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騎士になりたかった少年

ベランダに出ると室内に立ち込める熱気から抜けて、外の涼しい風が吹き抜けて気持ちがいい。

大きく息を吸い込むと、頭の中の熱気までもが冷えたようで少し冷静になる。


「ヴィオラ嬢、とこれからは呼んでいいかな。いや婚約者となるのだからヴィオラと呼ぼう」

「はい。……これからはアニック伯爵家がわたくしの家になるのですね」

「急なことではあるし、王家同士の話し合いとなるだろうが大丈夫だろう。バンゲイ側もこれまでのことを考えるなら飲まざるを得ない条件だろう」


バンゲイとしては王家同士での婚姻となればバンパーとの強力な姻戚関係となる。それをみすみす逃すのは嫌だろうから何としてもヴィオラを王女としてバンパーに嫁がせたいだろう。


「わたくしからもお願いがあります。わがままなお願いになりますが、女性や子供たちが生きやすい社会を作りたいのです。そのための基礎の部分だけでも私が助力できればと思っています。バンパー王家に嫁がせていただき、その後少しずつ色々な場所で私なりに頑張っていきたいと思います。もし難しかったり間違ったことをすれば教えてくださいますか」


「もちろんだよ。そのつもりだ。

ヴィオラと出会ったあの宴は戦争が終わった時の調印式後の宴だったと思う。

私はあの時、私の目の前で泣いていた女の子をどうしても守りたいと強く思ったんだ。絶対に泣かせることのないような強い男にならなければと。だから最初は騎士になろうと思っていた。騎士になるために騎士団にいつも入りびたり剣の練習や乗馬をかんばっていた。騎士団に入団するためにね。数年して皇太子の立場では騎士にはなれないと騎士団長から教えられてずいぶん落ち込んだものだった。その時、大切な女の子を守るために騎士になるだけが道じゃないと言ったのは父だ」


「バンパー王が?」

「そう。王宮の中にいたヴィオラという名前の女の子。そこから調べてもらって王女ということが分かり、騎士より皇太子として守る道を模索した。ヴィオラがバンゲイ王家でどういう立場にいるのかも分かったしね。バンゲイから引き離すために婚約者として留学を進めたのだが……思ったよりバンゲイ王家の内情まで浮き彫りにされた」


「そうですね。ですがほかの人はどうであれ、お兄様は私にはいい人なのです」

「そうだね。クロフト王太子だけがバンゲイ王家の中でまともだ」


 兄のことを分かってもらい、なんだか嬉しい。

「ところで私のことは皇太子殿下と呼ぶことが多いけれど名前で呼んでほしいね」

「えっと、アークライト様とかですか」

「もっと短く」

「アーク様ですか」

「それでいい。慣れたらアークだけでもいいよ」


慣れることはあるのだろうか? ほんのりと笑みが浮かぶ。

「笑顔が可愛いな」

一瞬にして赤くなった頬を両手で隠して熱をとる。

恥ずかしい。


いつもお読みいただきありがとうございます。

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