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頼りになるリリアーナ

 次の日、全く同じような蝶の髪飾りをリリアーナは持ってきた。壊れていたものも修繕してあった。


「よく見て、ヴィオラ様。元の壊れていた方は修繕してもらったわ。銀を加工したものに小さな宝石をちりばめてあるものだけど、かなり繊細な作りだったのよね。実はこの修理した元々の蝶の髪飾りは贈った方からの指示で作られたもので、ヴィオラ様のお姉さんをイメージしたものではないのよ。

だからというわけではないらしいけど、こちらの新しく制作したほうを見てちょうだい。これはヴィオラさんのお姉さんやそのお友達から見られても分からないように、よく似た新しいものを作ってみたらしいわ。多分二つを並べて見比べない限り分からないようにしているらしいわ」


 新しい作られたものは銀で作られているものでそれも精巧な作りだった。言われた通り二つを並べたら違いはわかるが、並べなければ分からない。

 元々の方がかなり繊細で精巧。小さな宝石が様々な色合いのピンク、水色、グリーン、イエローが散りばめられていて可愛らしくも華やかだ。

 新しく作られたものは急いで作られたのだろう繊細であり鮮やかであり華やかであるものの、可憐さは見られない。


「リコリス王女へのプレゼントとして作られたものではなかったって本当なのかしら。でもリコリス王女は自分に贈られたもので、触っているときに壊れたと言っていたわ。お友達の方たちもそう言われていたわ」

 リリアーナが微妙にしょっぱい顔をした。

「最初の髪飾りはリコリス王女とは違う人をイメージして作るように言われたらしいわよ。だから……というわけではないけれど、壊れた蝶の髪飾りは繊細だし可憐だし華やかでしょう。リコリス王女は小柄で可愛らしい雰囲気ではあるけれど繊細可憐という感じじゃないわ。女性として出ているところはかなり出ているからドレスによっては華やかになることもあるけれど可憐じゃないわよ。まあ、妖艶にはなれるかな。微妙ね」


 リリアーナはヴィオラを見ながら熱の入った言葉を吐く。

「新しく作られた髪飾りはリコリス王女に渡したらいいわ。壊れてしまった以前の蝶の髪飾りに関しては修理してみますと言われたけれど、もしかして修理できないかもと言われたとかリコリス王女へは言っとけばいいと思うわ。修理したほうはヴィオラ様が持っていて、ほとぼりが冷めたころにでもつけたらいいじゃない」

「そういうわけには……」

「リコリス王女は今まで見ていても繊細な飾りよりも大きな宝石をドーンと使ったものしかしていないでしょう。すぐにこの蝶の髪飾りも飽きるわよ」

「……そうかも」

 でも皇太子さまからの贈り物を飽きたりするかしら。ヴィオラは首を傾げた。


「それに作った職人が言うには、この蝶の髪飾りには修理の依頼をしてくれたお嬢さんのイメージそのままだと言ってたのよ」

 リリアーナは笑う。

「いいのかしら。もしつけているのを見られて皇太子さまから咎められたらどうしたらいいかしら」

「大丈夫よ。その時には同じ店で新しいものを買いましたとか言えばいいわ」


 修理代は最初に蝶の髪飾りを頼んだ人が出してくれたからお代はいいらしいわよ、とリリアーナは笑う。

 新しい蝶の髪飾りの代金はリコリス様のところに請求書を送っておくことにしているから、と。

「まあこの髪飾りについてはもういいじゃない。どちらにしろ今度の十夜祭には一緒に行きましょう」


「十夜祭! おまつり! すてき!」

 ヴィオラは飛び上がって喜んだ。

 お祭りとか小さなころ以来だ。

 お城へ行ってからは一度も見たことも参加したことがない。

 あの騒めく中に身を浸してみたい。


「それとリリアーナさん。ありがとう。蝶の髪飾りのこと、こんなに簡単に解決できたのはリリアーナさんがいてくれたから」

 これまでの経験上、姉から頼まれたものは必ずこじれてこじれて最終的にはなぜかヴィオラが原因とまで言われる状態になるのがこれまでの流れだった。

 こんなに簡単に解決できたのはリリアーナの力によるものが大きい。

 どうやってこんなにすんなり解決できたのかわからないが、留学してきてリリアーナという友人と出会えて、そして一人の学生として勉強ができるようになって本当に嬉しい。

 頼りになる友人って素晴らしい! 


「本当にありがとう、リリアーナさん。それで十夜祭はどういった感じのお祭りなの」

「そうか、ヴィオラ様は初めてなのね。ドレスを着て王宮のベランダに出てきた王家の人々に挨拶するの。とっても素敵よ。あらっ、ヴィオラ様は隣国の王女様なんだからベランダに行かなきゃいけないでしょう」

「そういった話は多分リコリス王女だけが関係しているのじゃないかしら。わたしにはそういった話もないわ。それよりもリリアーナさんと一緒にベランダにいる王家の人々に手を振って挨拶をしたいわ」

 お祭りに行く。こうしたことができたのもリコリス王女の留学のおかげではあるけれどすべての物に感謝を捧げたい。


「ワクワクしちゃうわ」

「ヴィオラさんは可愛らしいわね」

 ふふ、とリリアーナがほほ笑んだ。


 先日お姉さまからいただいたばかりのバーガンディーのふわふわしたドレスをリフォームしよう。ふわふわしたフリルがかなりたくさんついていたから胸元のフリルを取ろう。姉の豊かな胸と違い普通のサイズのヴィオラに合わせて胸元の部分を絞りシンプルにして、取ったフリルを髪飾りとチョーカーに作り直そう。ビオエラに今夜相談しよう。

「ウフフ… なんだか楽しくなってきちゃった」

 ビオエラにも一緒に行くよう誘ってみよう。



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