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貶められた人と真実

「捨てられた子どもなら孤児院があるじゃないの。ヴィオラがしなくとも孤児院があるから大丈夫よ。誰も見てくれないような捨てられた子たちが行くべきところが。わたくしもいつも孤児院にはたくさん寄付しておりますわ。当然のことですけれども」

 自慢するようにリコリスは声を高くする。


「ですが、子どもたちは孤児院では満足な生活ができていません。一度リコリス王女も孤児院に1日でいいから滞在してみてください。どれだけ生活が大変なのかがわかります。食べるものも着るものも満足にない生活。一日一日をやっとのことで過ごしているのです。彼らは生きていくのに精いっぱいで勉強とか考えたことすらないでしょう。

今まで寄付に頼るだけだった孤児院が国によって補助することが手助けできるような仕組みを作りたいのです。そして孤児院出身の子どもが就職できるように手に職をつけてあげたいのです」


ヴィオラが身を乗り出すと、皇太子がヴィオラの白い小さな手を取った。

「素晴らしい意見だと思う。官僚として世の中を変えようと思うことは。だが下から世の中を変えていくのは時間も手間もかかる。変えることすら難しいかもしれない。だがヴィオラ王女。上から直接変えていくことは難しいができるかもしれない。既存の組織からの抵抗はあるだろうが」


「それは……」

 それは何なのか分かってしまってヴィオラが口をつぐむ。

「隣国の官僚として国を変えても自国を変えることは無理だろう。だが我が国バンパーの王族としてそれに関わり変えていけば、バンゲイ国は友好国。すぐにでも変化は訪れるだろう。王族自らテコ入れをしていけばいいと思わないか。私も協力しよう」


「待ってくださいませ。お待ちくださいませ。皇太子さまとの婚約はわたくしが結ぶはずですわ。ヴィオラはずっと言ってまいりましたが素性がはっきりはしませんわ。わたくしであれば」

「ヴィオラ王女の母親はアニック伯爵令嬢とはっきりしているのだが」

「それだけではありませんわ、皇太子殿下。ヴィオラは市井の生活を8年もしてきたのです。貧しい生活を……市井の者たちと同じ生活をしてきたのですわ。そのようなものが皇太子妃になど。けがらわしいですわ」


「……リコリス王女が留学してきたときに私の婚約者候補と言われていると聞いて、私はひどく驚き憤った。ヴィオラ王女の現状を調べ、その気持ちはますます大きくなった。……つい先日の髪飾りにしてもそうだ。市井を見回っていた時にたまたま見つけた店でヴィオラ王女に似合う蝶の髪飾りを作り贈った。なぜかリコリス王女のものとして壊されていたが」


「それは違います。婚約者へということでしたからわたくしの手に渡ったのですわ。それにいやしくもわたくしの物を勝手に手に取り壊したのはヴィオラですわ」

小さく息を吐いたアークライト皇太子はリコリスをジロリと睨んだ。


「あなたの取り巻きの中に私の手の者がいないとでも思っているのか? 誰が壊したかなど分かっている。

リコリス王女はバンゲイでもこのやり方でヴィオラ王女を何度も貶めたらしいが、バンパーではそうはいかない。我が国の国民はバンゲイの王女であろうと真実を尊重する」


「わたくしはヴィオラをおとしめたりしておりませんわ。ヴィオラが……ヴィオラがわたくしを……わたくしを貶めるために動いていたのですわ」

「バンパー王妃の招待状を横から奪ったのもリコリス王女だと王妃は知っている」

「違いますわ。わたくしが奪うわけがないではありませんか。わたくしのほうが招かれるにふさわしいと誰もが思っております。そう思ったものがわたくしへと招待状をもってきたのでしょう」




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