コント ミス
登場人物
山本→以下、山
河田→以下、河
※山本の独り語り 暗転でピンスポット 客へ向けて喋る
山 僕の名前は山本 社会人4年目の普通のサラリーマン
普通と言っても、4年目でこんなにミスの多い社員はあまりいないかもしれない
今日も課長に資料の入力ミスを見つかってしまい、みんなの前で怒られてしまった
ああ、どうして僕はこんなダメなんだろう…
そんな事を思っていると、社内パソコンに見た事も無いアドレスからメールが届いた
件名には「あなたのミス、笑いに変えます」?
迷惑メール?いやいや、これ社内メールだぞ?そんなの届くわけない
誰か知ってる人か?恐る恐る開いてみると、そこにはこんな内容が書いてあった
「仕事での失敗、誰にでもありますよね
大きな失敗は場合によってその後の昇格などにも影響してしまう事も…
そんな時、当社の派遣社員が驚きの方法であなたを救います」
とても怪しい
でも今なら2週間お試し無料コースがあるみたいだ
きっと同僚のイタズラだろう
じゃあ、ミスの多い僕を救ってもらおうじゃないか
この怪しいメールに登録した次の日の朝礼で、不思議な事が起きる
※明転
河 派遣社員の河田です
2週間だけですが、専門知識を生かして皆さんのお役に立てるよう頑張ります!
※暗転
山 あのメールの次の日に派遣社員?しかも2週間?
いやいや、偶然だろ…
※明転
河 山本さん?あの、山本さん?
山 あ、ごめんごめん、なに?
河 このファイルに入ってるやつなんですが…
※暗転
山 河田君は非常に優秀で初日にも関わらず仕事をどんどんこなしていった
どうやら派遣会社内ではSSクラスの超優秀な人材で
この三流企業に来るレベルでは無いらしい
派遣会社の都合で彼が来る事になったので、こちらとしてはラッキーなんだそうだ
※明転
河 山本さん
山 え、な、なにかな?
河 ここって、コレで大丈夫なんですか?
その前までのを見る限り、たぶんコッチの事なんじゃないですかね?
山 ああ、そうだ!ごめん、ありがとう
河 いえいえ、じゃあ直しておきますね
※暗転
山 本当にめちゃくちゃ優秀だ
1週間かけて作った資料のミスをわずか数分で見抜いてしまった
そしてお昼になる頃にはみんなと打ち解けていた
もう人間力から違う
そんな事を思いながら、その日の午後、僕はまたやってしまったのである
大事な見積もりを、全て1桁間違えて書いてしまっていた
課長に呼ばる
ああ、また皆の前で説教か
と思った矢先、河田君が急にこんな事を言った
※明転
河 ちょっとちょっと山本さん!
そんな高額な取引あるわけないでしょ!ここは一流企業か!
※暗転
山 いや、初日の君が自虐を言うなよ!と思ったけど、いつもと雰囲気が違う
僕が怒られている時の嫌な空気は跡形もなく、職場は笑いであふれている
さっきまで怒り心頭だった課長まで笑いながら
「まあな、こんな大口の取引がいつかできると良いよな」
なんて言って、説教は無し
自分でも驚きながら席に戻った
※明転
河 上手くごまかしたでしょ?(笑顔で山本に小声)
※暗転
山 この人でしたー!(暗転で止まってる河田を指さして)
あのメールの「驚きの方法で解決」する人、この人でしたー!
え?え?どういう事?
今なにが起きた?
ツッコミ?
僕のミスがボケになって、ツッコむ事で…笑いになった?
いやいやいや、え?マジ?
嘘でしょ?!
しかし、その後も僕がミスする度に河田君はツッコミを入れてくれた
※明転
河 いや、リュックいっぱいに入ったエコバッグか!
※暗転、明転
河 アイドルと結婚する青年実業家じゃないんだから!
※暗転、明転
河 そうそうそう、フランクフルトに衣をつけて揚げたやつね、てバカ!
※暗転
山 もう、僕のミスで職場はどっかんどっかんウケる
なんなら課長まで
「意識高い系・無職かお前は」
なんてツッコんでくるようになった
河田君が来てから、職場は明るい雰囲気になった
ミスに怯えていた僕は、ミスが減っていった
そして、1つもミスしなかった日、河田君の2週間の派遣が終わった
※明転
河 短い間でしたが、ありがとうございました
明るい職場で働けて、毎日が楽しかったです
特にその中心にいた山本さんと離れるのが寂しくて仕方ありません
※暗転
山 彼は2週間で本当に僕を救ってくれた
なんなら、僕の事は「面白い人」というイメージを残してくれた
ありがとう、河田君
※明転
パソコンに向かい仕事している山本にメールが届く音がする
※暗転
山 あのアドレスだ!河田くんか?!
なになに
「よう!山本!あんな偽メールに騙されるなよw
俺だよ、同期の井上だよw お前、変な詐欺に騙されないように気をつけろよ!」
※明転
山 河田くん、超優秀でただただ良い人だったー!!!
おわり