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神域遺物の蒐集者  作者: 東條九音
神域遺物の略奪者
15/27

白銀の神滅器、奪われる魔導書#03-1

ツムギが閉じ込められたドームの前に雪姫を持ち立ついのり。


「はぁあああ!」


雪姫を回転させドームへ深く突き刺す。するとドームは崩れていき、中から拘束が解かれた横たわるツムギが現れる。


「けほっ、けほっ……あー、助かったよいのり」


「どういたしまして、先生。と言うか大丈夫ですか」


いのりが心配そうに訊ねると、ツムギは土を払いながら答えていく。


「ん~だいじょばない。取り返すよ魔導書は。まぁいのり頼みになるけれど……。いのりは?ケイオスの事何か分かった?」


「そうですね……ケイオス、彼女は悪い娘じゃあ無さそうです。荊の首輪を装着させて、無理矢理に操っている感じです。まぁ精神支配の抵抗力が強いみたいで、完全に操れていないみたいですけど」


(それでまだ意識があるって事か)

「なるほどね」


「それに、やっぱり先生に何処と無くそっくりな気がしました」


(そっくり、かあ。悪い娘では無さそうなら、助けて話をつけるのが手っ取り早いか?)

「……そーだね。どう転ぶか分からないけど、ケイオスを助けてみようか」


「本気、ですか先生。一応素性の知れない敵の一人ですよ?」


「とか言いつついのり。君、嬉しそうな表情してるよ?」


「えっ、そ、そう見えますか?」


ツムギの言葉に動揺してか、いのりは自身の頬に触れる。


「一応とか言ってる時点で、本音は助けたい、って事でしょ」


「あはは……。そーですね。彼女は操られながらも、チョーカーを外して、そう言いました。たぶん彼女は助けを求めている」


「……まぁそうだね。うん、じゃあ行こうか」


「追跡はしてますけど……先生。動けるんですか?」


いのりは心配そうにツムギに訊ねた。


「問題なし、かな。動ける程度には回復してるよ」


「ほんとですか?そんなに時間、経ってないですよね。無理してません?」


「信用ないにゃ~。じゃあ、実際にタネを見せようか」


ツムギは懐から一冊の淡く光る魔導書(ラノベ)を取り出す。開くと魔導書はカラフルな光を放ち始めた。


「何ですかこの魔導書?」


「『九の女神から始まる物語』って言う魔導書。コレはかなり珍しい魔導書で、常時発動型支援系。閉じた状態だと、少し能力向上、オート回復等々。開いて使用すれば使用効果の即効。で、今発動させたのは各種回復」


「つまり魔力を完全回復したという事ですか?」


「Yes!さてと、じゃあ今度こそ案内よろしく」


ツムギは魔導書をしまうと、改めていのりに案内を頼んだ。


「分かりました」


素直に返事をして、二人はテイカーたちの後を追い始める。いのりはツムギにコレクションついて疑問を訊ねる。


「そう言えば先生、取られた魔導書って?」


「複数持っているうちの一つ。初版では無いけれど、私の大切な一冊」

(第6版は雷光系統で、使い方がシンプルで重宝するんだよなあ)


「先生の夢って確か……初版の魔導書をコレクションする、でしたよね」


「神域遺物を集める事が使命、個人的には初版の魔導書を、って感じだよ」


「使命、ですか?」


「私が永久(とわ)を生きている理由だよ。まぁ、気にしなくていいよ」

(永久、とか失言じゃあないか?)


「……そう言えば先生って、昔から変わらないですよね。不老不死かってぐらい」


(ほらな。まぁ親しい相手に隠してる事でもないが……どうする?)

「……」


「先生?」


「あぁいや、テイカーたちは近いかい?」

(……いのりには、まだ伝えないって事か)


「あ、はい。ちょっと待って下さい」


いのりは後を追わせている式神との距離を確認する。


「近いです!」


(捕らえた!コレは追ってきてるとは、思っても無いな)

「K。こっちも捕捉した!」


「作戦は?」


「ケイオスは私が解放する。いのりはテイカーから魔導書を奪い返して」


「了解です。本気で良いんですよね!」


「K!略奪者に目に物見せてやるといい」


ツムギは『九の女神から始まる物語』の魔導書をポケットへセットし、もう一冊を取り出し開くと複数のクナイを顕現させる。


「じゃあ、スパッと決めるよ!」


二冊目に栞を挟みポケットへセットし、テイカーたちへ瞬く間に接近する。

ケイオスを射程に捕らえクナイを一刀投げ放つ。ケイオスは飛来物に気付き降下して回避する。地に降りテイカーを放した。ケイオスの突然の行動にテイカーは怒鳴った。


「おい!何で降りた!」


「攻撃」


「はぁ!?」


テイカーは慌てて周囲を警戒する。そこへいのりがテイカーに強襲を仕掛ける。テイカーは寸前で気付き、収用札から盾を出し受けるがケイオスと引き離される。

その場に残されたケイオスとツムギは対峙する。


「……」


「改めて対峙すると……」

(ホムンクルス、だな。ベースは)

「私、なのね」

(分析結果、一致点が多く見られる。つまるところ、妹、と言う位置付けだな)


「……」


ケイオスが動く。どうやらテイカーの命令、離脱を実行するために合流しようとしていると様であった。


「分断したんだから、行かせる訳ないよ!」


ツムギはクナイを方々へ投げ放ちケイオスの行く手を妨害する。


「ハッ!」


ケイオスはクナイを容易に避けるが、命令遂行の為にはツムギが邪魔になると判断したのだろう。両手を金色(こんじき)の手刀にしツムギへ迫る。ツムギは手刀にクナイで応戦する。


「はぁあああ!」


「ッ!」


一撃の重さと先手を取った事で優位に攻めていたはずのケイオスが押され始め、いつしかツムギの手数の多さにケイオスは防戦を強いられる。


(最強のバフがあるんだ!攻めあるのみ!)

「魔導書の歌声に合わせて……決めるよ」


防戦を強いられたケイオスは金色の手刀を解除し翼を展開すると空中へと距離を取った。しかし何故かツムギは宙を蹴りケイオスに迫る。

訳が分からず困惑するケイオスにツムギはクナイを首へと押し当てた。


「飛べたの?」


「跳んだの。コレを台にして」


ツムギの手にするクナイをよく見るとワイヤーが繋がっていた。ツムギが方々へ投げていたクナイはワイヤーで繋がっていた。


「そんな細い物で?」


「バフのおかげかな」

(どちらかと言うと、高い建物にクナイを投げて固定。からのワイヤーアクションだが……)

「各種バフのおかげ!」

(説明、放棄したな。まぁ実際ケイオスにも絡まって、乗れるほどの足場が出来上がったか)


「……なぜ二回」


「なんの事かな?……ぐっ、やっぱり硬い」


クナイで荊の首輪を破壊しようとするが出来なかった。そこでツムギは懐から光る球体を取り出し詠唱する。


「魔の理を、在り方を、破戒する力。依るべに従い顕現せよ。重纏(かさねまとい)


光る球体は分散しツムギの持つクナイに纏わりつく。


「まだやれる!」


「わっ!?」


ケイオスが翼をはためかせ、魔力による衝撃波を起こし拘束を解く。ツムギはバランスを崩すも何とか地に着地する。ケイオスも地に降りツムギと向かい合う。


「助けて欲しかったんじゃないの?」


「私の力、あなたにどこまで通じるか……試したかった。それにチョーカーを外せない限り、私に自由は無い」


「ん、なら外せたら私の勝ち。私と来なさい」


「それは、命令?」


「前半は。後半は、あなたの意思に委せるわ」


「……了承。なら全力」


ケイオスは翼を解除すると両手に魔力を集める。それは籠手の様な形をなした。ツムギは再びクナイを構えた。

ケイオスは籠手で殴り掛かりツムギはクナイでで攻撃を捌く。


「なん、っで!?」


高密度の魔力籠手での攻撃を余裕で捌くツムギに驚きを隠せないケイオス。


「籠手をよく見てみな」


ツムギに言われ、攻めながらケイオスは自身の籠手を確認すると、クナイとぶつかる毎に魔力の密度が減っては少し戻ってを繰り返していた。


「今の私のクナイは、全ての事象を無効化する。まぁあなたの籠手は、高密度過ぎて、少しずつだけど」


そうは言うが着実に削っていくツムギにケイオスは不気味さを感じる。ツムギから距離を取ろうと後方へ跳び去る。


「我慢してね」


ツムギは踏み込みケイオスに肉薄すると一声掛けて、首と荊の首輪の間にクナイを潜り込ませる。


(断ち切れ疾風千刃(しっぷうせんじん)重纒(かさねまとい)!)


先ほどは切れなかった荊の首輪をツムギはいともたやすく切り裂く。


「それ、恥ずかしくない?」

(ある方が技っぽくないか?)

「えぇ……まぁそりゃそうだけど、発声する分、リスク、増えない?」

(リスクを背負う分、効果が増す。知ってるだろ?)

「……それよりケイオスは?」

(議論の余地ありだな。はぁ……)


「切れ、た?」


ツムギがブツブツといつもの独り言を呟く。一方ケイオスは荊の首輪が取れたことに驚いていた。


「くっ、ケイオス!!俺を助けろ!!!」


そこへ離れたところにいるテイカーが、大声でケイオスを呼ぶ声が聞こえてくる。


ブックマーク登録して、続きをお待ちいただけると幸いです。

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