バンゲイ王の汗
「……なるほど。ここまで言うつもりもなかったのだが、私は今までヴィオラ王女に贈り物をことあるごとに贈ってきた。蝶の髪飾り以外の贈り物は全てリコリス王女がお持ちだが、その理由は?」
なぜそれを、とリコリスが小さくつぶやいた。
「それは……それはわたくしがもらうにふさわしいと思った者たちがわたくしへともってきたのでしょう」
「贈り物を奪うことは窃盗だ。そして一国の王族の贈り物を奪い壊すなど、両国間の友好関係などどうなってもいいということの現れだろう」
「そのような。まるでわたくしが悪いかのように言われるなど……」
「リコリスやめなさい」
いつの間にか側近くまで近づいてきていたバンゲイ王が低い声で制止する。
「なぜですの。お父様もお母様も何度も言われたじゃない。バンパーの王妃になるのはリコリスだと。ヴィオラでは王妃にするには血が足りないと。誰よりも皆の前に立つのがふさわしい美しいリコリスが一番だと言われたではありませんか」
「リコリスいい加減にしなさい。黙るんだ」
「リコリスの言う通りですわ。ヴィオラなどがバンパーの皇太子妃などとありえませんわ。リコリスは小さいころから皇太子妃になるためにマナーやダンスをしっかりとしてまいりました。誰よりも大切にされていましたの。バンパーほど大きな国の王妃になるなどリコリス以外には考えられませんわ」
バンゲイ王妃も王にすがるように声を高めた。
「王妃もいい加減にするんだ。見苦しいものをお見せしました、バンパーの方々」
バンゲイ王が汗をハンカチで拭う。
「もしバンゲイ王がリコリス王女と王妃を止めなければ、私たちもそれ相応の対応をしなければならなかったでしょうね。戦争が終わった時、我が国はバンゲイ国を属国にしてもいいという意見もあったのです。ですがそれと同じくらいの割合で友好国にしておいてもいいという意見もありました。バンゲイ国は断崖絶壁に囲まれた国でもあり属国にするより利があるということでバンゲイ国を続行することとしたのです。
戦争が終わった時に友好のあかしとしてヴィオラ王女との婚約を申し入れ、それに対してバンゲイ王はヴィオラ王女が幼く、しばらくの間リコリス王女も婚約者候補として二人を置いてもらいたいと回答がありました。数年ならということで我々も了承したのです。
今回私たちはヴィオラ王女を次期王妃としてバンパー国を学んでもらいたいと留学を進め離宮を用意したが、なぜかリコリス王女が離宮に住み着かれた。その理由を聞かせてもらいたいと文書を何度も送った。が、返事はありませんでした」
皇太子が冷たく視線をバンゲイ王に送る。
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