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神域遺物の蒐集者  作者: 東條九音
蒐集者の日常
18/27

神域遺物の収集、気ままな一人旅#01

「相変わらずモンスターが多いなぁ」


ツムギは日ノ本の島国の中心島、関東の島に存在するダンジョン、秋ノ葉(あきのは)迷宮へやって来ていた。


(都市型ダンジョンであり、都市に巣食うは幻影人。人形のモンスターだと相手しにくいか?)

「そんな事は無いけど……多いのが面倒だわ」

(ダンジョンはそんなもんだろ。むしろ幻影人以外が出て来たら本番だ。数だけで強くはない幻影人は、サクッと片付けないと)

「言ってたら出て来たね……あれは?」

(毛玉……いや、羊か。それならオゥタムシープだな。攻撃は頭突き、噛みつき、綿毛操作)


冷静に分析しているツムギにオゥタムシープは突進し接近していた。


「羊に羊をってね!アリエス!」


ツムギは魔導書(ラノベ)を取り出し開くと能力を解放する。


「リフレクション!」


鏡の様な壁が現れ突進を受け止め、その勢いをそのまま跳ね返した。


「やっぱり技名を口に出す方が、魔力消費量が少ないし安定する」

(イメージ制御は感覚で消費するから、慣れてないと大量に消費するんだよ。と、次くるぞ)


気付くとオゥタムシープが再度、突進を仕掛けていた。


「えっと、こうかな?」


ツムギはオゥタムシープへ向かって火球を放つ。放たれた火球はオゥタムシープに当たり燃え上がる。しばらくすると炎が消えた。そしてモンスターは霧散しその場に魔石が落ちる。


「ドロップあり。当たりだね」

(無詠唱の火球はオーバーキルだろ?)

「当たりを喜びましょうよ~。それに十二星座のヤツは、基本詠唱が無いじゃない」

(星座になぞられた眷属獣(けんぞくじゅう)たちの力と、巫女の武器を行使する魔導書。眷属獣は本能で力を制御できているし、そもそも眷属獣の力を使うには、膨大な魔力が必要だ)

「魔力がっつり持ってくよね~。レグルスを宿した時、そうだった」

(今回は宿さず使ったから扱いやすかっただろ?)

「そうだね……っと、次来たよ」

(幻影人だな。こいつを倒したら、結界を張って休憩にするか)

「なら一撃で決めよう!」


ツムギは一度魔導書を閉じて開き直し、別の能力を解放する。


「レグルス!雷光(らいこう)よ!」


ツムギの手から放たれた雷光が幻影人へ直撃し消滅する。


(光だけでも充分なのに雷も加えた、雷光ってオーバーキルだろう)

「さぁそんな事より休みましょう♪」




           ◆◇◆◇◆




(妙だな……)


休憩を終えて探索を続けるツムギ。休憩前に比べ、休憩後の探索ではモンスターどころか幻影人ですら一切、遭遇していない事に違和感を感じていた。


「休憩前は、うんざりするぐらい遭遇したのにね」

(いや~な感じがするな)

「んー、ここの探索やめて、一度拠点の図書館に行く?」

(そうす……いや、何か居るぞ)

「えっ?」


ツムギは前方をよくよく見てみる。すると人影のようなものを発見する。


「幻影人かな?」

(そうだろうけど……なんか違和感が)


人影が動きを見せる。右手を前に突き出したかと思えば、いつの間にか本の形をした黒いものを持っている。


(まずい!動け!!)


ツムギは人影の動きを見て咄嗟に右へ動く。するとツムギが先ほどまで立っていた地面から、土の杭の様なものが出現した。動くのが遅れていたらツムギは、串刺しになっているところだった。


「幻影人にしては強そうね……」

(なるほど、ファントムだな)

「ファントム?幻影人じゃないの?」

(幻影人の上位種。ネームドモンスターだ)

「強さは?」

(戦ってみるまでは分からん。けど)

「けど?」

(間違いなく手強い!)


ファントムは続いてカードのような物を手にする。そのカードは鈍く光を放つ。

ツムギは即座に魔導書を取り出し開くと、二刀の剣を出し栞を挟み魔導書はポケットへセットする。

ファントムの持つカードが消え、ツムギの上空に剣が並んでいく。


「えぇ~っと、剣の雨、かな。これ」

(剣を回転させて防げ!)


剣が雨の様に降りだす寸前に、ツムギは手にした剣を旋回させて盾にして攻撃を防ぐ。


「魔導書の選択ミスかな、これは……」

(切り替える隙があればな……開いた魔導書は『仮想世界の黒き英雄譚―(けん)英雄(えいゆう)』か)

「接近さえ出来れば……」


ツムギがそう言ってると丁度、剣の雨が止んだ。ツムギはこの隙を逃さず攻勢に出る。姿勢を低くファントムへ向けて地を蹴り走り出す。

ファントムは再びカードを手するとそれは鈍く光る。するとカードが消え、虚空から鎖が現れツムギを捕らえようと放たれる。

ツムギは左手の剣をブーメランの様に投げ放つ。回転して飛んでいく剣は、放たれた鎖に絡み付きツムギの身を守る。

鎖が絡み付いている間にツムギはファントムへ接近し、自身の攻撃の射程に捉えた。


(突進技射程内だ!)

「はあああっ!」


右手引き絞り突進の勢いと共に突きをファントムに向かって放つ。

ファントムは突きが当たる寸前に手をかざすと黒い本が現れる。そしてその本がツムギの攻撃を防ぐ盾となった。


「ここ!!」


防がれるや否や剣を手放し、セットした魔導書を取り出し栞を抜く。すると鎖に絡まっていた剣と黒い本に突き刺さった剣は消えてなくなる。そして魔導書の別のページを開くと細剣《白日(はくじつ)》を取り出し、栞を挟みポケットへセットする。

一方ファントムは黒い本を開く。すると火球が現れ、ツムギへと放たれる。


「やああっ!」


ツムギは火球を切り裂き、2連撃の突きを放つ。今度の突きは防がれる事もなくヒットする。

2連撃を受けたファントムは退けぞり距離を取ろうとする。


「逃がさない!」


ツムギは逃すまいと斬撃と突きを組み合わせた連撃を放つ。

ファントムは連撃を受けつつ一枚のカードを使用した。するとツムギの動きが停止する。


「なっ!動けない!?」


ファントムは黒い本を開くと風の音がするも目に見える変化はない。


「ぐっ……!!」


ヒュン、と言う音がしたとかと思うと動けずにいるツムギは声を上げる。ファントムは不可視の弾丸を撃ち込んだのであった。


(風の音に見えない攻撃……エアバレットか!)

「動ける!」


動ける事に気付くとツムギはファントムとの距離をとり分析を始める。


「風ならウインドバレットじゃないの?」

(ウインドの風系統は視覚的に緑っぽく見える。一方でエアは無系統。色は無色だ)

「あ~なるほど。さっきは何も無かったから」

(で、どうする?相手の行動パターンとしては)

「黒い本とカードの交互に使用した攻撃……」

(主に本が攻撃、カードがデバフ系統……こちらは連撃向きの細剣、白日)

「なら連撃決めるしかないでしょ」


ツムギは地を蹴りファントムへ向けて走り出す。

ファントムはカードを前方に掲げた。すると鈍く光りを放ちカードが消える。


(メダル?)


カードの代わりにファントムの手元に現れたのは一枚のメダル。ファントムはそのメダルを走るツムギの足へ向けて撃ち出す。


「ちょっ!?」


ツムギは咄嗟に跳び上がり、メダルを避ける。が、それは罠であった。

メダルを撃ち出して直ぐにファントムは黒い本が開かれた。跳び上がったツムギを囲むように無数の風の刃が現れる。ツムギは気付くもなすすべがなく風の刃が直撃する。


「けほ……」

(コートの性能に助けられたな)

「言うて全弾命中、めっちゃ痛い」

(空中に逃げたら的だわな)

「むー、反撃!」


再度走り出しファントムを射程に捉えると力強く地を蹴り一気に詰めると、渾身の突きを放つ。そしてその続けざまに突きの連撃を行う。


(このまま刈り取れ!)

「はあああっ!」


ファントムはカードを使用しようとするが、ツムギの突きからの斬り払いによってカードを取り落とす。ツムギはこの機を逃さず攻め続ける。

やがてファントムは力尽きたのかバラバラと崩れ去り、その場には大きめの魔石と魔導書が残った。


「勝った……のかな?」

(戦利品が目の前にあるし、勝ったろ)

「そっ……か。はぁ~疲れた」


ツムギは武装を解除してその場に座り込む。そして戦利品を回収すると魔導書を確かめる。


「『仮想世界(かそうせかい)(くろ)英雄(えいゆう)妖精(ようせい)(しるべ)』だって……初入手だね。版は……初版!よっしゃ~♪」

(『剣の英雄』に『妖精の導』、他にもありそうだな……)

「そうね。けど取り敢えず拠点に戻って、本の分析をしようか♪」

(……新しい本の事しか、眼中に無いな。ま、確かに引き上げ時か……)


ツムギは少し休憩をしてから、ダンジョンから脱出し自身の拠点へ向かうのであった。



不定期投稿してますのでブックマーク登録して、続きをお待ちいただけると幸いです。

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