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神域遺物の蒐集者  作者: 東條九音
学園都市の***
26/27

空間を操る者、帰りたい世界#04

「このまま隠れて見てようか」


ツムギは物陰に隠れたまま、魔導書を取り出し開くと呪文を唱える。


「我を不可視化せよ、インビジブル」


ツムギは姿が消えた事を確認すると、魔導書に栞を挟んでポケットへセットする。そして戦闘を隠れて観察し始める。



            ◆◇◆◇◆



「はぁ、はぁ、はふぅ」


女の子と龍が相対していた。どちらも疲労の色が見える。


『矮小なる人の子よ!偉大なる俺様に牙を剥いたこと、 悔い改めるがいい!さすれば、俺様の』


「必要なーい。わたしは、あなたを倒すの!」


『ほざけ!』


龍が女の子へ向けて炎を吐く。

女の子は炎が当たる寸前に、消えると龍の頭上に現れる。龍の頭へ手をかざすと辺りの空間が捻れていく。

しかし龍も黙ってはいない。女の子の方へ飛び上がり体当たりをして、空間が捻れている範囲を離脱する。そしての勢いのままに女の子に噛みつこうとした。


「くっ!空間跳躍(リープ)!」


女の子は体当たり受けた瞬間に、空間の捻れによる攻撃をキャンセルし、紙を貼り付ける。そして龍が噛みつこうとしている事を悟り、魔法を発動させる事で龍の噛みつきを緊急回避した。


『ふっふっふ!なるほど、ようやくキサマの手の内がわかってきたぞ!キサマ、空間魔法の魔法使いか』


「ざーんねん!わたーしは魔導師だよ」


『っ!』


女の子が龍に貼り付けた紙が起動して、龍の鱗が一部消失し肌があらわになる。

女の子が言った魔導師とは魔法と魔術を扱う者の事である。魔法は主に自身固有の能力。詠唱やトリガーとなる言葉や動作で使用するのが一般的だが、稀に感覚で扱う無詠唱の人物がいる。そして魔法を使う者を『魔法使い』『魔法師』と呼ぶ。魔術は主に技術を形にした物。媒介となる物に魔力を通して発動させる。そのため誰でも扱えるが、作るの事が出来る人物は限られてくる。なので『魔術使い』『魔術師』と呼ばれるのは、物を作れる少数の人物たちの事を言う。


「ウィークポイント完成!」


『ほざけ!』


龍が再び女の子へ向けて炎のブレスを吐く。女の子は消える。


『そこだ!』


龍は自身の背後に女の子が移動したと予想し尾で払う。が女の子はそこにいなかった。



            ◆◇◆◇◆



「そうなんどーも、同じ事するわけないでーしょ」


女の子はツムギの隠れる物陰近くに転移してきていた。


「見てないで、助けてくれーる?」


ツムギは魔導書から栞を抜きインビジブルを解く。


「何で分かったのかな、イースロッテ?」


「私は時空間魔導師。姿が見えなくてーも、空間の揺らぎでわかるーの」


「私たちは敵じゃないの?」


「んー、時とー場合にーよるんじゃなぁーい?今はー、敵ではないよ」


(これ以上問答していたら、三つ巴になるぞ。協力関係を結べるなら結んでおけ)

「……分かったわ。何をすればいい?」


「だったーら、鱗を剥いだところに飛ばすかーら、一撃で仕留めーて」


「一撃……ね。K」


ツムギは懐から光る球体を取り出し詠唱する。


「龍殺しの力、ドラゴンスレイヤー。依るべに従い顕現せよ。重纏」


光る球体は分散しツムギが装備する籠手に纏わりつく。


『そこか!』


イースロッテの事を見失っていた龍が、イースロッテを見つけ急速に接近してくる。


「飛ばすよ」


イースロッテはツムギに触れると、ツムギを少し未来へと転移させる。そして自身はその場に残る。


『これで終わりだ!』


龍がイースロッテに噛みつこうと口を広げる。がそこで龍の動きが止まる。


『う、動けん、だと』


「そこにーは、罠を設置したーんだよ」


イースロッテは短時間の座標固定の罠を仕掛けていた。しかし短時間あっても動きが止まれば十分であった。飛ばされたツムギが龍の鱗が剥がれた部分に現れる。


「はぁぁぁー!」


ツムギがドラゴンスレイヤーの力を付与した炎竜の籠手で、龍を殴打していく。


火炎竜拳(かえんりゅうけん)!」


最後に一発力強く叩き込む。龍は地に強く打ち付けられ、気絶していた。


(ドラゴン系の武具にドラゴンスレイヤーを乗せると、火力がうまく出ないな。コツが必要そうだ)

「気絶はさせたけど、倒しきるまでは、いかなかったわ!」


「十分だーよ。あとは、わたーしが」


そう言うとイースロッテは龍の胴体へ見つめ場所を絞ると、空間を捻れさせ心臓を潰し、魔石を自身の手元に転移させる。


「えっぐ……」


「素材はあげーるよ。じゃーね」


そう言ってイースロッテはどこかへ転移して行った。


「……処理を丸投げされた」


ツムギは武装を完全解除すると、死した龍の素材を集め始めた。


「私、なんとなく想定ついた」

(奇遇だな。俺もだ。それにイースロッテとは案外、会話すれば友好関係は築ける……かもな)

「未来の私、あとは任せた」



不定期投稿してますのでブックマーク登録して、続きをお待ちいただけると幸いです。

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