか! 使わないでしょ! いいから売りに行きますよ!」

「やだ!!!!!!!!!!!!」


 本当は【精力強化】が欲しかったけど出ないんだもの!!!

 せめて似たようなスキルの【繁殖力強化】スキルくらい確保したいんだよ!!!

 これは売らない! 決定!


「もう! マスターってば! 私はあなたに早く強くなってほしいのに! そのスキルカードを渡してください!」


 スキルカードを取り上げようとする紅雪の魔の手から、何とか俺は【繁殖力強化】を守りきったのだった。

 ……使い道は全く思い浮かばないけどな!

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