バンパー王立学園
平民でも買うことができるようにと作られた光沢のある白い布に2本の紺色の線が入ったシンプルなワンピース。同じように白地に2本の紺色の線が入ったボレロの形の上着。この服がヴィオラが通う学園の制服だ。男子生徒の制服は女生徒用と反対に紺地に白のラインが入っている。ヴィオラは学園に向かう前に姿見で見直すのが毎朝の習慣だ。ある程度の姿形が整っていると思えたら学校へ行く準備完了。侍女のビオエラも微笑んで見送ってくれる。
腰まである緩やかなウエーブのあるはちみつ色の髪はハーフアップにする。
マナーやダンスや体育があったりする日は体を結構動かすために三つ編みにしたりしている。今日は座学がメインだ。
「今日もおきれいですよ、ヴィオラ様。お勉強を頑張っていらっしゃいませ」
鞄を抱えて、ビオエラに向かってほほ笑む。侍女であるもののヴィオラにとっての心のお姉さん、ビオエラに。
「行ってきます。今日も頑張ってきます」
ビオエラは優しくてとても可愛らしい。ヴィオラが平民から王族であったことが分かった後何年も侍女など付いたことなどなかったのだが、今から2年前にヴィオラが13歳になった時に王宮で過ごすことが許された。と同時にヴィオラ専属としてついてくれた侍女がビオリラだ。誰もが王妃の娘でもあり第1王女である姉の侍女になることを望む中でたった一人ヴィオラの侍女になることを望んでくれた優しくて思いやり深い人である。
『母も王宮侍女ではありましたが、だからといって突然私が第1王女の侍女になったとしてもいじめの対象になるだけですよ。ヴィオラ様のそばにいてヴィオラ様と姉妹のように大切にされて、こんなうれしいことはありません』
と隣国に留学することになったとき、誰もが第1王女の侍女に立候補する中たった一人ヴィオラの侍女になってくれた。しかもたった2歳年上なだけなのに王族教育係になることができるくらいに優秀な人だ。
姉である第1王女も優しい人で良かったと思っている。第1王女が隣の大国バンパー国への留学が決まったとき、バンパー国の王城の離宮に住むことになったときも、一緒に留学することも一緒に離宮に住むことを勧めてくれたりした。
ただバンパー国の王城へ入り、離宮につくとヴィオラが住むための部屋はなかった。
幸いにもヴィオラは、学園の寮に住むことにしたが。
学園の寮と言っても、貴族向けの寮だからかなり豪華だ。簡易キッチンにビオエラの部屋まで準備してある。ちなみに寮に入る貴族はお付きの侍女及び従者は一人のみと決まっている。だからヴィオラの一緒に
住める侍女はビオエラ一人だけだ。ちょうどよかった。順調順調と思ってしまう。
寮に入るとヴィオラだけではなく子爵令嬢も伯爵令嬢も侯爵令嬢も令息たちも皆がおつきの人一人だけで過ごしている。学園に公爵令嬢はいないが公爵令息は馬車で通っているという話だった。
「お姉さまの侍女は10人くらいいらっしゃるから寮とか無理ですものね」
まだ時間の余裕があるので、寮から校舎へ続く花が咲き乱れた花壇を見ながら高等科へと進む。
ヴィオラの夢はこの国の高等科でできるだけ勉強をして、どの国でも通用できる教養をつけ、何ヶ国語が話せるようになることだ。将来のために。
素が一般庶民なのだ。どうしても高位貴族としての生活はつらい。つらいしできない。分からない。
「黄色のフリージアがたくさん」
高等科までの距離も貴族であれば馬車で行く。だがヴィオラには馬車がない。だから歩いていく。学園内のために危険もないし、歩いてたった5分ほどの距離だ。しかも歩道のそばには花壇が続いていて目にも優しい。
馬車で行くなんてもったいない。