ダンスと話
会場へ着くと客人として順々に紹介があり、リコリス王女に続きヴィオラも王女として紹介してもらう。
アークライト皇太子の色のドレスと宝石をまとったヴィオラが皇太子からエスコートされて登場したことに周囲の貴族は驚きをもってみているようだった。
紹介が終わり、二人の王からの言葉が終わると最初の曲が始まる。
エスコートされるまま1曲目は皇太子と緩やかな曲を流れるように踊る。
体を動かすことが大好きなヴィオラにとってダンスはかなり好きな科目の一つだった。
ダンスが好きでよかった、ダンスを一生懸命習っていてよかった、と多くの注目を浴びつつ滑らかに足を動かしながらビオラは思っていた。
そう思わずにはいられないほど皇太子はダンスが上手だった。
「婚約者と聞いて驚きましたか?」
アークライト皇太子は口をヴィオラの耳に寄せた。
「すべてに驚いています」
先ほどの話し合いのすべてに驚いて、ヴィオラが婚約者にという話についても驚き、だが実は母についての話が一番驚いた。
いつも平民だ、素性が知れない女と言われるばかりだったから。
「母は伯爵令嬢だったのですか」
「そう。ヴィオラ王女の母君フリージア嬢の兄が今は伯爵となっています。君の従兄姉も3人。後から紹介しましょう。アネモネ嬢は、君の3つ上の従妹だがフリージア様に瓜二つだと言われています。ヴィオラ王女も話をしたら驚くだろうと思います。……私としてはそれよりもわたしとの婚約のほうを先に話をしたいのだが」
「そのことですが、わたくしは隣国スードリーの平民となり役人になろうと思っています。そのための官僚試験も受けさせてもらいました。アークライト殿下は皇太子殿下です。わたくしよりずっとふさわしい令嬢がいらっしゃるのではありませんか」
「わたしでは嫌ですか」
嫌なはずがない。嫌ならエスコートされない。
「いやなどと思うはずがございません」
「では質問を変えよう。ヴィオラ王女が官僚試験を受けたことは聞いています。公示はまだあっていないが確かに官僚試験に受かっています。だが、なぜ平民にこだわるのです? 平民でなくともよいだろうに」
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