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新しい日々

初めて出会った威厳のあるお父さんはヴィオラを一目見ただけで表情も変えず一言も発さず去っていった。その人を周りの人は『王様』と呼んでいた。

見たこともない豪華なドレスを着た新しいお母さんは「なぜこんな子が」と落胆した声を上げ目を吊り上げてビオラを見ていた。その人が『王妃様』だった。

 絵本の王子様のような兄は「きったないやつだな」と興味なさそうに言った。

 綺麗で優しいと評判だったお姫様のような姉は「今更私に妹とかいるわけないでしょう。しかも平民だなんて汚らしい。いやだ。本当に恥ずかしいわ、あなたが妹だなんて。どうしてこんなことがあるの。私のほうには近づかないで」と嫌そうに言い放った。誰からも愛される『リコリス王女』は優しく可愛らしい素直で純真で可憐な姫君だと噂だったのに。

 この人たちが王様と王妃様と王子様とお姫様だった。

 家族と言われたが、近所の人より近寄りづらく話しかけづらかった。

 母と離れてからヴィオラに話しかける人は誰もいなくなった。

 ヴィオラのそばを若い女の人や男の人が通りかかった時に話しかけても無視をされた。

 ヴィオラの住むところからはお城が見えた。お城はとても大きくて高くて広いようだった。そこには王様たち家族が住んでいるということだった。

 ヴィオラが住む小さな作業小屋のような家の前には大きな大きな林があり、その側には広大すぎるほどの庭園が広がっていた。

ヴィオラの住んでいる家には日中お城からヴィオラのためのご飯が一日3食運ばれてきて、掃除のための女中が数人来るだけで夜になればヴィオラ一人になった。

冬には朝と昼に暖炉に薪をくべたり屋敷の管理をする人が一人来た。

誰も話しかけてくれなかった。

ヴィオラは思い出の少年の声も顔も少しずつ忘れていった。

誰もヴィオラの側には来てくれなかった。

次第にあの少年は夢だったのだと思い始めるようになった。

 1年ほどたつとヴィオラに家庭教師やマナー、ダンスの教師がつけられるようになり、少しずつ人と話すこともできるようになった。話すというより相手をしてもらえるようになった。

 マナーやダンス、勉強の時だけは王宮に入ることを許された。

 もしもの時を考えてだろう、勉強だけはしっかり教えてもらえた。

 最初は優しい先生ばかりだったが途中から厳しい先生に全員変わった。理由はリコリス王女が厳しい先生を『先生が私に意地悪をする』と王妃に相談をしたとかで、厳しい先生たちがヴィオラ付きの先生となったおかげで誰よりも厳しくしっかりしたマナー、勉強を身に着けることができた。

厳しい先生たちだがヴィオラにとっては体面で話すことができる人たち、ヴィオラの努力を誰よりも評価してくれる人たちということで慕うに十分な人たちだった。

毎日が少しずつ楽しかった。


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