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威厳のある侍女

「おはようございます。ヴィオラ様。本日のご用意はわたくしとこの者がいたします」

 年配の女性の後ろには王宮侍女の制服ともいえるお仕着せをした女性が一人立っていた。

 そしてその後ろにはその女性と同じくらいの年齢の人が立っていて、その人もお仕着せを着ているものの王宮侍女のお仕着せではないものを着ている。

 二人はヴィオラとビオリラに礼をすると室内へと入ってきた。

「ビオリラ様にはこの者がいたしますので、よろしいですね」

 年配の女官は有無を言わせない慇懃無礼な口調で返答も聞かずに部屋に入ってきた。


 それからは嵐だった。

「ちょっ……ちょっと待って……一人でできます」

 抵抗をするヴィオラの後ろに立っていた侍女が手慣れた様子でドレスを脱がせ始める。

「ヴィオラ様はわたしが」

 ヴィオラを見るビオリラを王宮侍女とは違うお仕着せを着た侍女が着替えさせ始めた。

 王宮侍女と思われる二人がビオラを入浴、マッサージ、着替え、化粧と指の先まで手際よく磨いていった。


 ドレスは皇太子殿下から送られた2着のうちの一枚。

 薄い色の紫を基調としシフォンがフワフワ揺れるプリンセスラインの綺麗な一着だ。よく見るとシフォンの先には同系色のほぼ同じ色の紫の濃淡と薄い黄色で花弁を模した形でビオラの花を刺繍してある。

 首飾りはダイヤとアメジストで艶やかに、髪飾りはシフォンと金でビオラの花束を清楚に作ってあり、ビオラの清楚さと可憐さが余すことなく描き出されている。肩はオフショルダーにはならずシフォンでフワフワと隠す形になっている。


 二人は言葉はほとんど話すこともなく、手際よくヴィオラを変身させていった。

 式典の始まる1時間前には身支度も完ぺきに出来上がり、女官が満足そうに息を吐いた。

「完璧ですわ。それでは参りましょう。ビオリラ様のほうは用意はどうですか」

「もうすでにすみました」


 ビオリラは爽やかな水色のドレスを上品に着こなして疲れ果てたように椅子に座っていた。

「着せてもらうほうになったのは初めてです。なぜ私がドレスを着る必要があるのかとかどうしてとかいう質問をする前にかなり疲れました」

 ため息をビオリラは何度も吐いた。

 目を上にあげてヴィオラを見るとビオリラは目を見張った。


「ヴィオラ様、本当にお綺麗です。女神さまのようですよ」

 女官が右眉を少し上げた。

「元々とてもお美しくていらっしゃるから、当然ではありますがわたくしたちはプロですので。それにしても本当にヴィオラ様はお綺麗ですわ」

 ヴィオラを見ながら誇らしげに言った。

「ビオリラも本当に綺麗だわ。とても可愛くてきれいで妖精みたい」

 ヴィオラの言葉にビオリラが真っ赤になった。


 リコリス王女も可憐だとか儚げとか言われるが、着飾ったビオリラはリコリス王女よりはるかに儚げで可憐で可愛らしい、と思う。普段ももちろん可愛らしすぎるのだが。

 ビオリラは本当に可愛いとヴィオラは呟く。

「さようでございますね。ヴィオラ様はお綺麗で立っているだけで誰もが見ほれるほど清楚でお美しいですし、ビオリラ様は可愛らしくて可憐ですわね」

 女官が満足げにほほ笑むと侍女たちも頷きながら微笑んだ。


「私に様は止めてください」

 ビオリラが小さな声で言うが女官はその声に対応することなく扉に向いた。

「それでは参りましょう」

「歓迎式典へは自分たちで行けますので、連れて行っていただかなくても大丈夫です」

「こちらでございます」

 彼女たち3人にはヴィオラとビオリラの言葉は聞こえないようだ。3人は会場近くまでヴィオラとビオリラを送っていくつもりらしい。


「あまり目立つのは得意ではないのです。それにわたくしたちの席はないかと思います」

 今までバンゲイ国にいた時も式典の時は席すらなかった。国の体面を考えた兄が用意してくれた時だけはあったけれど。

「ですのでビオリラと二人で参ります」

「ビオリラ様から先に進んでください」

 年かさの侍女はヴィオラの声が終わる前に言葉を発する。

 皆私の訴えを聞いてくれない! ヴィオラは少しムッとする。

「ヴィオラ様、お急ぎください」

 そういうと侍女たちはさっさと先に進み始めた。


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