はじめての友達
「おはようございます。ヴィオラ様」
「おはようございます、リリアーナさん」
リリアーナは平民だが、親は手広い商売で有名なリリア商会の娘だ。
「なんというか、王女様ともあろうお人が歩きで通学とは大丈夫なんでしょうか。私が心配になってしまいます」
「大丈夫ですわ。私は第2王女ですもの。お姉さまさえちゃんとされていれば大丈夫なのですよ」
学年トップの成績を誇るリリアーナは文武両道。もしもの時は自分で自分の身は守れるようにと護身術も学ぶ武闘派の才色兼備だ。ヴィオラも昼食休みの時にたまにではあるが護身術を教えてもらっている。
「ふふふ。リリアーナさんはさっぱりした性格で私にとって初めてのお友達ですのよ。私本当にこの国に留学して良かったと思っております」
リリアーナは声を小さくすると
「以前言われていたヴィオラ様が就職されるということが本当になれば私も尽力しますよ」
「ありがとうございます。ふふ」
初めてできた学園での友達。ビオエラ以外で初めて心を許すことのできる友達だ。
将来王女としてではなく平民となり職業を持ち働きたいのだと相談したことがある。
驚いていたリリアーナは平民としての生活を簡単なものではないと諫めて止めるように忠告はされた。
留学して初めてヴィオラは心から笑うことができるようになった。毎日が楽しいし、希望でいっぱいだ。
「リリアーナ様は今日の歴史の課題はされてきましたか」
「もちろん。歴史に関しては課題など必要なしですよ。ヴィオラ様は歴史はバンパーとは違う国になるので少し不得手でしたよね」
「ええ、勉強しましたわ。バンパー国は我が国バンゲイ国の隣国でもありますし重なるところもあって面白いですわ。悪い成績だとビオエラから叱られてしまいます」
リリアーナが苦笑する。
「ヴィオラ様は努力家ですものね」
リリアーナが微笑みながらヴィオラの顔を覗き込む。
「ありがとうございます。リリアーナさんとお友達で本当に嬉しいですわ」
「それは分かっています」
リリアーナは精神的にかなり強い。
女性なら誰しもこの学園に通うからには貴族との縁を結ぶことを考えるはずだ。リリアーナほどの美人であれば難しくはないだろう。
だがリリアーナは貴族との縁よりも自分の家の商会を重視している。将来は商会で商売を手伝うつもりなのだ。手伝うというより自分でも販路を広げたり、新たな商売を開拓するつもりでいる。
バンパー王立学園に通う間に貴族との知り合いを増やし、知己を広げ、商売をよりよくするためだ。
バンパー国はかなり強大だ。軍事力だけでなく資金面でも潤沢。貿易面でも他の国の追随を許さない。
バンパーの貴族と知り合いでいれば商売においても手広くできるはずだ。ヴィオラと親友でいてもあまりうまみはない。ヴィオラのバンゲイ国はバンパー国に比べれば弱小国。なのにリリアーナは誰よりもヴィオラを優先してくれる。その気持ちを返すことのできる人になりたい。
バンパー国は本当にすごい。周辺国が憧れを持ってみている。ビオラも留学する前はバンパーをあこがれを持ってみていたが、実際に来てみて分かる。
様々なところにバンパーの潤沢な資金や余裕、そして深い文化を感じることができる。
バンパー王立学園の中の通路は磨き上げられたような光沢のある石でできている。王城に入れば学園どころではない白い光沢のある大理石が敷き詰められ、床だけではなく壁も天井も贅を尽くしてあることがわかる。
いったん街へ出ると光沢はないものの、石畳もしっかりしたものでできていて、王都から離れていても一つ一つの町が王国並みに栄えている。
『凄い』
言葉にはしなかったが感嘆してしまった。
ほかの国ではこうはいかない。
ヴィオラの国はぼこぼことした石畳で馬車はガタガタと揺れるのが普通だった。王都から離れたら石畳どころか整備していない道が続く。
バンパー国に入ってからは馬車からあまり振動がしないのだ。馬車のつくり自体がしっかりしているからだろうと最初は思っていた。だがそれだけではない、ヴィオラやリコリス王女が留学するために移動したときの馬車は国を出るまではガタガタと身を震わせる振動を起こしていたが、バンパー国内に入った時から緩やかな揺れとなりビオラは眠ってしまったくらいだ。王城へ入るとさらに揺れは感じられないほどとなった。
すごい国だと思う。国自体に余裕を感じられる。
人々に余裕があるのだ。