リコリス王女の思いとヴィオラの想い
「その通りですわ。わたくしはいつもリコリス王女に感謝の気持ちでいっぱいです。母が亡くなった後たった一人になった時、リコリス王女が私を王女として引き取ることに賛同していただかなければ、わたくしは何の寄る辺もないまま市井に残されたままでした。あの時姉妹として了承していただいたからこそ食にも勉強も困ることもなくなりました。例え周りの貴族から暖かくはない視線を向けられたとしても生きていくには十分でした。寂しいことも多かったですが今となっては感謝の気持ちでいっぱいなのです」
「当たり前でしょう。ヴィオラも幸せだったはずよ。だって王女として皆から傅かれて、なんの不満があるというの。それに本来なら平民として市井で貧しく暮らし孤児院で過ごしていたはずだったあなたが王女というだけでこんな素晴らしい生活を、わたくしやお兄様と兄妹として、更には隣国バンパーに王女として留学までしてもらえて。何の不満が出てくるというの」
「その通りですわ。わたくしは本来なら平民として暮らしていたはず」
「わたくしはヴィオラを妹として慈しみ愛しているのですわ。可愛いと思いこそすれ、このように冷たい視線を向けられる謂れはありません。こんなにヴィオラを大切にしているのに」
リコリスに何といえば気持ちが伝わるのだろう。リコリスの言いたいことも十分にわかる。今こういった生活ができるのも留学できるのもすべて王女だったからだ。だが、ヴィオラの言いたいことは……。
「リコリス王女。先日よりヴィオラ王女は隣国スードリーで平民となり官僚になることを目指していました。その理由は何だと思われますか?」
皇太子がリコリス王女へ静かに声をかけた。
「平民に? なぜですの? 王女になってヴィオラは幸せなはずですわ。なぜ平民なの。せっかく王女になっているのに。なぜなの、ヴィオラ?
もしかしたらヴィオラは王女から平民になることによって皇太子殿下からの慈悲の心を引き出した上で気持ちを自分へ持っていこうとしていたのね」
「…違います……母は私を身ごもってすぐに市井に放逐されたそうです。戦争が始まったからとも思われますが、本気で守ろうと思えば誰かが守ることもできたはずです」
母フリージアの夫であるはずの王が。
「今思い出しても貴族令嬢であった母にとって平民としての生活は幸せなものではなかったと思います。ですが、身分の違いはあれどもこういった悲しい女性や子供は私が知らないだけでどこにでも転がっている話だと思います。そういう人たちを救いたいのです。バンパー国で勉強をたくさんさせてもらいました。図書館でたくさんの本を読みました。もちろんバンゲイでも勉強させてもらいましたが……隣国スードリーでの官僚試験は多分合格しているだろうと言われています。官僚となればそういった分野に切り込んでいけると思います。捨てられた女性や子供たちを救いたいのです」
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